2014年に惜しまれつつ亡くなった徳大寺さん。その運転歴は50年以上。元レーサーであり、自動車評論家として数え切れないほどたくさんのクルマに乗ってきた。その徳大寺さんの運転メソッドがわかりやすく解説されている。いわゆる「ドラテク」本ではない。あくまでも、ふつうの道路をいかに安全に快適に運転するかにこだわる。「そうだったのか!」と目からウロコが落ちる実践的アドバイスが満載。
一例を挙げるなら、「周囲にアピールする運転」。たとえば、右折信号のない交差点で右折する場合。一刻も早く交差点を脱出したいと思うあまり、あわててアクセルを踏みがちだ。しかし、これが事故のもと。横断歩道を渡る自転車と衝突したり、あるいはアクセルを急に強く踏んだものの途中で不安になって急ブレーキ、後続車に追突されたりといった目に遭うことが多いのだ。では、どうしたらいいのだろうか。
徳大寺さんは、こういうときこそ、あえてゆっくり、まわりに自分の行為をアピールしつつ曲がるべきだと言う。ゆっくり曲がれば、自転車も後続車も、横から来るクルマも、事態にどう反応すべきか判断する余裕ができる。イラついた他車にクラクションを鳴らされたとしても、相手はこちらのすることを見ているのだから、ぶつかってくることはない。へんに遠慮してあわてるのが間違いで、ゆっくりアピールして曲がるのが右折の「正解」なのだ。
徳大寺さんはこのほかにも、いくつもの運転の「原則」を挙げ、それらの原則をもとに、具体的な運転の場面でどう対処したらいいかを、わかりやすく解説している。
その表現のうまさは徳大寺さんならでは。また、すべての項目が2ページで完結していて、とても読みやすくなっている。初心者からベテランまで、すべてのドライバーにオススメできる一冊だ。
『徳大寺有恒のクルマ運転術 アップデート版』
著者:徳大寺有恒 出版社:草思社
価格:1400円+税