6月19日初夏。もう6月だというのに、上着が必要な寒さだ。最近のパリの天気は、なんかおかしい。温暖化の影響かな? 今回のビオ・ワインのサロン(試飲会)「VIVENT LES VINS LIBRES!」の会場であるパリの19区にある人気ビストロ「QUEDUBON」にたどり着く。入り口で参加費を払い、グラスを手に所狭しと並べられたテントを巡る。日曜の午前だというのに、すでに賑わいを見せている。日曜の朝が遅いフランス人にしては珍しい光景だ。
「VIVENT LES VINS LIBRES!」は毎年この時期に、このビストロで開かれ、今回もフランス各地から33の生産者が集まった。この試飲会はもちろん大ベテランの生産者もいるけど、新進の生産者が多い。毎年来ると新しい才能が着々と力を付けて行くのを感じる。将来を感じさせる。頼もしい限りだ。
数多くのワインを試飲したけれど、今回出会って、「これは!」と思ったものを少し取り上げたいと思う。
まずはシャンパーニュ。「Ruppert Leroy」
2010年から瓶詰めを開始した若手のシャンパーニュ生産者だ。
4haの畑では、ビオディナミ農法を採用しており、もちろん、発酵も自然酵母を使い、二酸化硫黄の添加も無し。清澄剤、フィルター濾過を行わず、糖分添加(Dosage)も無し。徹底しているなあ。
幾つかキュヴェを出しているのだけど、その中でも「Cuveé Fosse-Grely」はシャルドネ50%、ピノ・ノワール50%から造られており、口に含むとまずその味の膨らみに圧倒される。凝縮感もあり、まっすぐに突き進む酸味とミネラル感を穏やかに果実味が包み込む。粘土石灰質という畑の特徴と品種の特徴を良く表している。いいよね。
「これ、美味いね!深みがあって」と言うと、
ニッコリ微笑みながら「でしょ?自信作だもの」だって。納得。
お次はジュラ地方の生産者「Phillipe Bornard」。オレンジ色の大きく描かれた狐のラベルが印象的なワイン。
彼はジュラ地方のビオ・ワイン生産者のなかでも大ベテランの域で、数々の若手生産者にも影響を与えている。(スターウォーズでいうところの、オビ・ワン的な? でもマスター・ヨーダは別にいるんだよね。)
ここで試飲したワインはどれも素晴らしかったけど、印象的だったワインは「Ploussard Point Barre」。50年以上の樹齢のプルサール種から造られる淡い紅色が特徴の赤ワイン。試飲に訪れると、通常と順番が異なり、白ワインよりも先にまずこのワインが出される。わずかな酸化からくるバラや紅茶、ほんのりとした日本の柿のような芳香が感じられ、途端に日本が懐かしくなった。味わいもタンニンがきめ細やかで柔らか。穏やかで吹き抜けるそよ風のような優しい果実味が広がる。何かと一緒に飲んでも、もちろん美味しいだろうけど、このワインだけでも、ずーっと飽きずに飲める、そんなワインだ。
最後にご紹介するのが、南フランス・バニュルスの生産者「Domaine YoYo」。2005年設立の女性生産者だ。
紹介するワインはこちら「La Tranchée」。グルナッシュ・ノワール種100%で造られる赤ワイン。ちょっと専門用語になってしまうけど「マセラシオン・カルボニック」という方法で造られる。
南フランスらしい、濃くボリューム感がしっかりとしたワインで、凝縮感のある果実味がとてもジューシー。この地方のシスト土壌から来るミネラル感がしっかりとワインの体幹を作っており、後味にややスパイシーさや野性味を感じさせる。ン〜、これは肉でしょ! バーベキューしたい! ああ。何かお腹空いてきた。
ふと気付いて周りを見渡すと、すでにいっぱいの人が。食事コーナーで牡蠣とワインでいっぱいやる人、アコーディオンを奏でる人、それに合わせて唄う人。ちょっとしたお祭り騒ぎ。実にフランスらしい試飲会だ。
「これが、ワインの自由ってもんさ!」。そんな声に後押しされるように、喧噪を後にした。