全房発酵に立ち返る
ブルゴーニュにおいて古い歴史を持つメゾンは少なくとも10軒はあると言われています。そのうちのひとつがドメーヌ・シャンソンです。45ヘクタールの所有畑と15世紀に建てられた砦を誇りとしています。
1750年創業ですが、オーナーは時代とともに変遷し、1999年にボランジェ・ファミリーの傘下となりました。
おかげで、第二次世界大戦後、ブルゴーニュにもやってきた不遇の時代から続いた負の遺産を清算し、設備や人材確保への投資が行われ、18世紀に得た本来の名声を取り戻しつつあります。
功を奏したのは品質の向上(生産量は変わらず)で、その成果は顕著に表れています。
その鍵とは、ズバリ“原点回帰”。シャンソンのスタイルである本来のブルゴーニュワインつくりに立ち返ったと言えます。
DRC、ルロワ、デュジャック、ランブレイ、コンフュロン・コトティド……、これらの生産者に共通するものとは?
そう、ブドウの実と梗を分けることのない全房発酵を行っていること。
1950年代に除梗機が開発されて以来、未熟な梗を取り除き、ピュアな果実みを生かすスタイルが主流となりました。
第二次世界大戦後、シャンソンも除梗を施す醸造を行っていましたが、2000年に醸造責任者としてジャン=ピエール・コンフュロン氏が着任、彼が代々踏襲してきた全房発酵の技術を導入し、かつてのシャンソンのスタイルに回帰する改革が図られたのです。
全房発酵を行うため、畑での剪定や選芽などの管理、実とともに茎の熟成を待つ根気が必要となり、収穫は選果、手摘みなど、機械に頼ることのできない忍耐の要る作業となりました。
発酵前にはブドウを7℃まで冷やし、通常は2〜3日のところ、シャンソンでは8〜10日間を費やす長期の低温浸漬を行います。
この浸漬の期間、酵素が細胞壁を壊し、梗や種からフローラルさやスパイシーさのアロマが抽出され、また梗からもたらされるタンニンによって、ワインの長期熟成を可能にします。「ワインつくりは忍耐。だからこそ情熱が必要なのです」とアヴネル社長は語りました。
また、水分が含まれている梗にはフィルターの役割もあり、色、香り、質感、骨格を和らげ、アルコールは1.5%ほど下がり、フレッシュさをプラスしてくれます。
テロワールに育まれたブドウの実直さを生かすため、新樽率は、白ワインは20%まで、赤ワインは30%まで、に決めています。所有畑のブドウからつくるワインも、購入したブドウ果汁からつくるワインも、同じ比率を守る。これも、シャンソンの哲学である、畑の独自性の尊重=テロワール重視に則ったものです。
全房発酵への転換には、技術、人材、施設など大きな変更や見直し、そして膨大な時間と労力がかかり、今のように整ったのは2013年頃のことです。これによって、「シャンソン」の品質を向上させ、独自の個性を確立、業界からも高い評価を受けるなど、かつての名声を取り戻しつつあります。
ブルゴーニュ本来のワインを守り、独自のスタイルを確立するシャンソン。これからの進展が期待されます。
ドメーヌ・シャンソン www.vins-chandon.com
インポーター:株式会社アルカン www.arcane.co.jp