「観光農園をやめたのは、改めてブドウ栽培と向き合わねば、と」。(太田社長)
東京・日本橋高島屋の「大近江展」で、川魚の甘露煮やら近江牛のしぐれ煮やらを試食し、併設イートインで近江牛と江州米のステーキ丼を食べたあと、琵琶湖ワイナリーのブースで「浅柄野カベルネ・ソーヴィニヨン2010」を試飲して、納得。どちらも、同じ近江の味でした。
力強く雄大で、ねっとりして、しかし芯が堅牢。カベルネでありがちなタンニンのエグさや神経質な青臭さや樽臭さがなく、ボルドーを意識しすぎたウソっぽい味とも無縁の、堂々たる自然体。
後日、新築されたワイナリーに太田精一郎社長を訪ね、「カベルネ、すごいです」と興奮気味に申し上げました。
「そう言っていただいているのに申し訳ないのですが、11年にレインカットするのを忘れてしまった区画が全滅し、それから13年まで色が乗らずに単一品種では商品として出せないんですよ」。
なんと! ラテン系。ユルい。
しかし琵琶湖ワインの味のすばらしさは、頑張りすぎないところにあるのかもしれません。寛ぎつつも完成されている。そんな印象を受けます。
ねっとりした味を生み出す土壌は、当然、粘土質。砂や貝殻を入れるなど、土壌改良したそうです、それでも粘土質。土壌がもたらす重厚感と、カベルネ・ソーヴィニヨンがもたらす緊張感が相まって、この品種単一ではなかなか得られない調和があります。
大事な点は、3年前まで観光農園だったこともあるせいか、極力無農薬、除草剤不使用ということです。そうやって育てたブドウを比較的軽く抽出。2010年のワインは、清酒用開放タンクで28度から30度という高すぎない温度で櫂入れしつつ発酵、1週間強の醸しで搾ります。よい土地のよい素材で、さらっと造るワインです。
カベルネと同じ畑でできるセミヨンもやはりねっとり重厚で芯が強い。樽不使用なので、質感が滑らか。とすれば、これは近江牛のしゃぶしゃぶ、ゴマダレの出番ですね!
その相性を試すべく、近江スエヒロ本店(ゴマダレの発明者です)にワイナリーから向かう道すがら、目にした精肉店や焼肉店やステーキ店は数知れず。さすが滋賀。とにかく肉、肉、肉、です。
近江牛はある種の芯の固さがあり、単にソフトに溶けるだけではなく、口の中でしっかりと動物の筋肉の感じが残ります。そして余韻は力強くグイッと腹に来ます。
そこでセミヨンを飲むと、味わいのあまりの一体感に驚くことに。ワインが加わることで肉の風味がさらに広がり、軽やかさも生まれ、ロース2人前は楽勝。
滋賀の肉文化、おそるべし。
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