ドザージュとそれによって変化する呼称について
ドザージュは、リキュールを添加することで糖分量を調整し、意図する味わいに仕上げる工程。ここで用いられるのは「門出のリキュール」と呼ばれ、ワインに蔗糖などを加えたものである。使用量ドゥーからエクストラ・ブリュットなど、仕上げのスタイルによって異なる。1リットルあたり糖分3グラム以下もしくはまったく加糖をしていないワインには「ブリュット・ナチュール」や「ドザージュ・ゼロ」などの表示をすることができる。
Doux(ドゥー) 50g/L以上
Demi Sec(ドゥミ・セック) 32~50g/L
Sec(セック) 17~32g/L
Extra Dry(エクストラ・ドライ) 12~17g/L
Brut (ブリュット) 12g/L以下
Extra Brut (エクストラ・ブリュット) 0~6g/L
※3g/L未満、または全く糖分を加えていないシャンパーニュにはBrut Nature(ブリュット・ナチュール)、Pas Dode(パ・ドゼ)、Dosage Zero(ドサージュ・ゼロ)などの表示が認められている。
まずはドザージュ ゼロのシャンパーニュから試す
柳 さて、今回は超辛口シャンパーニュを集めてみました。
紫貴 ドザージュが1リットルあたり6グラム以下のエクストラ・ブリュットや3グラム未満のブリュット・ナチュールですね?
柳 はい。最近はどのメゾンも低ドザージュ傾向で、ブリュットですら10グラム未満が当たり前。あえてもう一段階辛口のエクストラ・ブリュットをラインナップに加えたり、ドザージュゼロに踏み込むメゾンが増えています。
紫貴 なぜですか?
柳 試飲からその理由を探るとともに、市場性についても考えてみましょう。しかし、これほどドザージュゼロが多いとは思わなかった。
紫貴 ほんとですね。24本中15本がゼロですか。
柳 しかもシャルドネ100パーセントのブラン・ド・ブランまでゼロとは。10年前までならあり得ませんよね。ともかくそのドザージュゼロから見ていきましょう。
ラリエ
R.012N ブリュット・ナチュール NV
アイ村の小さなメゾン。R.012 は2012年の原酒がベースであることを表す。アイ村のロリドンという区画に自生する酵母で一次発酵。試飲したボトルは2019 年にデゴルジュマン。「口が乾くような辛口。酸は強いが、エキス分が多いせいかキリキリとはしない」(紫貴)。「キレが鋭く、シャープなイメージのスーパードライ」(柳)。
品種 ピノ・ノワール62%、シャルドネ38%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 6,840円
輸入元:ベリー・ブラザーズ&ラッド
紫貴 うわっ、酸っぱい! 「ラリエ」も「フィリポナ」も酸が強い! とくにフィリポナが強く感じられますね。
柳 あくまで比較論ですけど、「アルフレッド・グラシアン」はその前のふたつと比べたらと、酸が穏やかに感じられませんか?
アルフレッド グラシアン
ブリュット ナチュール NV
小樽発酵の原酒にこだわるエペルネのメゾン。マロラクティック発酵はなし。リザーヴワインは平均40%。「固くて太い酸。アフターには苦味に似たミネラルが感じられる。力強い」(紫貴)。「香りはゴールデンデリシャス。溌剌とした酸味だが、樽発酵の影響か、指を切り裂くようなシャープさはなく、幾分丸みが感じられる」(柳)。
品種 シャルドネ50%、ムニエ25%、ピノ・ノワール25%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 7,700円
輸入元 nakato
紫貴 果実味が勝るのか、やや大柄、英語で言うとボールドな印象です。
柳 樽発酵の影響かと思いましたがフィリポナもリザーヴワインは樽なんですよね。フィリポナは敢えて究極のフレッシュさを狙ったのか? 秋冬よりも春夏に飲みたくなる酸です。
リザーブワイン ブドウ果実の成熟度、酸度、糖度は作柄により毎年異なる。そこで、シャンパーニュ業界では、各生産者に優れた品質のブドウが収穫された年のストック、リザーブワインの保存を義務付けている。不作の年にもクオリティを維持できるよう補填に使用される。複雑なアッサンブラージュの行程を経るだけに、どれだけストックを持っているかは、メゾンの力の証明。古いものなら僅かに加えるだけで味わいの複雑味が一挙に増すという。
紫貴 「ピエール・ジェルベ」はピノ・ノワール100パーセントのブラン・ド・ノワール。次の「ボーモン・デ・クレイエール」はムニエ100パーセントのブラン・ド・ノワールです。
ブラン・ド・ブラン & ブラン・ド・ノワール ブラン・ド・ブランは「白の白」を意味するフランス語。シャンパーニュの用語では、白ブドウ、シャルドネのみで造られたアイテムのことを言う。いっぽう、「黒の白」を意味するブラン・ド・ノワールは、黒ブドウ品種のみ、ピノ・ノワールかムニエ、またその両方で造られるシャンパーニュ。ほのかに黒ブドウのタンニンを感じる奥行きのある味わいと骨格を持ち、幅広い料理と合わせられることで根強い人気を誇っている。
柳 ピエール・ジェルベは南ならではの熟度で、口当たりがマイルド。ボーモン・デ・クレイエールのムニエも熟成の進みが早いので、ドザージュゼロでもまろやかに感じられます。
シャンパーニュ・ボーモン・デ・クレイエール(CM)
ボーモン・デ・クレイエール フルール・ド・ムニエ ブリュット・ナチュール 2012
珍しいムニエ100%のブラン・ド・ノワール。しかもドザージュゼロ。試飲したボトルのデゴルジュマンは2019年11月22日。「黄桃や熟れたリンゴなど甘いフルーツの香り。ブリオッシュも。酸は穏やか。発展した感じが徐々に出始めている」(紫貴)。「蜜リンゴのよう。ドザージュゼロでもきれいなバランス。フルーティ」(柳)。
品種 ムニエ100%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 8,300円
輸入元 モトックス
CM(コーペラティヴ・ド・マニピュラシオン)=協同組合員から仕入れたブドウを使い、自ら所有する醸造所で生産を行う造り手
紫貴 言われないとゼロとは思えませんね。ラリエやフィリポナが私にとってドザージュ・ゼロの典型的スタイルですが、こういうタイプもあるのかと。
柳 「ビルカール・サルモン」はリザーヴワインが49パーセントの4年熟成。「ポル・ロジェ」のピュアもブリュットより1年熟成期間が長いはず。「ブルーノ・パイヤール」はリザーヴワインが50パーセント。ドザージュゼロにするキュヴェはいずれも、ブリュットより、リザーヴワインが多かったり、熟成期間の長いものが多いですよね。
ポル・ロジェ
ピュア(エクストラ・ブリュット)NV
手回しのルミュアージュにこだわるエペルネのメゾン。エクストラ・ブリュットの表示ながらドザージュはゼロ。「柔らかくなった洋梨、フィリング、白い花、火打ち石のようなミネラル。白レバーのパテと」(紫貴)。「スダチなど爽やかな和柑橘のアロマ。レースのようなデリケートさ。ミネラルという言葉がふさわしい」(柳)。
品種 シャルドネ33%、ムニエ33%、ピノ・ノワール33%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 9,000円
輸入元 ジェロボーム
紫貴 そのようにボディの厚みや口当たりの柔らかさを出すことで、糖分を加えなくても調和が取れるようにしてるんですね。
柳 先ほどのなぜ低ドザージュ傾向なのかという理由のひとつに、食のライト化が関係してると思うんですよ。クリームやバターを使わない、素材重視の料理が増えている。この3つのシャンパーニュは、そうした今風の料理に合いそうな気がします。
紫貴 ビルカール・サルモンだったら何を合わせます?
柳 ヒラメの昆布締め。
紫貴 私の大好物!
ラルマンディエ-ベルニエ(RM)
テール・ド・ヴェルテュ ノン・ドゼ プルミエ・クリュ 2013
コート・デ・ブランのヴェルテュ村にあるビオディナミのRM。原酒はオーク樽による発酵。「レモン、グレープフルーツ、パン・ド・ミの香り。唾液が滴り落ちるような酸。オイスターに合わせたい」(紫貴)。「シャープな酸。タイトに締まり、テンションが強く感じられる。後口に旨味がじわり。てっさ、てっちりをポン酢で」(柳)。
品種 シャルドネ100%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 9,500円
輸入元 木下インターナショナル
RM(レコルタン・マニピュラン)=レコルタンはブドウを収穫する人、マニピュランはシャンパーニュを醸造する人なので、自社畑で収穫されたブドウのみ用いてシャンパーニュを醸造する農家を指す。RMは、自社畑のブドウしか使えないため、年ごとのバラツキが大きい反面、土地の個性を反映させられ、個性的なスタイルのシャンパーニュを造ることができる。
紫貴 酸っぱ!
柳 ラルマンディエ・ベルニエですか? シャープにはシャープですが、僕は覚悟していたほど強く感じませんでした。だんだん酸に慣れてきたのかな(笑)
紫貴 こういうタイプがお好きな方って、マゾっ気があるんじゃないかしら?
柳 2013年は涼しい年ですから、造り手も相当な覚悟で造ったんでしょうね。エンクリはどうですか? 厳格さで知られるメニル・シュール・オジェですが。
紫貴 身構えてましたが、ラルマンディエ・ベルニエほどきつくはなかったです。
柳 シャープネスはありますが、とげとげしさは感じません。これならマゾでなくても飲めるでしょ(笑)
シャンパーニュ ジャクソン
シャンパーニュ キュヴェn° 743 NV
大樽発酵熟成にこだわるディジー村のメゾン。これは2015年ベースでリザーヴワインが20%。この#743でついにドザージュゼロ。2019年8月デゴルジュマン。「グレープフルーツ、青リンゴ、トースト、アーモンドが香る。口当たりにボディを感じ、熟成感も」(紫貴)。「酸化熟成のニュアンスがあり、マルチレイヤード」(柳)。
品種 シャルドネ 50% 、ピノ・ノワール25%、ムニエ25%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 11,000円
輸入元 ヴァンパシオン
紫貴 「ジャクソン」はすごくバランスが良いですね。滑らかな口当たりと、熟成感もありながら生き生きとしていて。これならドザージュ不要というのも納得です。
柳 ベースが2015年という温かな年ですね。低ドザージュトレンドの理由その2ですが、やはりブドウの熟度と関係があると思います。温暖化でシャンパーニュ地方でも熟度の高いブドウが得られるようになりました。反対に酸は低くなる傾向にあるので、従来どおりのドザージュだと重くなってしまう。
紫貴 なるほど。元のブドウが完熟しているので、ドザージュでお化粧する必要はないというわけですね。
柳 はい。ただドザージュゼロはまさにすっぴん。それを受け入れられるか否かは、飲み手の判断によりますね。
紫貴 柳さんはきっとすっぴんがお好きですよね?
柳 「ボワゼル」はイースト香が強いですね。
紫貴 瓶内熟成6年だそうです。滑らかでリッチですが、酸が生き生きしています。これもドザージュ不要の素肌美人ですね。
瓶内熟成 シャンパーニュでは、酵母と糖を加えて瓶詰めしてから出荷まで、最低15か月の熟成が必要とされ、うち12か月は澱とともに瓶熟成が義務付けられている。澱とは、糖分を分解し終えた酵母が沈殿したものを指す。この澱が自己分解してアミノ酸を生み出すとともに、トーストのような香ばしい香りをワインもたらす。澱とともに熟成した期間が長いほど、シャンパーニュには複雑な香りが生まれるため、大手メゾンの多くは規定より長い熟成期間を設けている。
ローラン・ペリエ
ローラン・ペリエ ウルトラ ブリュット
トゥール・シュール・マルヌのメゾンで、ドザージュゼロのパイオニア。熟度が高く、酸が低めのブドウを用い、最低6 年の熟成。「女性でいうところの元祖素肌美人。緻密な酸だが、ギスギスはしていない」(紫貴)。「レモンを丸かじりしたような、フレッシュな酸。後口に心地よいほろ苦味。兵庫・坂越の生ガキと」(柳)。
品種 シャルドネ 55%、ピノ・ノワール 45%
ドザージュ 0g/l
参考価格 13,020円
輸入元 サントリーワインインターナショナル
紫貴 やはりベースのヴィンテージや熟成期間で、酸味の感じ方が大きく変わってきます。この3つ、最初の方で見られたレーザーシャープな酸とは違う。なおかつ、味わいに深みが感じられます。ポメリーはデゴルジュマンの後、だいぶ寝かせてるんでしょうか。メイラード反応による香ばしさや、シャンピニヨンのニュアンスも出てきてますね。
デゴルジュマン ボトル内に溜まった澱を、瓶口に集めるルミアージュという作業のあと、集まった澱を取り除く作業。倒立した状態のボトルの瓶口部分のみをマイナス27度の冷却液に漬け、澱の部分を瞬時に凍らせる。続いて栓をした王冠を抜けば、瓶内のガス圧の影響によって凍った澱の塊部分が飛び出す。
柳 ローラン・ペリエが最低6年、ルイ・ロデレールも同じくらい、ポメリーに至っては約15年の瓶内熟成です。その分、お値段も高めなわけですが、それだけ時間をかけて、素肌を磨いてるってことですね。
ポメリー
キュヴェ・ルイーズ・ナチュール 2004
ポメリーのプレステージ・キュヴェのドザージュゼロ版。「リンゴタルト、キャラメル、ペストリーの香りに加え、シャンピニヨンやコーヒーなど、熟成した風味が感じられる。スケールの大きなシャンパーニュ」(紫貴)。「これはもう別格。フレーバーは複雑で秋のイメージ。ヴェルレーヌの「秋の歌」。松茸の土瓶蒸し」(柳)。
品種 シャルドネ65%、ピノ・ノワール35%
ドザージュ 0g/l
希望小売価格 31,500円
輸入元 ヴランケン ポメリー ジャパン
紫貴 ドザージュゼロと言っても酸味がとてつもなくシャープなものから穏やかなものまであって幅広い。何を基準に消費者はドザージュゼロを選べばよいのだろうかと、疑問に思いました。
柳 売り手にそれなりの商品知識がないと、難しいアイテムですね。
紫貴 ビルカール・サルモンやこのあとのシャンパーニュ J. ヴィニエと同じコート・デ・ブランのブラン・ド・ブランですが、1グラム違うだけで、酸味の強さも変わってきます。
シャトー・ド・ブリニ(RM)
シャンパーニュ・シャトー・ド・ブリニ・クロ・デュ・シャトー NV
南部コート・デ・バールのRM。シャンパーニュの認定7品種が植えられた0.9ha の区画で、ピノ・グリを除く6品種から造られている。「時間の経過とともに、グレープフルーツ、カリン、アセロラ、トースト、カルダモンなどさまざまな香りがグラスから立ち上る」(紫貴)。「フレッシュさと複雑さが混在。個性的な存在」(柳)。
紫貴 いろいろな表情をもつ、個性的なシャンパーニュですね。
柳 新鮮な風味と熟れた風味が、グラスの中でせめぎ合ってる感じ。続いて3グラムの「ドゥヴォー」ですが、メイラード反応でしょうか。味醂っぽく感じません?
メイラード反応 糖とアミノ酸に熱を加えた時に生じる褐変反応。キャラメルやナッツ、カカオなど香ばしい芳香成分が生成される。メイラード反応は常温でも長時間経てば生じる。
紫貴 そうですね。煮付けとかに良さそう。
柳 「ランスロ・ピエンヌ」はクラマン拠点のRMで、ドザージュが3.5グラム。ピュアですね、さすがに。
ランスロ ・ピエンヌ(RM)
ターブル・ロンド NV
クラマンを拠点とするRM。このキュヴェはクラマン、アヴィーズ、シュイィのシャルドネからなる。2015年ベースで2019年にデゴルジュマン。「青リンゴやマルメロに、ナツメグやクミンのようなスパイシー
さ。酸の固さは和らぎ、ほろ苦い後口」(紫貴)。「ハーブのような爽やかさ。旨味、滋味が感じられ、クリーミー」(柳)。
品種 シャルドネ100%
ドザージュ 3.5g/l
希望小売価格 7,200円
輸入元 フィラディス
紫貴 固さがほぐれて、スパイシーさが感じられます。
柳 「ジャカール」は4グラム。これくらいドザージュすると、はるかに飲みやすさは増しますね。
紫貴 本当に飲みやすい。フレンドリーです。松田聖子みたい。
柳 どういう意味ですか?
紫貴 誰からも愛される。
柳 聖子ちゃんてアンチもいませんでした? あっ、話が逸れましたね。次に進みましょう。「パイパー・エドシック」のブラン・ド・ブランで、ドザージュは4グラム。デゴルジュマンが2017年です。
パイパー・エドシック
ブラン・ド・ブラン エッセンシエル NV
ランスのパイパー・エドシックが近年リリースしたブラン・ド・ブラン。リザーヴワイン35%。2014年にティラージュ、2017年10月にデゴルジュマン。「柔らかな白桃など甘い果実に、キャラメルやローストなどメイラード反応」(紫貴)。「ピュアでフレッシュな酸。後口にミネラルの旨苦味。典型的ブラン・ド・ブラン」(柳)。
品種 シャルドネ100%
ドザージュ 4g/l
希望小売価格 7,500円
輸入元 日本リカー
紫貴 キャラメルっぽい風味がしますが、ドザージュ後の期間が長いので、メイラード反応が起きたのでしょうか。
柳 その可能性はありますね。ブラン・ド・ブランとしてとても良いバランスです。
シャンパーニュ J. ヴィニエ(RM)
オラ・アルバ グラン・クリュ NV
クラマンに本拠を構えるRM。セザンヌにも畑をもつ。このキュヴェはクラマン、シュイィ、オワリーのブドウをブレンド。最低6年の瓶熟成。「焼きリンゴ、栗、アーモンド、トーストなど複雑な香り。やや苦味が強いが、熟成感を楽しみたい方に」(紫貴)。「ブラン・ド・ブランらしいテンションと熟成による複雑味が調和」(柳)。
品種 シャルドネ100%
ドザージュ 5g/l
参考価格 6,800円
輸入元 出水商事
紫貴 シャルトーニュ・タイエは熟成期間が短いですけど、その分、フレッシュさが際立ちますね。逆にJ. ヴィニエは熟成感が強く出ていて、モエ・エ・シャンドンはさすがの安定感。
柳 酸の強いシャンパーニュを口にしたので、歯のエナメル質が溶けちゃいました。今晩の歯磨きが怖い。
エクストラブリュットの試飲を終えて
紫貴あき
エクストラ・ブリュットというと悶絶するような酸っぱさをどこか想像していた。しかし実際は品種、リザーヴワインの使用、瓶熟成期間によって印象が大きく変わり、スタイルに幅があることが分かった。まさに造り手の「匠の技」と納得。食のライト化、地球温暖化も手伝い、これからさらに低ドザージュのシャンパーニュは増えるだろう。飲み手はその「幅」を楽しむことができる一方、売り手はそのスタイルを消費者に正確に伝える知識と経験が求められそうだ。
柳 忠之
シャンパーニュのトレンドである低ドザージュ化は、昨今の温暖化の影響を鑑みるに必然とも言える。また、多くのメゾンがリザーヴワインの比率を増やしたり、熟成期間を長くとり、素の状態の品質を高めているため、ドザージュに頼る必要もないのだろう。素材重視の食のトレンドも、シャンパーニュの低ドザージュ化と符合する。ただ、ドザージュゼロの中には香りが開かず、酸がかなり強く感じられるものも多かった。こうしたタイプは真夏のリゾートで活躍しそうだ。