
日本から駆けつけた応援団とカンパイ。
またもやトラップ!
石田はきれいに均等に注いでいったが、注ぎ終わった時、ボトルには相当な量を残してしまった。そしてここにも、大きなトラップが用意されていた。テーブルの上に用意されたグラスは18脚ではなく19脚だったのだ。
シャンパーニュのサービスはコンクールでは定番で、石田も自宅で娘もみゆうちゃんに手伝ってもらい、特訓を重ねていたはずだったのに……。
しばしの休憩を挟んで、いよいよ結果発表だ。
前々回の世界チャンピオン、ジェラール・バッセが優勝者の名前を読み上げた。
「ヒロシ・イシダ」
会場の日本人応援団から歓声がわく。石田はロッキーのように、壇上に妻と娘をあげ、ともに喜びを分かち合った。優勝記念のゴールドのモエ・エ・シャンドンを手に石田はこう言った。
「あれだけ娘と一緒に特訓したのに、今日は失敗してしまいました。このいただいたシャンパーニュでやり直します。また手伝ってくれるかな」
みゆうちゃんはにっこり笑って頷いた。
いよいよ4月、アルゼンチンに乗り込む!