ソムリエ永瀬喜洋さんの提案
イタリアワインの入り口付近でワイン好きが困惑するのは、天秤というか秤というか、基準というものがないからでしょうね。特にフランスワインの単一品種とか、畑別とかでワインの違いを追って把握するのに慣れると、いつでも比較できる基準が欲しくます。
でも、イタリアワインは品種にしても膨大で、産地もフランスのようには整理されておらず、なかなか把握しづらい。
「今日飲んだソアーヴェは、こないだ飲んだソアーヴェと全然違うよ?」となった段階で、困惑してしまう。本当は、ひとつひとつ気候風土から追っていって、「土の粒子が細かいほどワインのアタックはスムーズなんだな」と知識を積み重ねていくのがベスト……でも、それはさすがに大変!
そこで提案したいのは、食事から先に決めて、ともかく飲んでみるという実践からスタートすることです。北部は牛肉がメインに食べられていて、南部にくると羊肉が登場して塩が強めの味付けになったりします。そういう郷土料理に合うワインが、それぞれの各地で造られているのです。食からワインを見ていくと、ラクに全体を把握できますよ。

指南役:永瀬喜洋
「ラ・ソスタ」ディレクター/ソムリエ。第8回JETCUPイタリアワイン・ベスト・ソムリエ・コンクール優勝。イタリア在住時はレストランに勤務しながらワイナリー訪問に明け暮れ、20州全部巡った。
そこで、最初におさえておきたい品種を3つに絞りました。ネッビオーロ、サンジョヴェーゼ、アリアニコ。全部、黒ブドウ品種で、それぞれが北部、中部、南部を代表する品種です。
北部のレストランやショップでサンジョヴェーゼを探すのは大変だけど、ネッビオーロがない店はまずありません。逆に、南へ旅してアリアニコを知らないと、話にならない。
有名なネッビオーロとサンジョヴェーゼは、すでに知っている人も多いはず。一方、アリアニコはあまり知られてませんね。スパイスやヒノキのような香りがする個性的なアリアニコは、人によっては苦手かもしれません。
でも、アリアニコが育つ多くのエリアは火山性土壌で、同じく火山性の日本の風土にはとても合います。
イタリアには白ブドウの地場品種も沢山あるけれど、イタリアワインを語る上で絶対に外せないのはこの3つです。
だから、夏の真っ盛りに向かう時節のなか、あえて赤ワイン用品種にフォーカスしてみました! え、いいでしょ、みんな夏でも肉食べるでしょ(笑)。とくに、これからイタリアで食べ歩きをする予定がある人なら、食と絡めた3品種の在り方は要チェックです!