ミシュラン スターソムリエによる 世界の銘醸ワイン ブラインドテイスティング

スターソムリエ、テイスティングを語る

田邉　今回、世界トップクラスの赤ワインをテイスティングしてみて、あらためて思ったのは、どのワインにもテロワールがよく表現されているな、ということ。それに対して、「現行のもの」と限ったヴィンテージはさまざまでした。ここに、どのような熟成のタイミングで飲んでもらいたいかという造り手の哲学が感じられて面白いですね。中でも、ブリュモンは突出していましたが、特にシャトー・ブースカッセ ヴィエイユ・ヴィーニュ
2010が素晴らしかった。ブリュモンというとどうしてもモンテュスに目が行きがちですが、見直さなくてはいけませんね。

田邉公一氏

菊池　コストパフォーマンスが良いですよね。

田邉　クラシックなレストランに一本あると、とても良いアイテムだと思います。若手のプロフェッショナルにこそ、知っておいてもらいたいワインで、ワインの歴史や、時代の転換を肌で感じるアイテムです。

菊池　現行ヴィンテージで5800円という価格が驚愕です。シャトー・モンテュス　ラ・ティル 2010もバランス良い仕上がりで、レストランで、使いやすいワインでした。「スペイン以外のワインで」というお客様に是非おすすめしたい。自分の専門以外で、自信をもっておすすめできるクオリティのワインを知るということは、ソムリエにとって大きな力となります。

菊池貴行氏

山口　すべてのワインがそうでしたが、クオリティの高いワインを経験することで、判断力が磨かれますね。自分のところはクラシックなフレンチをお出ししているので、9割以上がフランスワイン。1割弱は、カリフォルニア好きのお客様から、オーパスやケンゾーのご注文があります。時折、お客様から「ボルドー、ブルゴーニュ以外で」というリクエストがあった際には、シャトー・モンテュス XLを使っていましたが、理にかなっていたな、とあらためて感じました。現行で古いヴィンテージが楽しめるのも、レストランとしては大きな魅力ですね。

山口良太郎氏

井黒　シャトー・ブースカッセはランチでよく使っていましたが、樹齢の古いシャトー・ブースカッセ ヴィエイユ・
ヴィーニュは、あらためて素晴らしいと感じました。ランチでいらっしゃるマダムたちに、お値段はお手頃なのに、上質な赤ワインをお出しすると、より良い時間を過ごしていただけると思います。

また、八角やデーツのニュアンスのあるモンテュス　プレステージ 2002はチーズの時、ラクトン系の香りがあって特徴的なシャトー・モンテュス　ラ・ティル　2010は常連さんを驚かせる時に、などと、同じ造り手でもさまざまなアプローチができることを再認識しました。

井黒卓氏

太田　温暖産地ならではのスケール感、伝統製法を重んじて表現される複雑性が感じられ、また、熟成がメッセージになるということが興味深かったですね。私は、コス・デストゥルネル 2012の点数を一番低くつけたのですが、これは「今飲みごろではない」という評価で、偉大なポテンシャルを否定したわけではありません。

太田賢一氏

最も点数が高いのがシャトー・モンテュス　ラ・ティル　2010なので、整合性はあるかな、と。以前、シャンパーニュのジャック・セロスのレストランを訪れた際、2007のモンテュスが出てきたことを思い出しました。偉大な造り手同士、哲学の部分でも通じ合って、シンパシーを持っているのでしょうね。

採点表

※価格は参考小売価格（その他は、購入価格）