ルーチェとはなにか?
スーパー・タスカンのひとつ「ルーチェ」が25周年を迎えた。
これを記念して、今年5月、25回目のヴィンテージとなるルーチェ2017のお披露目が開催される予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う入国規制で当主ランベルト・フレス
コバルディ氏の来日が叶わず、残念ながら中止。
しかしながら、ルーチェ2017を試飲する機会に恵まれたので、そのインプレッションをお伝えしたい。
読者の中にはルーチェをご存知ない方もいらっしゃると思うので、まずはルーチェとは何ぞやについて。
ルーチェは1995年、イタリア/トスカーナのフレスコバルディ家とカリフォルニア/ナパ・ヴァレーのロバート・モンダヴィ・ワイナリーが共同で始めたプロジェクト。モンタルチーノの土地で、従来にない革新的ワインを生み出すことを目標とした。
フレスコバルディはもともとモンタルチーノに「カステル・ジョコンド」というエステートを所有しており、両家はそこで栽培されているサンジョヴェーゼとメルローに着目。それまで別々に造られていたサンジョヴェーゼ100%のブルネッロ・ディ・モンタルチーノとメルロー100%の「ラマイオーネ」、この2 つのブドウ品種を50:50の比率でブレンドすることに決めた。それがルーチェである。
ルーチェの初リリースは1997年で、93年と94年の2ヴィンテージが同時に発売された。ところがどういう経緯かは忘れたが、日本では当初正規には輸入されず、筆者もカリフォルニア取材のついでに、ナパ・ヴァレーのワインショップで購入したことを思い出す。
秀逸なるスーパータスカン
プロジェクトの発足から25年、初ヴィンテージの93年から数えて25回目のヴィンテージとなる2017年。ルーチェを味わうのは久しぶりだが、じつに秀逸なスーパー・タスカンだった。
ワインメーカーのアレッサンドロ・マリーニさんによれば、2017年は遅霜の被害を
少し受けたが、そのおかげでむしろアロマは凝縮。夏の暑さが顕著なヴィンテージではあるものの、ブドウ畑はモンタルチーノの丘でも高地にあり、バランスは保たれたと言う。
メルローは斜面下部の粘土質土壌、サンジョヴェーゼは上部のシスト土壌の畑で栽培。前者は8月末から9月初旬、後者はその1ヶ月後に収穫された。各品種の区画からブドウを厳選。もちろん収穫は手摘みである。
摘み取られたブドウはこの年稼働を始めた新ワイナリーで醸造された。除梗の後、選果台の上でブドウを粒選り。コンクリートタンクで2週間のアルコール発酵とマセレーション。垂直プレスで優しく圧搾し、オークのバレルに移してマロラクティック発酵。12月にブレンドを行い、24カ月間の熟成が施されている。
ルーチェ2017をいよいよグラスに注ぐ。
色調は輝きをもち、深みのあるルビーカラー。よく熟しながら、決してジャミーには感じられないブラックチェリーのアロマ。シナモンやナツメグなどのスパイスにビターチョコレートの香ばしいフレーバーが重なり合う。ふくよかな果実味とともに緻密なタンニンとしなやかに伸びる酸。水平に広がり、柔らかく肉感的なメルローと、垂直に伸び、背骨を形作るサンジョヴェーゼが素晴らしい調和を見せていた。
「暑い年だったが、サンジョヴェーゼの実力が発揮された」とアレッサンドロさ
ん。
ランベルト・フレスコバルディ氏は、「今飲んでもとても美味しいけれど、25年後にはさらに素晴らしい熟成を遂げているだろう」と語った。