アルザスのテロワールとは
アルザス地方はフランス北東部、ドイツとの国境を接する地域にあり、19世紀から20世紀までは幾度となくフランスとドイツの領土争いに翻弄されてきた土地柄です。しかしながら、今や大聖堂をいただく美しい旧市街を誇る首府ストラスブールや伝統的なコルマールの建物などは観光地としても人気です。
ブドウ畑はヴォージュ山脈の東側斜面の標高170〜550メートルに広がっています。実はこの山脈のおかげで海の影響から守られ、降雨量はフランスで最も少ない地域の1つとなっているのです。また日照にも恵まれた半大陸性気候であり、こうした諸条件のおかげでブドウはゆっくりと成熟でき、フィネスを備えたアロマをもつことができます。
アルザスの土壌は花崗岩や石灰岩のほか、粘土、頁けつがん岩、砂岩など多彩で、この多様なテロワールこそ、多くのブドウ品種が素晴らしい品質となり、同じ品種であってもそれぞれが個性をもつ理由なのです。
このような土地柄と生産者たちの並々ならぬ努力により、昨今ではヨーロッパにおける有機農法およびバイオダイナミック農法として認定されたブドウ畑が25パーセントを占めるまでになり、ヨーロッパ
でトップの座を築いています。
アルザスワインの品種とその特徴とは?
アルザスワインは単一品種で造られることが多く、原料となるブドウ品種をワイン名としており大変わかりやすいのも特徴です。また、生産されるワインの90パーセント以上が白です。辛口の軽い
タイプから、芳醇でしっかりしたタイプまで多彩な味わいが楽しめます。主な品種を簡単に解説しましょう。
まずアルザスといえばリースリング。15世紀ごろから栽培されており、1960年代からは最も広く栽培されている品種です。酸味がしっかりしており熟成能力があります。辛口で果実味があり、柑橘類や花の香り、ミネラル感が楽しめるのが特徴です。今回も多くのお店でリースリングのペアリングが提案されていますので、様々な生産者のテロワールや造りを味わえるチャンスです。
続いてピノ・グリも知っておきたい品種です。これは果皮がピンク色がかった灰色の白ブドウです。下草のようなアロマ、ドライフルーツのような香りも。数年寝かせて熟成を楽しむこともできます。コクがあり、優れたバランスが特徴なので、今回は魚介料理だけでなく、肉料理とのペアリングの提案もありました。
ゲヴュルツトラミネールはトロピカルなフルーツやバラの花のような華やかなアロマやスパイスの香りが特徴です。力強く豊かな味わいはフォアグラと合わせるのが王道のペアリングで、今回楽しめます。またトロピカルな風味がタイ料理などエスニックな料理とも合います。
他の白品種には、繊細かつフルーティーで、クレマン・ダルザスのベースワインに使われることが多いピノ・ブラン。
摘みたてのハーブや柑橘類、白い花を思わせる香りが特徴のシルヴァネール。
またミュスカ・ダルザスは辛口に仕上げるのがアルザスの特徴です。ミュスカ・ア・プティ・グランとミュスカ・オットネルの2種類があり、通常はこの2種類をブレンドしています。花のようなアロマが感じられます。
唯一の赤の品種がピノ・ノワールです。チェリーやラズベリー、黒スグリなどの果実味が感じられ、かすかに樽香のニュアンスをもつものもあります。近年は温暖化に伴い、アルザスのピノ・ノワールも完熟し、品質が向上したと評価が高まっています。今回はフレンチのみならず、和食店でもピノ・ノワールがチョイスされており、多彩なアルザスワインの魅力を実感できることでしょう。
知っておきたい3つのアペラシオン
AOCアルザス(赤、ロゼ、白)
1945年に認定された、アルザス産ワインであることを保証するもの。7つの品種のうち1つの品種名をワイン名としてつけているものとブレンドしたワインがあります。2011年以降、AOCアルザスには、規定されたコミューン名(村名)またはリュー・ディ(区画)を付記することができるようになりました。
AOCアルザス・グラン・クリュ(白)
このアペラシオンは厳しい品質基準を満たしたワインのみに与えられるもので、1975年に制定されました。51の偉大なテロワールであるリュー・ディに認められています。現在、アルザス・グラン・クリュの51のAOCは白ワインのみです。例外を除き、リースリング、ミュスカ、ピノ・グリ、ゲヴュルツトラミネールの4品種です。
AOCクレマン・ダルザス(発泡ロゼ、白)
瓶内二次発酵のトラディショナル方式で造られ、1976年に認められました。最低熟成期間は9カ月で繊細な味わいが特徴です。主にピノ・ブラン、ピノ・グリ、リースリング、シャルドネ、またクレマン・ロゼにはピノ・ノワールも使われています。