ワイン1本当たり最大94円安
「ヨーロッパ産ワインが安くなる!?」と巷で噂の「日欧EPA」がこの2月、ついに発効となった。
「日欧EPA」とは、日本と欧州連合間に結ばれた経済連携協定のこと。2013年4月から交渉がはじまり、5年越しでようやく実現に至った。
私たちにとって何よりうれしいニュースは、ヨーロッパから輸入される商品にかけられていた関税が削減もしくは撤廃になることだ。食品だけでも対象品目は、肉・魚・果物から、パスタやチョコレートまで多岐におよぶが、その多くは8~16年をかけての「順次撤廃」。ワインだけが、「即時」撤廃となる。
だから、「ヨーロッパ産ワインが安くなる!」と騒がれたのだが、さて、いったいどれだけ安くなるのだろう?
まずは、基本をおさらいしてみよう。
輸入ワインにかけられる税金は、「酒税」「関税」「消費税」の3種類。「消費税」は現在8%で、今秋には10%に増税。「酒税」は、輸入・国産ともに、750mlボトル1本あたり60円だが、こちらも2020年から段階的に増税されることが決まっている。
そして、輸入ワインにだけ課せられる「関税」は、「価格の15%または1リットル当たり125円のうち低いほうの税率が適用」となる。端的に言えば、500円のワインだろうが、5万円のワインだろうが、750mlボトル1本あたりの関税額は最大で約94円。今回の関税即時撤廃でワインが安くなるのは確かだが、その恩恵が享受できるのは、価格に占める関税の割合が高いデイリーワインといえそうだ。
今、ワイン輸入量ではトップを誇るチリも、1990年代にはわずか数%のシェアしかなかった。だが、2007年の日本チリ間EPA発効から10年で、チリ産ワインの輸入量は5倍に拡大した。店頭価格3ケタのチリワインには、関税撤廃が大きなメリットとなったのだ(※)。
ヨーロッパ産ワインが身近に
そして今度はヨーロッパの攻勢が始まる。EPA発効を見込み、ヨーロッパ産デイリーワインのラインナップ拡充や値下げを発表した会社も多い。今年はこれまでよりずっと、ヨーロッパ産ワインが身近に感じられるはずだ。
では、ヨーロッパ産ワインの魅力とはなんだろう?
まずあげられるのが、品種の面白さだ。
デイリーワインクラスで見ると、新大陸のワインはその多くが「カベルネ・ソーヴィニヨン」や「シャルドネ」といった国際品種が中心。でも、ヨーロッパには国ごと、地域ごとにさまざまな地場品種がある。
ワイン造りの長い歴史の中で、その土地のテロワールに育まれた地場品種は、今や時代の潮流だ。過小評価されていた時代もあるが、土地に根差した地場品種へと回帰する造り手も増えている。
さらに、食とのマリアージュもポイントのひとつ。
パスタやピザにイタリアワイン、ソーセージにドイツワイン、チーズにフランスワインなど、土地のワインと土地の料理を合わせる楽しさは格別だ。ヨーロッパ産の食材もEPA発効で(段階的とはいえ)安くなるというのだから、うれしいではないか。
もうひとつ、デイリーワインを入り口に、品種で、地域で、造り手で、さらにワインの奥深さを究めるという上級編の楽しみ方もある。
たとえば地域から村へ、村から区画へと、畑が限定されるほど、ワインは面白くなる。もちろん、ワインの味わいは価格に比例するものではないが、伝統に裏付けされたヒエラルキーを「究める」楽しさもまた、ヨーロッパ産ワインならでは、ではないだろうか。
ちなみにスパークリングワイン1本当たりの関税は、一律で136.5円。今回の関税撤廃メリットとしては、スパークリングの方が大きいかもしれない。(森田七海)