テーマは、カルメネールをいかにエレガントに造るか
――店頭でよく見かけるサンタ カロリーナのワイン。日本でこれほどシェアを伸ばしてきたのは、一体なぜだとお考えですか?
「やはり歴史、ですか。というのも、ワイン造りは歌を創る作業のようなもの。歌は、先にメロディーができて後から歌詞を付けることも、歌詞が先でメロディーをのせていくこともあります。ワインの場合、『ワインはこうあるべき』というコンセプトを練りつつ、市場のニーズも観察。順番が前後したとしても、歌もワインも最後は2つの要素をマッチさせて完成させます。それが可能なのは1875年創業以来、ノウハウと各国の市場のポートフォリオを積み重ねてきた我が社のバックグラウンドのおかげだと思います」
――手掛けるワインは、基本的にリーズナブルなタイプが多い?
「当社では、ワイン造りを2つのラインに分けて考えています。ひとつは、『サンタ バイ サンタ カロリーナ』など皆さんご存知のデイリーワインで、生産性を高めた万人向け。もうひとつが、2017年3月から日本で販売を開始した『エレンシア』や『レセルヴァ デ ファミリア』を含むプレミアムのラインです」
――プレミアムワインのプレミアムたるゆえんは?
「造りがそもそも違いまして、プレミアムワインのほうは、造り自体が目的を持ったプロジェクトなのです。土壌に適した品種を探したり、新しい醸造技術を組み合わせたり、と実験を経た存在。と同時に、そこで得たデータを次なる量産へ持っていくひとつの過程でもあります」
――でも、実験的とはいえ、リリースするワインはどれも最初から量産するでしょう。< 「いえいえ、サンタ・カロリーナには年間100本だけ生産するワインなんてのもあります。さすがに少なすぎて日本には輸入できないけど(笑)」 ――では、日本初登場のフラッグシップワイン「エレンシア」については、当初どのような目的で造られたのでしょう?
「テーマは、『チリを代表する品種、カルメネールをいかにエレガントに造るか?』。
それまでのカルメネールは荒々しいワインになりがちで、エレガントの対極にありました。それで目をつけたのは、株の選別です。2005年から着手し、最終的には現在のスタイルにまで洗練させることができました」
――ほかのワインと、どう飲み分けるべきですか?
「エレンシア」については、『カルメネールとはこういうものである』と教科書に載るような、カルメネールを代表するワインだと捉えてみてください。ワインのプロの方々がカルメネールの特徴を把握したいときには、お手本となるワイン。そして、カルメネール未体験のビギナーの方にとっては、新しい発見になるようなワインです」
――「エレンシア」という名前は女性名詞ですよね。やはりワインも女性的?
女性名であることを強く意識はしてこなかったけれども、エレガントなスタイルを求めたら自然と女性的なワインになったのは確かですね。とはいえ、ヴィンテージによって人物像は違ってきます。2010年は素晴らしい女性で、その前年は、えーと、だいぶ勝気な女性で(笑)。その年ごとの特徴をきちんと出して造っていますから。
――食事とのマッチングについては?
「最近は毎年のように日本を訪問している私ですが、いつも日本食とワインのマッチングをイメージしながら、あれこれ食べまくります。
ラーメンから懐石料理まで、なんでもトライしてきたなぁ。せっかく来日してるんだし、と夜は2食(笑)!」
――体重計が怖そう……。それで結果は?
「甘いタレのついたウナギなどは当然合うとして、驚いたのは、醤油や薬味を使った料理全般。一般的に赤ワインは醤油と相性が良くないのに、エレンシアならうまくいくんです。ワサビを添えた刺身だって合いましたよ」
――カバレロさん自身は、普段「エレンシア」をどう楽しんでいます?
「ちょっとしたお祝いをするとき、家族と一緒のとき、『今日は僕が料理を作るから、ワインはこれを開けよう』なんて気分のとき。個人的には、その場にたくさんの人を集めなくていいから、ただただ自分の大切な人とゆっくり飲みたいワインなんですよ」