
ヴィンテージの概況
2012
☆☆☆☆☆
7月から収穫期まで好天が続き、質的には素晴らしいものの、開花期の雨で収穫量は少ない。
2009
☆☆☆☆
8月から暑く乾燥した日が収穫期まで続き、酸は低めだが熟度の高いブドウが収穫できた年。
2008
一貫して冷涼な年で酸が高い。その一方十分な熟度もあり、長期熟成のポテンシャルは高い。
2007
☆☆☆
春先暖かく、生育は早く進んだが、夏に雨が降り続き、平均的なヴィンテージ。
2006
☆☆☆☆
7月の暑さでブドウの熟度が上がった一方、酸の低い年。シャルドネよりピノ・ノワールが上質。
2005
☆☆☆
モンターニュ・ド・ランス南部で病害の大きかった年。コート・デ・ブランのシャルドネは素晴らしい。
2004
☆☆☆☆
収穫量の大きかった年。シャルドネは量質ともによく、ピノ・ノワールの質はやや劣る。
2003
☆☆☆
酷暑の年で酸は低い。霜害もあり収穫量は少ない。ミレジメを造ったメゾンは少数。
2002
☆☆☆☆☆
夏の天候は悪かったが、9月の晴天でブドウは熟した。夏の気温が低く、酸の高い年。
テイスターのご紹介
石田 博(いしだ・ひろし)
1969年東京生まれ。(社)⽇本ソムリエ協会副会⻑。甲子園を目指す高校球児だったけれど、体調を崩して野球をあきらめ、90年にホテルニューオータニに入社。94年よりレストラン ラ・トゥール・ダルジャン配属され、ソムリエとしてのキャリアをスタート。00年世界最優秀ソムリエコンクール第3位。11年「現代の名工」に選出される。
2012
01 ニコラ・マイヤール
ブリュット・ミレジメ・プルミエ・クリュ 2012
石田 グレープフルーツ、コリアンダー、パンデピスが香る。還元的だが、それもひとつの個性となり上品にまとまっている。
柳 気泡が繊細。青りんごやはちみつのニュアンスがあり、酸がピュアでフレッシュ。
南アフリカやオレゴンで経験を積んだ現当主は、醸造所にソーラーパネル、グラビティ・システムを導入するなど革新的に動く。樹齢は平均30年以上と高め。
●輸入元:豊通食料
●品種:ピノ・ノワール55%、シャルドネ45%
●希望小売価格:10,000円
2009
03 ルイ・ロデレール
ブリュット・ヴィンテージ 2009
石田 調和がとれ、緻密で洗練されたスタイル。オートミールやマッシュルームが香り、旨みを感じる。
柳 濃いゴールド。トップノーズから酵母に由来するブリオッシュが香り、厚みあるストラクチャーを形成。
ロシア皇帝に愛されたクリスタルでおなじみのメゾン。使用するブドウの約75%は、200ha以上の所有畑から供給。年毎のリザーヴ・ワインも150樽と膨大な量。
●輸入元:エノテカ
●品種:ピノ・ノワール70%、シャルドネ30%
●希望小売価格:10,000円
04 テタンジェ
ブリュット ミレジメ 2009
石田 トースト香や生アーモンドのニュアンス、旨みがある。伸びやかな酸が透明感につながる。還元的。
柳 パワーよりもエレガンスが持ち味で、フレッシュかつタイト。はちみつレモンが香り、酸はストレート。
経営権の譲渡が活発なシャンパーニュのなかで、創立以来オーナー一族が代々継ぐ数少ないメゾン。288haの自社畑に育つ上質なシャルドネが強みのひとつ。
●輸入元:サッポロビール
●品種:シャルドネ50%、ピノ・ノワール50%
●希望小売価格:10,000円
05 ジャカール
ブラン・ド・ブラン 2009
石田 控えめでソフトな印象。トースト、マッシュルーム、ミルクコーヒーが香る。フレッシュな酸を持ちつつも、ふくよか。還元的。
柳 ハーブの風味。ミネラルと酸の豊かな味わいは、タイトながら軽やか。
1000以上の生産者を束ねる協同組合のため生産量と質が安定、多くのエアラインでも採用されるシャンパーニュを手掛けるメゾン。2009は特級畑産のみ使用。
●輸入元:国分グループ本社
●品種:シャルドネ100%
●希望小売価格:10,000円
06 ニコラ・フィアット
アンシャントメント スペシャルエディション 2009
石田 ノワゼット、カラメルクリーム、プラリネの香り。酸は控えめで熟成感があり、ふくよかでソフト。
柳 2009年にしては熟成が深まり、すでにモカが香る。泡立ちがやわらかく、酸とのバランスも良好な味わい。
1976年創立とシャンパーニュの世界では新興ながら、今や12年連続でフランス国内販売量でトップに君臨するメゾン。この2009ボトルは日本限定パッケージ。
●輸入元:日本酒類販売
●品種:ピノ・ノワール40%、ムニエ40%、シャルドネ20%
●希望小売価格:5,950円
2008
08 ヴーヴ・クリコ
ヴーヴ・クリコ 2008
石田 余韻の長さが特徴的。ストレートな酸でタイトな印象ながら、トースティな風味が旨みとともに続く。
柳 レモンやはちみつ、またヨードっぽいニュアンスも。フレッシュでミネラルもあるがボディはしっかり。
1772年創立のメゾン。品質管理への情熱と商才にあふれたマダム・クリコの活躍は、もはやシャンパーニュ界の伝説。2008は全量の5%を木樽で醸造・熟成。
●輸入元:MHDモエ ヘネシーディアジオ
●品種:ピノ・ノワール61%、ムニエ
●希望小売価格:9,200円
09 ポル・ロジェ
ブリュット・ヴィンテージ 2008
石田 タイトで力強いヴォリューム感を見せる。オートミール、トースト、ドライポルチーニが香り、旨みもしっかり。
柳 色調はややグリーン。フレッシュ感を併せ持ちつつ、「ワインらしさ」にあふれた飲み口。
マロラクティック発酵は行い、地下深く室温9度に保たれたセラーで8年瓶内熟成。機械化が進むルミアージュ(動瓶)だが、ここでは職人が手作業で行う。
●輸入元:ジェロボーム
●品種:ピノ・ノワール60%、シャルドネ40%
●希望小売価格:12,000円
10 ティエノ
ミレジメ・ブリュット 2008
石田 トースト、スパイス、胡桃が最初から香る。酸に金属的なニュアンスがありつつ、クリーミーで旨みは強い。
柳 いい意味で中庸。フレッシュさ、果実感、ミネラル……すべてにおいて均整がとれている。
ブドウの仲買人から造り手への転身により、それまで培ってきた栽培農家との繋がりをフルに活かすメゾン。2008の瓶内熟成は約9年、ドザージュは8.5g/l。
●輸入元:ベリー・ブラザーズ・アンド・ラッド
●品種:ピノ・ノワール50%、シャルドネ50%
●希望小売価格:8,500円
11 マム
ミレジメ 2008
石田 石灰、ジロールのニュアンスを感じる。苦味が際立ち、ストレートに厳しさを感じる辛口。還元的。
柳 今まで飲んできたマムと比べると、よりキリッと引き締まったスタイル。ヨード香がして、タイト。
ドイツのマム家により1827年に創立されたメゾン。F1の公式シャンパーニュで、「勝者の~」「成功を祝う~」とめでたいイメージが先行するが、造りは真摯。
●輸入元:ペルノリカール・ジャパン
●品種:ピノ・ノワール64%、シャルドネ36%
●希望小売価格:8,400円
12 ブルーノ・パイヤール
エクストラ・ブリュット アッサンブラージュ 2008
石田 コーヒー、ヨード、トースト、ジンジャーブレッドが香る。ディテールがあり、洗練された深みを感じる。
柳 青りんご、スパイス、焦げ目が出る前のトーストが香り、酸はフレッシュ。バランス良好。
1981年創業の、辛口のみ手掛けるメゾン。三ツ星シェフのジョエル・ロブションがブラインド試飲で感動し、すぐメゾンを訪れて仕入れたことでも注目を集めた。
●輸入元:ミレジム
●品種:ピノ・ノワール42%、シャルドネ42%、ピノ・ムニエ16%
●希望小売価格:11,000円
13 ルグラ・エ・アス
ミレジム ブラン・ド・ブラン 2008
石田 ミラベル、ヨード、ドライフルーツ、ドライポルチーニが香る。酸味はストレートかつ金属的で、ドライ。還元的。
柳 メイラード反応によるモカ・フレーバーが嗅ぎとれる。フィニッシュは甘やか。
もともと栽培や造りに携わっていたブリジット・アスとフランソワ・レグラが1991年に創業したメゾン。すべてテット・ド・キュヴェ(一番搾り)のみ使用する。
●輸入元:ヴィノラム
●品種:シャルドネ
●希望小売価格:10,000円
14 アンドレ・クルエ
MILLESIME 2008
石田 ココア、ドライポルチーニ、ミラベルが香る。やや還元的だが、複雑味、しっかりとしたヴォリューム感あり。
柳 フレッシュな酸が高く、歯茎にまとわりつくよう。香りが広がるまで、時間をかけたい。
先祖がナポレオンの側近で、ナポレオンより譲られた土地で栽培やワイン造りを始めたとの逸話を持つメゾン。ラベルに記載はないが、ブドウはすべて特級畑。
●輸入元:ヴィントナーズ
●品種:ピノ・ノワール80%、シャルドネ20%
●希望小売価格:12,000円
15 パイパー・エドシック
ブリュット ヴィンテージ 2008
石田 トースト、火薬、エスプレッソが香る。ドライな酸が際立ち、旨みあり。
柳 濃い色調。モカのようなカフェやトーストが香る。口当たりがクリーミーで、酸とほかの要素とのバランスがうまくとれている。
カンヌ国際映画祭の公式シャンパーニュで、映画やファッションとのコラボでも話題性の高いメゾン。2008年は、コート・デ・ブランのシャルドネ比率が高め。
●輸入元:日本リカー
●品種:ピノ・ノワール、シャルドネ、ピノ・ムニエ
●希望小売価格:7,380円
2007
17 アヤラ
ブリュット・ミレジメ 2007
石田 全体にクリーンでフレッシュ。モカ、ミラベル、ジロールが香り、酸が軽やかで調和がとれている。還元的。
柳 濃い黄金色。シャンピニヨン、モカが香る。ヴィンテージに対し、熟成の進行が早い様子。
最良のピノ・ノワール産地、モンターニュ・ド・ランスのアイ村に拠点を構えるメゾン。当然2007年も近隣のピノ・ノワールをメインに使用。ドザージュは6g/l。
●輸入元:アルカン
●品種:ピノ・ノワール20%、シャルドネ80%
●希望小売価格:6,000円
18 ビルカール・サルモン
ヴィンテージ 2007
石田 オートミール、モカ、金属的な香りがバランスよく広がる。酸と苦味が際立つが、エアリーでふくよか。還元的。
柳 泡立ちがクリーミー。アタックが強く、深みはほどほど。トーストやブリオッシュが香る。
メゾンの規模に対して生産量は年間約15万ケースと少なめに抑え、NVからすべてブルゴーニュの小樽熟成。ヴィンテージのドザージュはエクストラ・ブリュット。
●輸入元:JALUX
●品種:ピノ・ノワール、シャルドネ
●希望小売価格:12,000円
19 ボワゼル
シャンパーニュ グランド ヴィンテージ 2007
石田 全体に軽めのトーンで展開しながら、複雑さはきちんとあり、甘味と旨みの調和もとれている。
柳 かなり濃い黄金色。トーストの香りがして、酸の印象も強い。奥行き感よりも複雑味で個性を見せている。
シャンパーニュに生まれ育った夫婦が1834年に創業、5世代に渡り受け継がれてきたメゾン。2007は、マロラクティック発酵を行い、全量の3%を小樽熟成。
●輸入元:ピーロート・ジャパン
●品種:ピノ・ノワール50%、シャルドネ40%、ピノ・ムニエ10%
●希望小売価格:9,812円
20 ドゥラモット
ブラン・ド・ブラン 2007
石田 トーンは軽め。シフォンケーキ、ドライフルーツ、カスタードクリーム、ノワゼットが香る。舌触りはクリーミー。
柳 線は細いが、後を引く味。ピュアでフレッシュな酸味があり、まだ若さが感じられる。
最高級&最高額シャンパーニュのひとつである「サロン」と同じ畑のブドウを使用するメゾン。こちらはサロンと同じブラン・ド・ブランで、瓶内熟成4年以上。
●輸入元:ラック・コーポレーション
●品種:シャルドネ100%
●希望小売価格:10,000円
2006
22 デュヴァル=ルロワ
ミレジム・プレスティージュ・ブランド・ブラン グラン・クリュ・ブリュット 2006
石田 テンションが高く、凝縮感とヴォリューム感あり。セップやオートミールが香り、味わいは厳しく力強い。
柳 ビッグでおおらかなスタイル。バター的な風味を持ちながら、酸はきちんと引き締まっている。
シャンパーニュでいち早く有機認証を受けた畑を所有するメゾンで、オーナーもシェフ・ド・カーヴも女性。2006は全体量の4%が樽熟成、ドザージュは3.6g/l。
●輸入元:ヴィレッジ・セラーズ
●品種:シャルドネ100%
●希望小売価格:11,500円
23 ゴッセ
グラン ミレジム ブリュット 2006
石田 ミラベルからノワゼットまで香り、表情の豊かさが伺える。酸はフレッシュで、舌触りはクリーミー。
柳 りんごのコンポート、焼き菓子、また熟成感からくるモカの香りも嗅ぎとれる。味わいはふくよか。
リンゴ酸を高く保つためマロラクティック発酵はしない。「NVでも熟成可能」とのポリシーの下、長期瓶内熟成を心がけるメゾン。2006年は84カ月瓶内熟成。
●輸入元:テラヴェール
●品種:ピノ・ノワール56%、シャルドネ44%
●希望小売価格:12,000円
2005
25 ランソン
ゴールドラベル・ヴィンテージ・ブリュット 2005
石田 トースト、ライブレッド、ドライフルーツ、オードヴィが複雑に香る。酸はストレートで、味わいは緻密かつなめらか。
柳 トースト、モカ、少しヨードも香る。熟成感、酸のバランスもよくクリーミー。
特級格付けの村8カ所からブドウを調達。発酵はステンレスタンクを使用し、マロラクティック発酵は行わない。セラーでの瓶内熟成は最低5年以上。
●輸入元:アサヒビール
●品種:ピノ・ノワール51%、シャルドネ49%
●希望小売価格:8,610円
2004
27 アルフレッド・グラシアン
ブリュット・ミレジメ 2004
石田 ミラベル、オードヴィ、サンダルウッド、カマンベール、モカ、石灰が豊かに香る。味はキメ細やかでスパイシー。
柳 まだグリーンが残る黄金色。樹脂、ハーブ、少しシャンピニヨンも香る。キレのいい味。
シャブリで3~4年使用した樽を買い付け、すべてのシャンパーニュの醸造・発酵を樽で行う稀有なメゾン。1905年から現在まで、シェフ・ド・カーヴも代々世襲。
●輸入元:nakato
●品種::ピノ・ノワール25%、シャルドネ64%、ピノ・ムニエ11%
●希望小売価格:16,000円
以下、後編の石田博 vs 柳忠之「ミレジメ」考対談編に続く。近日公開!