コラヴァン・エアレイター
コラヴァン・エアレイター(Coravin Aerator)というデキャンタいらずの付属部品も登場している。イタリアで若いネッビオーロをテイスティングしたときに相談を受け、帰りの飛行機のなかでグレッグさんが考えた。注ぎ口に、24個の小さな穴のついたパーツを後付けする。そうすると、ガス圧で押し出されたワインが24個の穴を通してグラスに注がれる。1本のトコロテンが24本の細いトコロテンに押し出される、と考えてください。トコロテンじゃなくてもいいけど。そうすると、通常の注ぎ口から注がれるのに較べると、ワインが1000倍の表面積を持ったことになり、すぐにおいしいワインが楽しめるという。
どんな道具にも正しい使い方があるように、コラヴァンにもそれはある。コラヴァンはそれ自体が、ワイングラスのようなものである。グラスを洗うようにコラヴァンも洗うことが大切である。それはキッチンシンクでコラヴァンを使い終わったあと、注ぎ口からお湯を注ぐ。ニードルのなかにワイン、もしくは空気が残っている可能性があるからだ。
ほかのワインに切り替える場合は、次のワインに針を刺す前にガスを1回シュッと吹くと、前の残留ワインを吹き飛ばすことができる。
それと、コラヴァンでアクセスしたワインは必ずセラーに入れて保存する。Clean、Clear、そしてCellar、3のCが大切である。
コラヴァンは小さいからいい。
Q & Aの時間に、コラヴァンの大型版を作る予定は? という質問が出た。コラヴァンのよさは小ささにある、とグレッグさんは答えた。大規模なシステムになると高価になる。もしレストランにソムリエが3人いたとしても、コラヴァンはひとつあればいい。ゲストの目の前で使うことで、ソムリエとゲストとのパーソナル・リレーションシップを築くきっかけにもなる。
コラヴァンは中国製か? という質問に対しては、組み立ては中国だけれど、ニードルはアメリカ製、窒素ガスとカプセルはオーストリア製で、製品には1年の保証をつけており、返品率は1%以下だという。6フィート、およそ1.8メートルの高さからコンクリートの床に落としても壊れない、ミリタリー・スペックである。「ここで実際にやらないのは床を傷つけたくないから」とグレッグさんはにこやかに言った。
テフロン加工されているニードルは、テフロンがとれてくるとシルバーになる。これが取り換えの目安だそうで、テフロン加工を長持ちさせるコツはひと手間、必ずコルクの上の部分のアルミのカバーをはがしてからニードルを差し込むことである。
日本だけ窒素ガスを使っているけれど、カプセルのサイズは同じでも、アルゴンガスのほうが長持ちする。15杯とれるというのだ。カプセルはリサイクルできる素材だけれど、ガスの再充填はできない。そういうカプセルは世のなかに存在しないという。でも、「できる限りゴミはつくりたくない」とグレッグさんは明言していたので、期待したいところではある。と、コラヴァンを持ってもいない記者がいうのも……ではあります。
ワイン・カルチャーに確実に変革をもたらしつつあるコラヴァン。来年発売になるモデル・イレブンと、日本語版のアプリ「コラヴァン・モーメント」に期待しよう!