ワインに関しては去年までまったくの門外漢でしたが、今年になって突然ワインの勉強に目覚め、現在、8月のワインエキスパート試験に向け悪戦苦闘しています。
メドックの格付け61シャトー名までは替え歌でなんとか覚えましたが、イタリアは地獄ですね。何度やってもモンタルチーノとモンテプルチアーノ、コルヴィーナとコルテーゼ、ヴァルテリーナとヴァルドリーノ、その他いろいろの「リーナ」とか「リーノ」が覚えられません。成人以来長年にわたる飲酒のせいでしょうか、脳みそが完全にヤラレてしまっているのを日々実感しています。
ソムリエの最高峰を目指す「受験ドキュメンタリー」
さて、こんな私がワインの知識を身につけたいと思うようになったのは、昨年Netflix(ネットフリックス)で見た1本の映画がきっかけでした。
その映画とは、「SOMM(ソム)」
「ソム」とは「ソムリエ」の略称。ソムリエの最高峰の資格である「マスターオブソムリエ」を目指す4人の若者の奮闘を描いたドキュメンタリーです。
ワインの最高資格というと、あの大橋健一さんが合格の栄冠を手にした「マスターオブワイン(MW)」を思い浮かべる方も多いと思いますが、それとは違うやつです。
MWはワインの学者系の資格。いっぽう「マスターオブソムリエ(MS)」はサービス業であるソムリエの最高資格。なので試験科目は「理論」「テイスティング」のほか「接客(サービス)実技」が入ります。
その難関ぶりはというと、この40年で世界でわずか186名しか合格者がいないそうです。日本人はまだいません。
ちなみに、田崎真也氏はじめ日本の著名ソムリエが有する「マスターソムリエ」は日本ソムリエ協会の名誉称号。日本ソムリエ協会のHPによると、「シニアソムリエの資格を有しソムリエ歴20年以上、協会の役員として功績が顕著な方が推薦を受けて認定される資格」ということで、ここで言うMSとは別のものです。
このあたりのややこしいワイン資格の区別については、在米ワインコンサルタントの齋藤ゆき氏のブログが詳しいのでご興味ある方はぜひチェックしてみてください。
「ワインの資格—-業界の頂点とは?」(Wisteria Wine)
合否によって人生の明暗が分かれていく
映画では、MSを取ったソムリエたちが多数登場し、「いかにすごい試験であるか」「いかに犠牲を払って合格を手にしたか」というリアルなエピソードをはさみながら、受験日3週間前から当日までの4人の若者たちの行動と心理を追っていきます。生活のすべてを賭け、家族にも我慢を強いて、お互いに助け合いながら受験にのぞむ若者たち。
そして合否が決まります。結果発表は張り出しではなく、試験官が1人ずつ部屋に呼んで1対1で合否を告げるのです。うわあ〜!!ですね。なんとそこにもカメラが入り、身体が震えるような合格者の喜びと、茫然自失とする不合格者の失望がリアルに伝わります。これは絶対受かるよね、という人達が落ちてしまったのはまさにドラマ。面白いドキュメンタリーがたくさんあるNetflixの中でも、「SOMM」は私的にナンバーワンでした。
自他ともに認める飲んべえでワイン愛好家でもある私ですが、これまでアルコール飲料のひとつとしてしかワインに接してきませんでした。ワインがこんなにも深い世界であり、こんなにも多くの人を夢中にさせているとは。そして、トップレベルのワインの専門家という人達がどれだけすごいか、ということもよくわかりました。
4人の受験生はそれぞれ違うバックグラウンドを持っていて、必ずしも飲食業界一筋というわけではありません。でも共通して言えるのは、あるとき「ワインにハマった」ということ。
「ある産地のことを調べると、ブドウのことだけでなくそこの人々や歴史、文化や食べ物も学ぶ。まるで世界を旅しているようだ」
出演者の1人のこの言葉は最初スルーしていましたが(この映画、5回は見てます)、自分自身がワインを勉強するようになって腹落ちした言葉です。
なるほどワインを学ぶこととは、単にお酒の一種としてのことではなく、ワインを通じてより深く世界各地のことを理解できるということか。ということは、ワインに詳しくなれば旅行ももっと楽しくなるはず。毎日の食事シーンも変わってきそう。一緒に食事をする家族や友人にもメリットがあるはず。
ワインの勉強は、はるか昔に大学で学んだ「一般教養」とはまた違う、人生を何倍にも楽しくしてくれる実践的な知識であり、本当の意味での教養なのかもしれません。
そう理解した私は、あの4人の受験生たちのようにはもちろんいかないけど、専門家の入り口であるワインエキスパート試験を受けてみようと思ったのでした。試験まであと2ヶ月ちょっと。なんとか一発合格を目指してがんばろうと思います。
Instagramで出演者を発見
「SOMM」が制作されたのは2013年。その後、あの出演者たちはどうなったのでしょうか。大いに気になります。
ドキュメンタリーの面白いところは、その人物が実在していること。調べれば「後日談」を追いかけることができます。こういうときに人を探すのに便利なのがSNS。仕事柄、興味深い人がいるとついそ人のTwitterとかInstagramがないかどうか調べてしまう癖がありまして。
調べていくと、海外のワイン業界はInstagramが主戦場だということがわかりました。ワイナリー、インポーター、ワインジャーナリスト、ワインメディア、ワインショップ、ワインバー、ワインブロガーetc・・・世界中のあらゆるワイン業界人がインスタをやっています。交流も盛んで、グローバルかつ巨大なワインコミュニティがインスタの中に存在しているのです。探したら案の定、いました。4人の出演者のうち3人をインスタで発見。さっそくフォローしました。
特に映画で主役級の扱いだったイアン・コーブル(Ian Cauble)氏のことが気になっていましたが、インスタを見ると、イアンの受験を献身的に支えていた東洋系の彼女とその後結婚し、かわいいお子さんも生まれていました。MS取得後、Sommselect.comという会員制ワイン販売サービスを始めたイアンは、家族と一緒に世界中のワイナリーを訪問してワインを発掘、その様子をインスタでアップし、ビジネスのPRにつなげています。
そして、「SOMM」のインスタもありました。実はこの映画は3部作になっていて、2作目もNetflixに上がっています。2作目は1作目の出演者を中心に「ワインの世界」そのものを、さまざまな角度から掘り下げていくもので、これもまた面白い。3作目は現在制作中で、この秋リリースになるとか。今から楽しみです。
「SOMM」の映画は2本ともNetflixで見ることができます。1ヶ月のお試しを利用すれば無料で見られますので関心のある方はぜひ。
ただし、私のようにずぶずぶと「ワイン沼」にハマり、試験を受けたくなってしまうかもしれませんので十分ご注意を。
映画「SOMM」予告編