安らぎはマニュアル通りにはいかない
まさに小さな旅館なんです、レゼルヴ・グループのホテルって。ホテルによっては部屋数が40ほど、仲居さんの代わりにバトラーが付いてきます(笑)。
世界中を飛び回るようなお客様がよくいらっしゃいますが、彼らがホテルに求めるものは結局、安らぎですね。だから、サービスはマニュアル通りとはいきません。
お客様を部屋に案内し「こちらはミニバー、こちらはテレビ……」とスタッフが説明するマニュアルがあるとしましょう。でも、12時間の飛行機移動の末やっと宿に到着したお客様は、最初にそんな説明を聞くより、まずはゆっくり休みたい。
なら、説明は後回しでいいんです。また、お部屋に「マネージャーからの歓迎の印」とシャンパーニュを置いたとして、置きっぱなしはいけませんよね?
お客様は本当に部屋で飲みたいのでしょうか。レストランで飲みたいご希望があるかもと様子を伺いつつ、そうであればボトルをレストランへそっと運んでおく。お忙しいお客様のプライベートを尊重しつつ、みなさまが欲するものをいち早く見抜く洞察力がホテルには必要です。
また、たとえばレゼルヴ・ホテル・パリでは、お客様がチェックインにいらした際、座っていたフロントスタッフは立ち上がってお迎えします。館内レストランの場所を訊ねられたら、口頭でお答えするだけでなく、店頭までお連れします。そういった細やかなサービスの積み重ねで、ほかより常に一歩上を進んできました。
私どものホテル・グループのオーナー、ミシェル・レィビエはボルドーの2級シャトー、コス・デストゥルネルを所有しています。そして、じつは私自身もピュイスガン・サン・テミリオンに小さなシャトーを持っているんです。ワインとホテル・ビジネスは似ていますねぇ。
どちらも1~2年ですぐいいものはできません。
どうやれば来年もっと質が上がるのか、と情熱を持ち続けて5年、10年と経つうち、ようやくパーフェクトなレベルになるものです。ええ、私、完璧主義者なんですよ。