ガッティナーラは、標高4,634mのモンテ・ローザの麓の丘陵地帯に位置している。アルプスから吹き下ろす風により、ブドウにとって最適な乾燥した気候と昼夜の寒暖差に恵まれて、鉄分やミネラルに富んだ火山性土壌がワインに香り高さエレガントさやフィネスをもたらすという。
初代、クレメンテ・トラヴァリーニさんがワイン生産を開始したのは1920年。以来、栽培や醸造のあらゆる面で、量より質を追求し続けたネッビオーロのスペシャリストであり、わずか約100haの生産地のうち59haを所有しているパイオニアだ。
最初に供されたのは、ネッビオーロのみで造られるユニークなスプマンテ。冷涼な気候に由来する繊細で伸びやかな酸に、シトラスや青リンゴ、ハチミツやブリオッシュの複雑な香り。
4代目の名を冠した「チンツィア」は、スミレやバラのアロマに心地よいミネラルを持ち、日本の日常にもしなやかに馴染む、フード・フレンドリーな味わいだ。さらに、試飲は「ガッティナーラ2015」やリゼルヴァなどへと続くが、これらには印象的なシェイプのボトルが採用されている。「偉大なワインは普通のボトルに入れるべきではない」と考えた三代目、ジャンカルロさんが発明したもので、美しさだけでなく、デキャンタージュしなくても澱をボトル内に留めることができる画期的な形状なのである。
クリエイティブ精神あふれる彼が最後に手掛けたのは「イル・ソンニョ」。イタリア語で「夢」を意味する名を冠したプレミアムなアイテムで、収穫したブドウを約100日間自然乾燥して造られている。残念ながら、完成を待たずに彼は亡くなったが、その夢と情熱は一族に継承されている。今年6月に醸造学校を卒業したばかりのチンツィアさんの娘、カロリーナさんも現在ワイン造りに加わるようになった。
セミナーでは、栽培や醸造の解説はもちろんのこと、歴代のオーナーのエピソードなどもたっぷり盛り込まれ、最後には参加者たちからの質問も多数飛び交う、活気ある内容となった。
世界中の愛好家が憧れる、ネッビオーロという品種。ゆえに、近寄りがたい偉大なワインと捉えられることも多いが、その魅力は多彩で、料理との幅広い可能性を期待させる味わいが身上である。ガッティナーラの地位向上に大きく貢献し、この大いなる遺産を次世代に引き継ぐファミリーのストーリーも含めて、各アイテムをじっくり比較しながら「ネッビオーロとは?」を考えさせられ、新たな側面に気づく貴重な機会となった。
ネボレ2013 メトド・クラシッコ エクストラ・ブリュット
●生産国/地域:イタリア/ピエモンテ州 ●品種:ネッビオーロ ●価格:8,500円
チンツィア
●生産国/地域:イタリア/ピエモンテ州 ●品種:ネッビオーロ95%、ボナルダ、ヴェスポリーナ5% ●価格:3,100円
ガッティナーラ2015
●生産国/地域:イタリア/ピエモンテ州 ●品種:ネッビオーロ ●価格:5,000円
ガッティナーラ“トレ・ヴィーニェ”2013
●生産国/地域:イタリア/ピエモンテ州 ●品種:ネッビオーロ ●価格:6,500円
ガッティナーラ・リゼルヴァ2013
●生産国/地域:イタリア/ピエモンテ州 ●品種:ネッビオーロ ●価格:7,500円
イル・ソンニョ2012
●生産国/地域:イタリア/ピエモンテ州 ●品種:ネッビオーロ ●価格:14,000円