今回は日本にはあまり入っていないが、コンセプト的にはあの有名なマルセル・ダイスにも似ているんじゃないか? という、アルザスでも珍しい、テロワールを重んじるワイナリー、Domaine MANNのプレス用オープンデイに行ってきたのでその様子をご紹介しようと思う。
実はこちらのワイナリーさんには個人ワイナリーの展示会でお会いしたことがあったのだが、その際に日本人の方がいらしていて、こちらのワインを大量に箱買いしていた。びっくりして見ていたら、その方が「ここのワインは美味しいよ。」と言っていらしたので、印象が強いワイナリーでいつか訪れてみたいと思っていた。
Domaine MANNから«Le Vignoble des 3 Terres»へ
実は今回のオープンデーは、ワイナリーの名称変更に合わせて開催されたイベントだったようで、かなり大きなイベントだった。実はMANNという名前のワイナリーは他にもあり、他のワイナリーと名前が混合してしまうかもしれないことや、今までは、ワイナリーのおじい様Fabienneとお父様Jean-Louisと名前のついたJean-Louis Fabienne MANN という名称だったのだが、息子さんのSébastienの代に引継ぎ、今後は«Le Vignoble des 3 Terres»というワイナリーの名称に変更した。
今回はその名称変更のお披露目会と言うのも兼ねて、大きなイベントを開催したようだった。この、«Le Vignoble des 3 Terres»という3つのTERRES(土壌)という意味を持つ名称からも、土壌の大切さをうたっていることがうかがえる。
アルザスワイナリー、Domaine MANN
こちらのワイナリーは2004年からビオワイン生産を始め、2009年からビオデイナミへ、そして2015年にはBiodyvinの資格を取得。2019年で個人ワイナリーとして20年目のヴィンテージワイン生産のワイナリーだ。
13ヘクタールの畑では35種のワインを生産中。現在はこの村、Eguisheim(エグイスハイム村) の2種のグランクリュ:le Pfersigbergとl’Eichberg,を所有している。
ワイナリーオープンデイ
今回のオープンデイはかなり大がかりなイベントが開催され、プロ対象、顧客対象と3日に渡りイベントが開催された。
その中で私は最初に開催されたプレス用のイベントに参加してきたのだが、内容がかなり濃く、朝の9時~夜21時までのかなり濃いイベントだった。とても有意義な1日を過ごしてきたので、先ずはその内容をご紹介したい。
●プレス発表会
●ワインと食のマリアージュ
●ヴィンテージ違いのグランクリュ リースリング飲み比べ
●2018年ものヴィンテージワインテイステイング
●ミニトレインでワイン畑へ
●タルトフランべの夕べ
ワインと食のマリアージュ
やはり一番興味深かったのはワインと食のマリアージュだった。各テロワールごとにテーブルが分かれており、各ワインに合うおつまみが9種提供されていた。
外のイベントなのに、かなり洗礼されたおつまみが用意されており、100人分提供されていたそうだ。
最近は日本食がブームらしく、MAKIという名のおつまみもあったが、やはりこれも日本食というよりはフランス風の巻き寿司に似たおつまみという感じだった。これはこれでもちろん美味しかった。
一番美味しかったのはフォアグラ。フォアグラだからというのではなく、半焼きな感じで、暖かいのだが、これが脂っこくなく、良い感じの火の通り方で、やはり美味しい食材はこうしてシンプルなのだけれど、その調理技術が必要なものの方が素材の美味しさが引き立つ。このフォアグラに普通はゲヴェルツラミネールを合わせるというのが定番なのだが、ここではピノ・ノワールを合わせていた。確かに、ピノ・ノワールはカモ肉などに合わせるので、それを考えればこのフォアグラにはピノ・ノワールは合っていた。
ワインがあっても何に合わせればいいか分からない時も多いので、こういうイベントだとこの先の食事も楽しくなると思う。
2018年ものヴィンテージワインテイステイングと、その他ヴィンテージテイステイング
そして、まだラベルも張られていない2018年のワインのテイステイングも。こちらは瓶が置かれていただけなので、説明などがなく、好きなだけ飲めるのは嬉しいテイステイングだったのだが、やはりワイナリーのテイステイングの面白さはワイナリーの方からの説明なので、それが無かったのがちょっと残念だった。
けれど、もう一つビンテージものテイステイングのほうではワイナリーの方が色々説明してくださって、やはりこういう方が勉強になるなと実感した。
特に、ワインはワインの美味しさだけではなく、その奥にある造り手の方の想いなどが分かる方が、その味も一層美味しく感じる。それを感じたのがその後のテイステイングの時だった。
ヴィンテージ違いのグランクリュ リースリング飲み比べ
また、一斉に開催されたヴインテージ違いのグランクリュリースリング飲み比べは、同じ品種なのに年代が違うだけでこんなにも味わいが変わるのかと、本当にいい経験をさせていただいた。
月日が経っていれば美味しいと言うわけでもなく、良いヴィンテージだから美味しいとも一概に言えない。というのは、その年の収穫が良くなくても、それをどうワイン生産するかはワイナリーの腕次第なのだ。
そのせいか、あまり良くない年と言われたヴィンテージのワインが、いやいや、確かに酸味が多少強めなのかもしれないが、その前の良い年よりももしかしたら好みによってはこっちの方がおいしいと言う人もいるだろうという気がする。
要は造り手さん次第なんだと言える。
ミニトレインでワイン畑へ
そして、観光用のミニトレインに乗って、ワイナリー所有のぶどう畑にも連れて行ってもらえた。こうすると、ビオやビオデイナミ、そうでない畑の違いなども見比べることができ、そして、サプライズとして、ぶどう畑に囲まれながらクレマンダルザスを振舞ってもらった。なんとも贅沢な時間だった。
タルトフランべの夕べ
そして最後にはタルトフランベが振舞われた。こちらも通常のタルトフラべよりもいろいろ具が違っていて、もちろん、ワインも振舞われた。
機会があればワイナリーのオープンデーへ
今回私が参加したイベントはプロ、プレス用だったのだが、お客様用のイベントもワイナリーでよく開催されているし、アルザスワイン街道の村でもワイン祭りや収穫祭などが盛んに開催されている。
地元にいないと、なかなかこういう機会を探すのは難しいのかもしれないが、こんなイベントがある時はワイナリーにも行きやすいし、通常では飲めないワインがいろいろ飲めるのでお勧めだ。
私は通常ワイナリーガイドなどはしていないのだが、アルザス限定でお問い合わせがあった時にはワイナリーガイドや、その中で行けるイベントがあれば、それも織り交ぜたワイナリーツアーのお問い合わせにも対応し始めている。(ただし、こういうイベントはギリギリにならないと分からないことも多い)。
今回のイベントでは合計40種ほどのワインを飲ませて頂いた。ここまで試飲できる機会はめったにない、確かにかなり特別なイベントだった。また、こちらのワインは本当に繊細で土壌を大切にした、洗礼されたワインという印象を持った。なぜ日本に多く入っていないのだろうという感じの日本の方好みのワインだった。