ブイヤベースも回鍋肉も
高山 フランス・ラングドックです。2009年に元ソムリエのイヴォ・フェレイラという人が始めたエスカルポレットというドメーヌです。エスカルポレットはブランコという意味のドメーヌで、そこのブラン(白)ということで、そのままドメーヌ名がワイン名にもなっています。
梁 ということは、彼は白ワインのつもりで造ってるんだよね(笑)。
高山 この年のぶどう品種はグルナッシュブラン主体、クレレット、ミュスカ、プティグラン。畑から持ってきて除梗後グラスファイバータンクにそのまま放り込み、自然酵母のみでで発酵させます。その後は古樽で4カ月熟成、SO2は添加せずに瓶詰めされます。
谷川 放り込んで(笑)。
高山 彼らのドメーヌで収穫を手伝ってたんですが、まさに放り込みました(笑)。
一同 (笑)。
佐々木 色が一番濃い! クミンとかカレー粉の香りがします。
谷川 そこからレイヤーで凍頂茶のような香りがあって。どちらかというとジョージア寄り。
高山 イタリアの生産者からヒントを得たそうですが、香りが華やかでアロマティックな品種をマセラシオンするとキレのある味わいになる。彼はフランスのアロマティックな品種でそれを試したそうです。結果、複雑味のある味わいになった。
谷川 お料理はイメージしゃすい。
高山 幅広いと思います。うちでいえばブイヤベースとか。
佐々木 確かにシーフードは行けそう。ペアリングとしてホームランが打てそう。
谷川 クミン、カレー系をいかして、豚バラとパプリカ、香味野菜系、クミン、ナツメグなどを使った炒め物。材料さえあれば休日、男性でも家で気軽に料理できそうなものでいい。
梁 回鍋肉!
佐々木 いいですね。そういうノリ。
谷川 あとサフラン系。たまにでてくるんです、オレンジのニュアンスで。
面白いものがいっぱいあります
この4つだけですごく食の幅が広がります。もしみなさんが別の方のワインを選ぶとすれば。
高山 休日なら梁さんのイタリア。
谷川 飲みごたえがあって酸も残っていて、でもゆるい。よくそんな肩の力を抜いてこの到達点をみつけたなと。普段どうしてもお客様の層もあって、酸、タンニン、パレットがしっかりしているシリアスなワインを飲むことが多いんです。私自身も休日はこういうワインを飲みたいですし、ワイン初心者の方にもこういう滑らかな口当たりのワインも楽しんでいただきたい。
佐々木 ソーヴィニヨン・ブランのワインで、アロマティックで、華やかな香りが残るというのはオレンジの良さだと思います。第一印象からいいですし、柔らかいタッチもいいですね。
谷川 オレンジ=ジョージアというのではなく、こいうのもありますよ、というのを広めていかないとと思います。もったいない。
梁 ここにはたまたまないですけど、ニューワールドにも……。
佐々木 面白いものがいっぱいありますよね!
梁 尖がったヘンなことをする人が多い。むちゃくちゃ濁った超フルーティーなものとか。造り手によっていろいろな解釈がある。法律で定められていないのがむしろいいことで。
谷川 トライしてますよね。ニューワールドのシステム的にもマッチしています。
梁 僕は今日の気分的には高山さんのフランスを持って帰って、途中コンビニに寄ってカレーパンを買って食べる。
佐々木 そのコメント好感度あがりすぎじゃないですか(笑)。
谷川 オレンジだからこその誰でもできるペアリングだ。
梁 さっきの回鍋肉もスーパーのレトルトでいいんですよ。野菜を加えてすぐできるみたいな。
高山 確かにエスカルポレットはなにも考えずに食べたいものを食べるというタイプだと思います。私もかぶるんですけど、梁さんのイタリア。休日ごくごくと飲みたい……。
谷川 きっとみんな疲れてるんだ(笑)。
一同 (笑)。
最後に初心者でも、かじった方でも、どう楽しんでいただきたいか。
高山 お客様にお出しした時にキャッチーだし、実際味わいも面白いです。レストランでみつけたらぜひ試していただきたいです。ご自身で1本買って、家庭で作る料理と合わせるのもいい。ワインだとフレンチやイタリアンをちゃんと作らなきゃとかハードルを上げてしまっている方に、初めて家で開けるワインとしていいと思います。
梁 どこまでいっても好き嫌いでいい。新しいものを理解しようと考えすぎずに、うまいじゃん、でいいと思います。
佐々木 多様性と捉えるか難しいと捉えるか。わからないといけないということはないです。また難しいのが出てきちゃったなではなくて、改めてオープンな気持ちで。
谷川 ワイン全体に言えることなんですけど、“Don’t think, just feel.”です。考えなくていい、感じればいい。ブルゴーニュの超名門のものとは違うもの。ソムリエをうまく使って楽しんでください。