ジェイコブス・クリークは「失敗しません!」
世のワイン好きは、2つのパターンに分けられる。
ジェイコブス・クリークと聞いて「ああ、オーストラリアの大手ワイナリーね」とすぐにピンとくる人。ワイン売り場で「このラベルのワインを選んでおけば間違いない」とジェイコブス・クリークの名を知らないまま手にとり、知らず知らずのうちにリピーターとなる人。
というぐらい、ジェイコブス・クリークはコスパがよくて、品質が安定していて、日本の食卓にもすっかり定着している。
そんな「私、失敗しませんので」の名セリフを地で行くジェイコブス・クリークが、ついにオーガニックワインの世界へ参戦を果たした。
もともと自然への理解が深い造り手だが、完全なるオーガニックを実践するとなると、話は変わってくる。天候次第では収穫量が激減し、大損害に繋がることもあり得るからだ。しかし完璧主義のジェイコブス・クリーク、不確定要素の多いオーガニックワインでも絶対に「失敗しません!」と言い切らねばならない。
オーガニックワインを完成させるためには、さぞ並々ならぬ苦労があったに違いなく、最高醸造責任者のダン・スウィンサーに発売までの道のりを振り返ってもらった。
誰もがオーガニックをやりたがるわけではない
「まず、栽培農家の誰もがオーガニックをやりたがるわけではありません。仕事はハードになるし、収穫量が減るリスクもある。
それでも、南オーストラリアのリバーランドでオーガニックに情熱を燃やす栽培農家と出会い、マレー・ダーリング、ラングホーン・クリークでも良質な有機ブドウを育てている農家とコンタクトがとれ……。じつは、オーガニックを導入した自社畑も持っていまして、そこでようやくオーガニックワイン造りが具現化してきたのです」
産地を一カ所に限定せず、各地のブドウをブレンドしてバランスをとることで、収穫年が違っても品質をキープする。あとはジェイコブス・クリークが培ってきたクリーンな醸造を行えば問題ない、との結論に到達。オーガニックワインの完成まで、ゆうに8年の歳月が流れていた。
「EUをはじめ公的な認定のもとオーガニックを実践できる畑はどうしても限られているので、供給量はとても少ない。ということで、オーストラリア本国の市場では販売してないんです。まずはオーガニックへの意識が非常に高い北欧諸国でリリースし、次が日本」
なんと、本国に先駆けての発売である。
では、スタンダードなワインとオーガニックなワイン、飲み手としてはどう使い分けすればいいのだろう。
「オーガニックだからといって、オーガニックな香りが嗅げるわけでもない(笑)。同じジェイコブス・クリークのワインなら、造りの哲学はどれも一緒です。造りのアプローチが違う、というだけです。まずは使用品種やブレンドの部分で興味を持ち、気軽に飲み始めていただければ、と思います」