
ラインヘッセン地方のライン川の支流、ネッカー川沿いに連なる渓谷斜面のブドウ畑。
訪問地3 Lauffener Weingartner(ラウフェナー栽培農家組合)
ローカル品種でスタイリッシュな国際派を。
ラウフェナーは、1200人の栽培農家を束ねる農業組合。畑はほとんどが石灰質土壌の斜面で、総面積880ヘクタール。単純計算すると、1農家あたり1ヘクタールに満たない。
というのも斜面ゆえに機械収穫が不可能な地で、しかも熟したブドウから順々に摘み取るためには同じ畑を4~5回巡らなければならない。小さな農家であればあるほど人手が足らず、広い畑を管理できないのだ。最近は相続による畑の分割で、区画はさらに細かくなってきているとか。
それら1軒1軒を根気強く取りまとめ、一定量を確保し独自ブランドを展開するのが組合の役目だ。

斜面に広がるブドウ畑。
「個人的にはレンベルガーが好き。ピノっぽく表情を変えてくれるから」と語るのは、醸造担当のアントニア・ラウアーさん。地場品種を中心に30種のブドウを扱うが、造るのはスタイリッシュな国際派。世間のニーズにも敏感で、自然ワインの市場が拡大していると知れば、有機栽培のブドウを集めてワインを造る。現在は、動物性食品を一切口にしない厳格なベジタリアン向けに、清澄時の卵白不使用など特別に配慮したワイン制作を企画中。
失敗は許されないが、進歩し続けるための策も講じなければならない。アントニアさんの舵取りに、栽培農家1200人の生活がかかっているのだから。

アントニアさんはガイゼンハイム大学で醸造を学び、ビオディ波を実践するワイナリーなどで経験を積んだ後、2012年から現職。

Katzenbeißer Trollinger Q.b.A. trocken
(カッツェンバイツァー・トロリンガー Q.b.A. トロッケン)
陽当たりの良い斜面ですくすく育つトロリンガーは、ネッカー渓谷の畑に最適。「ワインはチェリーを思わせる香りがあり、溌剌としてジューシーな味わいになります」(アントニアさん)。地元ビュルテンベルクでは、パスタや野菜と合わせることも多いとか。ほかに畑違い、使用樽の違いでトロリンガーの赤ワインを複数展開し、「ブランド・ノワール」と名付けた白のスティルワインまでリリース。組合にしてはかなりの冒険度だ。