2020年2月にパリで開催されたVINEXPOとWineParis共同展示会に行ってきた。
VINEXPOは、通常ボルドーや最近では香港、そして数年前に2回東京でも開催されているが、パリは今年初めての開催。共同展示会ということもあり、規模も想像以上に大きかった。
こちらのイベントはBToBのイベントなので、ワイン業界の方はご存じだろうが、一般の方は入れないので、多くの人には認知されていないイベントかもしれない。その為か、思っていたよりも日本の方は見かけなかった。特にVinexpoは今回パリでは初開催で、パリや香港での開催の方が認知されているかもしれない。
今回アルザスからこうしてパリにまで来たのだが、ここでもアルザスワインを中心に周ってきた。逆にいつもアルザスからアルザスワインを見ているので、こうして外から他の地方のワインと比べた時のアルザスワインというのも見られたので、良い経験になった。
3日間の密度の濃いワイン見本市、テイスティングをしていくだけでもかなり時間がかかるので、こういったイベントはある程度事前に下調べをして行った方が良いだろう。結局時間が足りず、見たいところを全て周りきれなかった。
アルザスワインに関しては、アルザスワインとしてCIVA(アルザスワイン委員会)が他の地方と同じように大きなパビリオンで出展もしていたが、他にも個人で出展しているワイナリーもあれば、他にまとまった団体として出展しているところもあり、他の団体の中で出展しているアルザスワイナリーもあった。そんな中に垣間見えたアルザスワインの現状をお送りしていきたいと思う。
パリ市内の展示会会場へ
会場はパリのPorte de Versailles 街中にある展示会会場でアクセスも良かった。平日月曜~水曜まで開催されていたこともあり、商談用の展示会というのが良く分かる。
4、6、7-17、7-2と4つのホールで開催されていたが、そのうち2ホールがVinexpo、2ホールがWineParisとして開催されていた。
会場に到着すると、地方ごとにホールが分かれていたので、まずはアルザスと書かれていた6ホールへ向かった。
こちらにはCIVA(アルザスワイン委員会)のアルザスワインパビリオンが入口付近の良い場所で出展。30社ほどこのパビリオン内で出展していたと言うが、今回の展示会では全体で約70のアルザスワイナリーが参加していたそうだ。
中心にCIVAから出展していた個人ワイナリーが出展していたが、その周りを大規模なアルザスのコオぺラティブと呼ばれるアルザス共同ワイナリーが出展していた。
アルザスの周りには他の地方のワイナリーが出展していたが、やはり他の地方のワイナリーはブランディングがしっかりしているという印象だった。他の地方では誰もが聞いたことのある大手のワイナリーも多く、さすがワイン界の大御所という感じだ。大きなワイナリーのブースでは、ブース内でもセミナーなどが開催されていた。
他の地方や大手のワインブランドに比べるとスケールが違う。今回出展していたアルザスワイナリーさんの話によれば、アルザスは600ほどのワイナリーがあるそうだ(以前見たアルザスワイン街道のフライヤーには980となっていたが、今はどんどん減ってきているそうで、確かな数字ではない…)。
それでもかなりの数のワイナリーがアルザスには存在し、それが段結をしてアルザスワインをプロモーションしようと言うのは難しいことのようだ。
もちろん、これだけ個人ワイナリーも多いことで、個性豊かなワインが揃っているという利点があることも確かだ。最近ではこういった多くのアルザス個人ワイナリーが日本にも輸出され始めている。けれど、アルザスワインという大きなカテゴリーで考えた時には他地方のワインに比べればまだまだかもしれない。
このアルザスワインパビリオン以外にもアルザスワインが多く出展されていた。
まずはこちらのアルザスワインパビリオンだが、一角で全パビリオン出展者のワインが試せるコーナーがあった。まずはここでテイステイングをして好きなワイナリーを見つけるところから始められるのが良い。
GRAND CRUSも結構な数試すことができたので、アルザスワインを知るにはこのアルザスワインパビリオンに先ずは立ち寄れば、ある程度アルザスワインを知ることができる。
ここでいろいろなワイナリーのワインを試し、自分の好みのワインが見つけ、好きなワイナリーのところでゆっくりテイスティングするのが良いだろう。
このアルザスパビリオン内に、私が個人的に好きなワイナリーMaurice Schoech も出展していた。個人的と言うのは確かに美味しいワインを生産しているのだが、私が最初にたまたま行ったワイナリーなのだ。それ以来毎年一回はお邪魔している、個人的に思い入れのあるワイナリーだ。
以前は日本にも輸入されていたのだが、インポーターさんが業務終了してしまったようで、新しいインポーターも探しているという事だった。このイベントで日本のインポーターさんが見つかっていれば良いなと思う。
だが、このパビリオンに来れば、アルザスワインが堪能できると終わってしまうといけない。他の団体で出展しているアルザスワイナリーや個人出展をしているワイナリーも多く見かけた。
例えばこちらも、私が以前住んでいた村のワイナリーで、日本にはなんと1988年から輸出しているというPaul Blanck。このワイナリーのある村に日系全寮制学校があったこともあり、この村の人たちはかなり親日家が多い。
そしてこちらWOW―Warld Organic Wine のセクション。
実はオーガニック、ビオデイナミを重要視しているアルザスワイナリーは、アルザスパビリオンではなく、こちらに出展しているワイナリーもいた。
こちらのアルザスワイン出展者の方によれば、アルザスは10ha前後の小さな家族経営のワイナリーも多く、全ワイナリーが一緒にアルザスワインプロモーションやマーケティングをしていくと言うのはなかなか難しいとのことだ。
RITTERSBERG。こちらはアルザスワイン委員会が、オーガニックワインにまだ着目していなかったころからずっとオーガニックワイン生産をしている。
BURCKEL JUNGはストラスブールから電車でも行ける小さな村にあるワイナリー。この村と隣村には珍しい品種のKLEVENER DE HEILIGENSTEINのワインも生産されている。そしてこのワイナリーはこの村では唯一の自然派ワインを生産しているワイナリーだ。
そしてこちらはアッサンブラージュなのだが、アルザスを強調して、ラベルにはアルザス民族衣装を来た男の子と女の子のシルエットになっている。
こちらは以前日本で開催されたVINEXPO TOKYOで唯一出展していたアルザスワイナリーSCHMITT&CARRER。典型的なアルザスワインは現在日本にも輸出されているのだが、他のGRAND CRUやヴァンダンジュタルデイヴなどの高級ワインはまだ日本に入っていないので、ぜひそちらのラインも日本に輸出したいとのこと。
典型的なワインからグランクリュまで、それぞれ異なるリースリングが楽しめた。
そしてまた他のホールではアルザス若手個人ワイナリー組合13のワイナリーで合同出展していた。
こちらの団体は40歳以下の(以前は35歳以下)アルザスワイン生産者の集まりで、SNSなどを使い、イベントなどを開催してアクティヴに活動している。
ここでも一角で全ワイナリーのワインがテイステイングできる箇所があった。
これでも一目瞭然だが、全アルザスワインが一緒に出展している訳ではなく、いくつかの枠で別々に出展している。やはり
大手ネゴシオンやコオペラテイブ
と
個人ワイナリー
オーガニック、ビオデイナミ
と
通常ワイン
次世代
と
全世代
そして
アルザスワイン委員会CIVA
と
アルザスワイン組合AVA
など、それぞれのワイナリーが別の考え方を持っていることが多く、どうしてもアルザスワインが一つにはなれないような印象もある。
それだからこそ、多くの面白い個人ワイナリーも見つかるし、それぞれの個性が光っているのでアルザスワインは宝探しのようだとも言えるのだが、【アルザスワイン】と言うブランディングは他の地方に比べるとなかなか難しいのかと言う印象がある。
また、各個人ワイナリーのキャラクターを尊重し、後継者問題で継続できなくなるワイナリーもあるので、やはりコオペラテイブやネゴシオンという大手のワイナリーがいてこそ成り立つこともある。そんな中で日本に輸出されるアルザスワインはほんの一部だ。
輸出にはある程度の数の確保が必要になるし、日本とのコミュニケーションも大事だ。アルザス人は働き者だし、日本人にとっても一緒に仕事のしやすい人柄だが、まだまだ日本に輸出されるアルザスワインはまだまだ少ない。
個性豊かなアルザスワインは日本でも好まれるワインだと思う。今後のアルザスワイン認知と普及にはまだまださまざまな課題があるかもしれない。それでも少しずつアルザスワインが日本に輸出され、少しでも多くの人に楽しんで頂ければと思う。
というのが今回フランスのワイン展示会に行って感じたアルザスワインの現状だった。