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俳優・渡辺 大は映画『ウスケボーイズ』の主演でワインの扉が開いた。

日本ワインのつくり手たちの生きざまが面白い!

日本ワインの革命児たちを描いた映画『ウスケボーイズ』。自分たちの偏見を打ち砕かれた若者たちがワイン造りに没頭することで様々な困難に向き合い、希望を拓いていく物語だ。実在する人物、ワインを描いたことでも話題になったが、渡辺 大さんはこの映画で主役の「岡村」役を熱演。この映画を通して、渡辺さん自身のワインの扉も開き、また役者としても開いた扉があった。

取材・文:岩瀬大二 写真:山下亮一 

撮影協力:Organic Restaurant Seta
東京都世田谷区池尻2丁目37-16 レイクパレス2階
tel.03-5787-6711 organic-seta.com

渡辺大と日本ワインの関係から聞いてみよう

まずはこの映画に取り組む前の渡辺さんと日本ワインの関係から聞いてみよう。

「友達とワインはよく飲んでいました。ただ、そんなに銘柄や産地にこだわるわけではなく、ましてや国産ワインについてはほとんど意識していなかったですね。端的に言えば、存在を軽視していました」

それが今回のオファーから、関係が変わった。

「台本を読ませていただいて、まず日本全国にワイナリーが増えていて、そこで世界と同じレベルでがんばっていらっしゃる方がいることを知りました。生きざまというのでしょうか。それが面白いと思いました。そして、日本のワインを意識して飲ませていただいて、その生きざまに実がともなっているんだなと感じました。イメージだけではわからない、実感がありましたね」

その日本ワインを意識して飲んだという場。それはまさに映画の冒頭で描かれる主人公たちの「ワイン会」へと続いていく。

「ボーペイサージュ、小布施城戸、ルバイヤート……。監督さんと、これから共演するメンバーと一緒にワインを並べて語り合いながら味わいました。あぁ、こうやって味わうと、ワインのことがよくわかってくるんだなという発見。日本ワインはもちろん、ワインへの扉がどんどん開いていきました」

冒頭のシーンの主人公たちの鋭いコメントや手つき、目つき、顔つき。それがリアルの場でも繰り広げられていたのは興味深い。

「ただ、僕の場合は定型的なコメントよりも、以前に食べた記憶や飲んだ記憶を探しながら、という感じですね。何かワインて正解探しみたいな感じもしますし、はずすと恥ずかしいみたいなのってありますよね。でも、まあ、恥ずかしくてもいいやって(笑)。ある日本ワインを味わった時に、漬物の香りがしたんです。酵母や土の影響かと思うのですが、とてもいい意味で日本のよさを感じました」

岡本英史さんとウスケ先生、僕と橋爪 功さん

撮影はオール山梨ロケ。実際に土の匂い、感触、風、太陽、そして雨も感じた。酵母や樽の香りとも現場で触れ合った。それが渡辺さんのワインとの関係をより深くしたようだ。

実際にボーペイサージュの畑を使わせていただきました。カメラが外れたところでは、岡本英史さん(ボーペイサージュのオーナー・ワインメーカー。渡辺さんが演じた岡村のモデル)が作業されているんですよ。いろいろなお話を聞きました。とても穏やかな方。今となっては穏やか、が正しいのかな(笑)。やんちゃだった話も随分聞きました。映画と同様、日本のワインなんて、と尖ってた時のこととか」

ワインはフランスじゃなきゃダメだと持論をかざし、その後、絶望と戦い、しかし絶望が上回り、畑を当てもなくふらつく、危険なほどに尖りまくった主人公。それを演じる渡辺さんの尖りっぷりもまた凄みがあった。

「絶望の淵で、一人っきりでハサミ持ってぼーっとフラフラ歩いて。そりゃあヤバイやつだって思われますよね(笑)。まぁ、役者もどこかで尖ってないとダメってところもありますし。あの時の岡本さんと似ているのかな……」

橋爪 功さん演じる「ウスケ先生」 に「教科書を破り捨てなさい」と言われた瞬間の表情もまた、主人公の意地と尊敬が入り混じった胸に迫るものだった。

渡辺 大わたなべ・だい
1984年生まれ。東京都出身。俳優。父親は渡辺 謙、妹は杏。自身もテレビや映画で活躍。10月20日より全国ロードショーされている映画『ウスケボーイズ』(監督:柿崎ゆうじ)に主演。映画の評価は高く、マドリード国際映画祭、アムステルダム映画祭で主演男優賞を受賞している。
ヘアメイク:大塚貴之[Rouxda’] スタイリスト:山本隆司

「役者も同じだと思うのですが、偉大な先輩と向かい合う時の永遠のテーマ。ずーっと先輩の後ろを追って辛抱しているわけじゃなくて、いつかは抜かしたい。でも実力が伴わなきゃいきがっているだけ。岡本さんとウスケ先生、僕と橋爪さんも似ているんだと思います。同じ舞台に立つものとしてはやはり認められたい。『桔梗ヶ原メルロー』は素晴らしい。でも、同じものを追いかけるのではなく、自分が納得するワインを造りたい。そうやってもがくことがおもしろい。そんな思いを感じていただけたらうれしいですね」

先生との関係だけではなく、教え子同士の関係も描かれる。

「若手の役者同士、仲がいいんですよ。旅行もするし。でも、どこかで競争しているんですよね。小布施(ワイナリー)さんも城戸(KIDOワイナリー)さんもどこかで競争の気持ちがあって、だからこそ切磋琢磨できる。お互いめちゃくちゃいいものを造ってやろうっていう気持ちがモチベーションになっていると思う」

さて、この映画を通じてさらにワインの扉が開いたという渡辺さん。映画を見ていただいた方にどんな扉を開いてもらいたいのか。

「映画を見て、そこで終わりじゃなくて、昼でも夜でも、ちょっとワインを飲みに行ってほしい。ワインリストを気にしながら。そうすると新しい扉が開くんじゃないかと思います。そしてぜひ、お気に入りのワインを1本でも買って帰る。そんな楽しみ方がカルチャーとして根付いたらうれしいですね」

ボーイズたちの切磋琢磨、多くの生産者たちの熱気を感じながら、現地を歩くことで開く扉。その先には……きっと素敵な出会いがあることだろう。

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