世界三大酒精強化ワインのひとつ
平成最後の年となる2019年は、日本史のみならず世界史においても記念の年でもあります。
15世紀初めアジアの東端日本では、日本独自の文化が芽吹く室町と呼ばれる時代ですが、ヨーロッパの西端イベリア半島では、キリスト教国によるイスラーム勢力からの国土回復運動が行われていました。覇権争いに凌ぎを削った成果により絶対王政を確立したポルトガル王国は海外進出に積極的となり、大航海時代の先陣を切って航路を開拓していったのです。
1418年、大西洋を探検する1隻のポルトガル船がマデイラ諸島のひとつポルト・サント島に漂着したのをきっかけに、翌年からポルトガル人による入植が始まりました。そう、今年2019年はポルトガル人のマデイラ漂着から600年を記念する年なのです。
リスボンから南西に1000km。ポルトガル船がアフリカ経由で世界へ乗り出していくための補給基地の役割も担ったマデイラ島では、やがてブドウ栽培からワイン醸造が始められました。
マデイラワインは、醸造酒に分類される一般のワインと異なり、発酵途中に蒸留酒を添加することで酵母を死滅させ発酵を止める酒精強化ワインのひとつで、ポートワインやシェリーに並ぶ世界3大酒精強化ワインと謳われています。
発酵途中のワインに蒸留酒を加えるタイミングなどで、ぶどう果汁が持つ甘辛の調節をし、黒ぶどう品種ティンタ・ネグラからつくられるワインは甘口、中辛口、中甘口、辛口の4種類に分類することができます。
ティンタ・ネグラは島全体の80%以上(一説には90%とも)で栽培が行われ、安価な料理用ワインの原料にもなりますが、つくり手の独創性により熟成の味わいを楽しめます。
一方、白ブドウを使ったワインには、品種により甘辛口が分かれ、すなわちブドウ品種を覚えていることで甘辛口好みの味わいを選ぶことができると言えます。
唯一無二の加熱処理
とはいえ、その味わいには、「甘い!」「ドライ!」のひと言では言い尽くせない複雑さが含まれています。その複雑さを備えるための、マデイラワインの唯一無二の特徴として加熱熟成が挙げられます。
大航海時代、マデイラワインを積んだ船が赤道付近を通ることで熱が加えられて酸化熟成が進み、酸度、糖度、アルコール度、色調が高められたことに端を発するとされ、現在ではタンクで人工的に加熱熟成させる「エストゥファ」と呼ばれる方法と、太陽熱を積極的に取り入れることができるガラス張りの熟成庫で樽詰めしたワインを長期間熟成させる「カンテイロ」と呼ばれる方法が用いられています。
こうして酸化熟成されたワインは200年の樽熟成を可能にし、その後瓶詰めすることで「3世紀にわたるワイン」とも讃えられます。ワインの大敵であるはずの熱を加えられて酸化が施されたマデイラワインは抜栓後の味の変化(劣化)がゆっくりであるため、人間の一生とは比較にならないほど長命です。
さて、こんなにも偉大なマデイラワイン、実は世界一の品揃えでギネスにも認定されたお店が日本の、大塚にあることをご存知ですか? その名も「カフェ+バー レアンドロ」。お願いすれば、オーナーの鈴木勝宏氏が情熱をもってマデイラワインの解説をしてくださいます。生まれ年のワインにも出会えるかも!?
ぜひ足を運ばれることをオススメいたします。