イタリア屈指の銘醸地、ヴェネト州ヴェローナ。
ガルダ湖南の湖畔に本拠を構えるパスクア社は、1925年の創業以来、家族経営を貫くイタリア有数のワイナリーである。以前、社主のリカルド・パスクアさんにインタビューする機会があったがそのとき彼は冷静にパスクアのことを分析していた。
2021.5.21
イタリア屈指の銘醸地、ヴェネト州ヴェローナ。
ガルダ湖南の湖畔に本拠を構えるパスクア社は、1925年の創業以来、家族経営を貫くイタリア有数のワイナリーである。以前、社主のリカルド・パスクアさんにインタビューする機会があったがそのとき彼は冷静にパスクアのことを分析していた。
「これまで私たちには組織的に決定的な弱さがあった。決断を迅速に下せないことが、ともすると成長を妨げる要因だった。」
転機が訪れたのは2009年の米国市場への進出と成功だったという。その実績をもとに新たなチャレンジに乗り出した。醸造設備への大きな投資、畑の整備。
そこから、パスクアのアイコンとなる新ラインナップのリリースに踏み切り、そこで誕生した一本が世界に通用するロゼを目指した「11ミニッツ」だ。
「ロゼワイン」の魅力は、なかなか日本ではうまく伝わらず、もどかしい。単に、飲まず嫌いなのではないか、と思うこともある。しかし、世界ではロゼワインの消費量はすでに白ワインの消費量を抜き、ブームというより、完全に人気ワインと定着している。
ワイン全体の成長率が2.4%という中で、ロゼのカテゴリは世界では過去10年間で16.5%。成長は際立っている。米国ではパスクア社はコロナ禍においても売上げ20%増の成長を続けているという。イギリスのロゼ市場は今迄になくドライなロゼが人気で、より高級で豪華なイメージになっているともいう。
特に重要なのはイタリアンロゼの世界市場シェアが2倍に増え、プレミアムな商品が求められているという点。言い換えるとプレミアムワインにカテゴライズされるロゼワインが売上げを伸ばしている。
このような現状分析から、パスクア社は、11ミニッツの次のフェーズとして、さらなる高みを目指すプロジェクトを立ち上げた。
3年間の研究と作業の果てに、新しいプロジェクトは結実した。ロゼをより深く追求し、11ミニッツプロジェクトの次のワインが御披露目された。
それが「パスクア Y(イプシロン) ロゼ トレヴェネィエ 2020」だ。
エチケットにはその名「Y」が記されている。Yを表す3本の線はブレンドした3種のブドウ(コルヴィーナ、トレッビアーノ・ディ・ルガーナ、カルメネール)を指し、それぞれ独自の性格を持った3種のブドウがこの文字のように丁度真ん中でバランスを取っていることを表現している。
ワイン製造担当者カルロ・オリヴァリさんはこう語ってくれた。
「Yは3種のブドウをブレンドして創りました。コルヴィーナは赤果実の香りとかなりの酸味、トレッビアーノ・ディ・ルガーナはシトラスと白い花の香り、カルメネールはワインに熟成するチカラを与えています。
3種のブドウは11ミニッツと同じく、ガルダ湖南に位置するブドウ園で栽培されたものです。この3種のブドウは、畑で注意深く選別され手摘み。白ブドウは収穫後直ぐにワイナリーで圧搾されます。
マセラシオンは大体一晩。8~12時間です。次の日に圧搾機を使い赤ブドウがソフト圧搾されます。得られたマストは冷却され清澄されます。」
「この清澄化後にアルコール発酵が始まります。発酵のちょうど半ば頃、約10%をフランス産オーク樽に移し替え、発酵を完了させます。30%は、アルコール発酵後に、フランス産オークのバリックの中で4カ月ほど熟成させます。樽を2度使うこの手法は、フルーティで酸味の効いた見事なバランスを作り出すために考えられたものです。そして完成したのが「パスクア Y(イプシロン)」です。」
「パスクア Y(イプシロン)」はとてもすっきりしていて、ロゼらしく、食材を選ばないフードフレンドリーなワインだ。
素晴らしい色と魅惑的な香りをもち、爽やかな赤果実とシトラスのノートがある。
香りは、オーク由来の微妙なニュアンス。バニラ、そして、複雑で豊かなスパイスもある。味わいは、酸味に裏付けられた多くのフルーツのイメージ。
パスクア社の執念を感じ取ることが出来る素晴らしいロゼワインだ。日本での発売は2021年秋頃を予定している。即飲んで美味しいし、1、2年寝かせて、どんな味わいになるのか楽しみにしてみたいワインでもある。
もう一本、パスクアから、「プロセッコ ロゼ エキストラ・ドライ ミレジマート 」も紹介したい。
「パスクア Y」に「11ミニッツ」が存在したように、このプロセッコには「ファミリア・パスクア プロセッコ ブリュット Romeo & Juliet」というお兄さん的なワインがある。
エチケットにはヴェローナを舞台にした「ロミオとジュリエット」にまつわるストーリーが盛り込んである。
今も残されているジュリエットの家は、今日では、観光名所となっており、連日、訪れる観光客が、壁にさまざまなメッセージを書き込んでいく。「ファミリア・パスクア プロセッコ ブリュット Romeo & Juliet」のラベルは、その壁をビジュアル化している。
「プロセッコ ロゼ エキストラ・ドライ ミレジマート 」は、そのシリーズに加わった、ロゼのプロセッコであり、ラベルにはジュリエットの家の中庭の写真が使われている。
ヴェネト州トレヴィーゾ県の土着品種グレーラにピノ・ネロを使い、シャルマ方式でフレッシュに仕上げたプロセッコロゼ。色調は淡いサーモンピンク、繊細な泡、フルーティな味わいながら、適度なドライさがあり、こちらも料理を選ばない。
これから、暑くなる季節に向かって、重宝するワインになるだろう。