キレ味鋭いストレート!
日産のショールームがあるビルの7階にあるティエリー・マルクスのテラスから、昼日中、銀座4丁目交差点の人とクルマの動きを見ながら、シャンパーニュをいただくというのはいいもんですねぇ。別世界。それもローラン・ペリエ。
シャンパーニュというのは甘くてシュワシュワッとして、フルーティなものだと思っていたら、う〜む、「ローラン・ペリエ ラ キュベ」はまったく違う。ドライでスッキリしている。ジンジャエールのスッキリさだけを抽出したみたいな、そんな感じがする。
キレ味鋭いストレートで、目が覚める! ブワッと思わず空振りした後に、苦味がチラッとあるかと思えば、口中から余韻を残さずスッと消えていく。星くん、もう一球だ! とばかりに、また飲みたくなる。
ローラン・ペリエ社の日本担当・インターナショナルキーアカウントマネージャー、ギョーム・パイヤールさんは、今回のリニューアルはそう大きな事業だと思われないかもしれないけれど、実は一大事業だった、と会の始まりのスピーチで語った。
15年前から色々な手続きを始めて、ようやく結実した。自らの特徴を残しながら変更するのは大変なことである。雑誌の特性を残しながら変更することを考えてみてください。プレス関係者を対象としたテイスティング・ランチということを意識して、パイヤールさんはこんな例を挙げた。相反することをやろうとするのだから、これほどむずかしい舵取りはない。その中身については後述するけれど、「ローラン・ペリエはローラン・ペリエのまま、新しい未来を切り開く」というパイヤールさんのことばは紹介しておきたい。
テーブルに着いて、ランチがスタート、アミューズがサーブされると、「ローラン・ペリエ ウルトラ ブリュット」がグラスに注がれた。アミューズはこんな感じである。
「ラ キュベ」も印象深かったけれど、「ウルトラ ブリュット」はいっそうウルトラ・ドライ、2倍ぐらい辛口で、ウルトラ・インプレッシヴだった。「ラ キュベ」よりもいっそうスカッとさわやか。さわやかなまま、一瞬にして消えていく。飛雄馬の球よりも、もっと重いストレートが内角高めに飛んでくる感じ。
あえて星飛雄馬の編み出した魔球になぞらえれば、大リーグボール1号にも似ているかもしれない。まったくもって目が醒める。パワフルでスッキリしている。
星くん、もう一球だ! とばかりに、また飲みたくなる。
「ノーメイクなシャンパーニュ」といわれている。たまたまテーブルが同じになったローラン・ペリエのブランド・アンバサダー、フィリップ・ソーゼットさんがそう教えてくれた。ドサージュ(加糖)ゼロ。ぶどうそのものの糖分しか入っていないこのシャンパンは、メゾンの革新性、独創性を世に示すものとして1981年に登場した。
ヌーヴェル・キュイジーヌの波が押し寄せていた当時、繊細なこのシャンパーニュの味を日本は歓迎した。「嫌なところがない。料理に対してストレート。板前さんが好き。いい感じで合わせられる。キャビア、ウニ、磯の香りのするものにとてもよく合う」と、1970年代に来日したソーゼットさんは達者な日本語で語る。
ブドウ品種はシャルドネ55%、ピノ・ノワール45%。均一した品質を保つためにリザーブワインをアッサンブラージュ(ブレンド)している。50:50のような組み合わせになると、個性の戦いが激しくなって、バランスを取るのがむずかしい。
「アッサンブラージュのテクニックがローラン・ペリエは進んでいるのです」とパイヤールさんは誇らしげに言った。「ミネラリティが効いている。ちょうど右肩上がりの直線を一本引いた感じのワイン。フレッシュで、非常に短い時間で余韻が消えていく」とその味わいを付け加えた。