クレマンダルザス、マネキネコ、「お引越し」していた。
ワイン漫画、「神の雫」にも登場したアルザスワインmanekineko(マネキネコ)という名のクレマンダルザスをご存じの方もいるかもしれない。実はこのワインの元生産者がこちらのKLURさんだ。
先日お届した記事、『漫画「神の雫」にも登場したワインのあるワイナリー Domaine Léon HEITZMANN』の中でも説明したのだが、有名クレマンダルザス、マネキネコ、実はこちらのワイナリーさんからLéon HEITZMANNさんに「お引越し」したのだ。
(参考資料 http://www.nouvellesselections.com/winery/detail.php?post_id=1000554)
アルザス新参自然派ワイナリー?
こちらのワイナリーさんは、インポーターさんの依頼に合わせて作っていたワインもあったのだが、後継者問題も多少あり、「これからは自分たちの好きなワインだけを生産していこう」と10hあった畑を1.5hに縮小させ、その他の畑やブランド、今までの顧客など全てLEONさんに託したそうだ。
ワイン生産を縮小し、2017年からは自然派ワインのみの生産になった。元々ぶどう栽培農家だったのを1999年からワイン生産を始めた。ワイナリーさん曰く、アルザスで最初の自然派クレマンダルザスを生産したワイナリーなのだそうだ。自然派ワインに関しては、その頃から生産をしていたが、全てのワインが自然派だったわけではないので、2017年からブランドも全て変更し、自然派ワインに特化した。
自然派ワインはビオワインじゅない?
日本では最近ビオ、ビオデイナミ、自然派ワインが流行ってきている気がするのだが、その意味合いはまだきちんと認知されていないような気もする。
「体に優しい」順番で言うと、自然派ワイン、ビオデイナミ、ビオ、通常ワインというイメージだったが、KLURさんに「自然派ワインと言っても、ビオでないこともある」と聞いてびっくりした。
すごく簡単に言うと、ビオはぶどう栽培の時に化学肥料を使用しているかどうかが重要で、自然派はぶどう果汁に添加物を一切使用せずにワイン生産することだと認識した。ただ、ビオやビオデイナミはその規定があり、申請してビオやビオデイナミと名乗ることができるが、自然派ワインにはまだそういう規定がないというのが現状だ。
もちろん、そんな一言で説明できるようなことではないし、実際はもっと複雑なことだと思う。自分自身にとってもこれから学んでいかなければいけない課題の1つでもある。
ぶどう栽培、ワイン生産、そして最近ではマーケテイングも大切な時代に
昔、多くのお客がワイナリーに訪れ、家飲み用のワインを箱買いしていた時代があった。特にアルザス地方はドイツからのお客が多かったのだが、それは通貨がユーロになる前の話だそうだ。
今は自分の村のワイナリーで待っているだけじゃお客は来ないし、昔のお客さんはそのままにしていれば皆年も取り、ワイン消費量も変わってきている。その事実をちゃんと受け止め、次のステップに行くことが重要になってきているようだ。
KLURさんが海外、日本で成功していったのにはちゃんと理由がある
元々ぶどう栽培はしていたものの、1999年、現在のCLEMENTさんの代からワイン生産を始めたそうだ。先祖代々続く歴史あるワイナリーではないが、活動的で、2000年にはロンドンのワイン展示会に出展。だが、その時に愕然としたそうだ。その時代、展示会ではニューワールドと言われる多くの国の新しいワインが注目され、アルザスワインはおろか、フランスワインは既に「昔のワイン」と認識されて、お客様に注目してもらえなかった。
そんな状況を目の当たりにし、さらにアルザスワインが世界的に実はそこまで認知されていないことを知り、それなら村に籠っていないで、もっと外に出て行かなければいけない、海外との取引をするなら、英語もできないといけない、と海外にも目を向けた。2002年に海外とのコンタクトを取り始め、2006年には海外展開、アメリカ、スェ―デン、デンマーク、遠くオーストラリアなどにも販売展開をしていたそうだ。
ここにもワイナリーさんのマーケテイングに対する意識が見られるのだが、昔に比べ、ワイン消費量が減少してはいるものの、家飲みワインではなく、さまざまなイベントなど機会に合わせてワインも飲まれるようになってきている。今は量よりも質の時代になってきているのかもしれない。という事だ。
日本での販売量も
もちろん、日本でもMANEKINEKOだけではなく、ワイナリーのある村Katzenthal(カッツェンタル=猫峡谷)という村のアピールとして、ラベルに猫を採用した黒猫(優しいにゃんこ)、白猫(不良のにゃんこ)というワインを知っている方もいらっしゃるかもしれない。
KLURさんがワイン生産を縮小する前は10hの畑から8万本のワインを生産しており、また、他の栽培者からもぶどうを購入していたそうだ。そしてKULRさんのクレマンダルザスは日本に2万本販売されている(いた)そうだ。もちろん、現在は全てLéon HEITZMANNさんに引き継がれている。(ワイナリーの名前もそれに合わせてLéon HEITZMANN-Klurになっている。)
つまりワイン生産の4分の一は日本へのクレマンダルザスだったということだ。現在は8000本の生産数で5種の自然派ワインを生産している。なんとも貴重なワインとも言える。
Klurさんのワインはとってもアートなワイン
Klurさんの現在の自然派ワインの特徴は、なんともアート的だということ。ワイナリーに訪れた時にも感じたのだが、とってもアート的な空間で素敵な外装、そして、その中に今ドキのコーワーキングスペースなどもあり、また、年に2カ月だけオープンされる「儚いレストラン」も開催されている。
今あるワインのラベルは、キャンバスに絵の具を垂らし、吹いてできた模様を切り取って作ったものだと言う。ワインの名前もとってもおしゃれで、フランス語で字遊びを楽しんでいる。とっても可愛らしい、お洒落なワインだ。
実は今ジュエリーの勉強をしているというお嬢さんもワイン生産に今後関わっていき、ワイナリーを継ぐことが決まり、彼女が生産に関わったワインも今まさにボトルに入り始め、こちらも1つ1つスタンプを押して、希望があれば、記念用の特別ラベルも作ってくれるそうだ。
さて、そのワインのお味は…
自然派ワインはたまに舌に突き刺さるような辛口と言うか、苦味がある時があるのだが、ここのワイナリーのワインは全てそういう嫌な苦みが全くなく、自然派ワインにしたらとても飲みやすいワインだ。
また、自然派ワインはそのまま置いておいても、もちろん栓を開けても味がどんどん変化すると言われているが、ワイナリーさん曰く「実はそんなことない」とのこと。自然派ワインとはぶどう果汁そのものの働きにまかせ製法していくワインだが、だからこそ、ちゃんと観察し、見守っていかなければいけない、実は生産には経験も注意も必要で労力がかかるワインなのだ。
15年もの長い月日、自然派ワインを生産しているだけあって、それなりに経験があってこそできたワインで、その優しく飲みやすい味はKLURさんの人柄が表れているんだと思う。
まだ日本未販売のお勧めワイン
こちらのワインはまだ日本に入っていないのだが、できれば自然派に特化しているようなインポーターさんが良いとのことで、また、今までのように大量販売というよりは、生産数にも限りがあるので、少しずつ新しく海外も含め販売展開をしていくのだろうと思う。
ワイナリー見学は、現在は必ず事前予約が必要で、有料となっている。それでも、他の地方に比べればお安いテイステイング料金だと思う。
とても素敵な時間を過ごさせてもらった。