過去と現代をつなぐ
2008年に創設された「Champagne Joie de Vivre(シャンパーニュ・ジョワ・ド・ヴィーヴル」賞は、「国を越えて生きるよろこびを分かち合う『シャンパーニュの精神』のシンボルとなる方、その画期的独自性に国際的共感を得て活躍している方に授与」される。
漫画家のヤマザキマリは、古代ローマの浴場設計者が現代の日本と元の時代とを行ったり来たりして巻き起こるコメディ「テルマエ・ロマエ」で人気を博し、2010年に第3回マンガ大賞、第14回手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)短編賞を受賞して脚光を浴びる。阿部寛・上戸彩主演で映画化され、12年に公開されて大ヒットしていることはご存知の通り。
「テルマエ・ロマエ」は海外でも翻訳され、13年には、フランス、アングレーム国際マンガ祭にノミネート。17年にはイタリア共和国星勲章(コメンダトーレ章)を受賞。ヤマザキ自身もイタリア在住で、国を越えて生きるよろこびを分かちあっている。
「2008年からこの賞は、才能と個性にあふれる人に贈ってきました。なぜ、2017年はヤマザキマリさんなのか?
漫画の繊細な線。どんな物語を描かれても、ヤマザキさんだとわかるスタイル。エピソードからエピソードへと、尽きることなく、終わることのない物語が続く。この点がシャンパーニュのスタイルに似ています。
『テルマエ・ロマエ』の(主人公で、浴場を専門とする設計技師)ルシウスは古代ローマと現代を行き来し、ヨーロッパと日本の架け橋になっています。
古代ローマの世界をみんなに知らしめています。過去と現代をつなぐ。それがシャンパーニュです。ヤマザキマリさんは漫画というジャンルで、日本でワインを広める貢献をしてくださったということです。
『テルマエ・ロマエ』では建築が紹介されたり、水が描かれたりしていますが、ルシウスがシャンパーニュを飲むシーンはどこにもありません。ルシウスがシャンパーニュのお風呂に入るシーンをぜひ描いて欲しい」
ということをシャンパーニュ委員会フランス本部事務局長ヴァンサン・ペランがこの賞をおくる理由として語った。
17年4月に日テレ系で放映された「アナザースカイ」でも、イタリアではなくて、パリを旅行しているのは、14歳のとき、ひとりでドイツとフランスを巡る旅に出て、ルーヴル美術館で「絵を描いていきたい」という気持ちになったからなのだった。
最近の活動として、2017年はフランスの漫画祭に招待されたり、フランスの雑誌で取りあげられたり、「バンド・デシネ」というフランンス独特の漫画文化があるなかで注目されている、ということをヤマザキ自身が紹介した。「テルマエ・ロマエ」はもちろん、現在「新潮45」で連載中の「プリウス」(とり・みきとの共著)もフランス語版がすでに出版されている。
イタリア在住であることも知られているけれど、「ナショナリズムの強いイタリアでも、乾杯のときはフランス(のシャンパーニュ)がいい」という意味のことを語って、関係者を微笑ませた。