人生を楽しむためのワイン図鑑
現在、日本ではスペインバルの大フィーバーなどの影響で、輸入ワイン量の中で、フランス、チリ、イタリアに次いで第4位に躍進を遂げ、その勢いは留まることを知りません。
そんな中、日本において、なかなかスペインワインについて詳細にしかも興味深く書かれた本が無く、待ちに待った想いです。
(中略)
本書の特徴としては17州の詳細な地図と共に原産地呼称、生産ぶどう品種などの特徴が記され、全自治州のワイン産地がビジュアル面でも大変興味深く描写されているところです。地図が描写されたワイン書はワインを学ぶ人にとっては最高の案内書であり、楽しみともなり、ワインに対する造詣がますます深まると思います。
何か疑問点を調べる場合、ワイン愛好家にとってもワインを扱っている専門職の方々にとっても大変有効な教本になると確信しています。また、現在スペイン料理店、ワインバーなどで働いているスタッフの方々にもきっと必須の一冊になることと思います。(後略)
という剣持春夫の序文が本書を物語っている。剣持春夫は日本を代表するソムリエのひとりである。この道45年、日本ソムリエ協会の名誉顧問にして「マスターソムリエ」、ワイン・スクールの講師もつとめている。座右の銘は「生涯現役」。その方が序文の最後にこう書いている。
スペインワインはますます発展を遂げ、日本においてもただのブームから定着へと確実に進化を遂げるはずです。人生を楽しむためのワイン図鑑として、是非とも皆様のお手元に一冊おいていただければこれほど嬉しいことはございません。
本書はスペインのスサエタ社の翻訳版である。スサエタ社は子供向けの書籍のほか、料理とワインの本もつくっている。スペイン人以上にスペインのことをたれぞ知る。
気ままにページをくってみると、こんな文章にあたった。
伝統的にラ・マンチャのブドウ栽培の大半は、ブドウの蒸留酒の製造を目的としており、スペインのほかの地方、特にヘレス、あるいは外国(フランス)向けに輸出され、ブランデー、コニャック、アルマニャック(コニャックとアルマニャックは、フレンチブランデーの二大銘酒)の加工に使われていた。
残りのブドウは、並の品質のワイン造りに使われていた。様々な品種を一緒くたに圧搾し、目立った個性のない果汁を得て、屋外のタンクで発酵させる。醸造所の設備は時代遅れもはなはだしかった。
この状況は、品質を問わず収穫したブドウすべてを簡単にさばくには打ってつけであった。しかし1960〜70年代以降、ラ・マンチャ地方の特色を生かして上質のワインを造ろうとする新たなブドウ栽培農家がこの地に定住したのにともない、状況が変わりはじめた。それにより、伝統的な品種の栽培から醸造方法に至るまで、ワイン産業全体の大革命が求められたのである。
『ラ・マンチャの男』——セルバンテスの小説『ドン・キホーテ』をもとにしたミュージカルの作品名で知られる地名に魅かれて読み進むと、この地には300ものワインの醸造所が認定されている。それゆえ「概観するのは至難の業」とある。なるほど。さすがラ・マンチャである。よく知らないけど。
図鑑ならではの簡潔な一文と添えられた写真、写真のキャプションが、ワイン好きの想像力の翼を広げ、ページをくりながらワクワクしちゃうであろう。テーブルにスペインのワインがあればなおさら。酔うほどに、文字は追えなくなるにしても……。買って寝かせて置くもまた楽しからずや。