フラッグシップは「ジャーニー」
乾燥中のラベンダー。ここではさまざまなラベンダー製品が作られている。
あいにく取材時にその美しい景観を眺めることは叶わなかったが、6月のワイナリーの庭園にはラベンダーが咲き誇っているだろう。
マタンザス・クリークにラベンダーが植えられたのは90年代初めのことだった。当時のオーナーがガーデニングの愛好家で美しい庭園を設えたが、森に住む鹿が下りてきて、草花を食い荒らしてしまったという。
そこで鹿が嫌いなラベンダーを植えたところ効果てき面。鹿は寄りつかなくなり、一方、益虫が集うようになった。現在、マタンザス・クリークが所有するすべてのブドウ畑でSIP=Sustainable in Practiceの認証を得ている。
マタンザス・クリークが位置するベネット・ヴァレーは、2003年にAVAとして認められた。
このAVAの成立を積極的に働きかけたのがマタンザス・クリークだ。ソノマ・ヴァレーAVAに内包され、西はソノマ・コーストAVA、南東はソノマ・マウンテンAVAと接している。
太平洋から入り込む冷たい霧の影響を緩やかに受ける場所。
そこで暑すぎても涼しすぎてもうまく育たないメルローの栽培で成功を収めた。緻密なタンニンとバランスのとれた酸味をもつ、スタイリッシュなメルローだ。
一方、5年前からワインメーカーを務める女性醸造家のマルシア・トーレス・フォルノさんが、今、もっとも力を入れているブドウ品種は白のソーヴィニヨン・ブラン。
最良のロットをブレンドしたマタンザス・クリークのフラッグシップ「ジャーニー」は、シャルドネが90年、メルローが92年を初ヴィンテージとして生まれたが、ソーヴィニヨン・ブランからは造られることがなかった。
そこで着任早々、彼女がチャレンジしたのがソーヴィニヨン・ブランの「ジャーニー」。12年が初ヴィンテージだ。レモングラスやパッションフルーツの香り。フレッシュさとリッチさが渾然一体となった、個性豊かなソーヴィニヨン・ブランに仕上がっている。