素材の旨味を閉じ込めたてんぷらにワインを重ねて
文化人に愛され、名料理人も輩出してきたこの老舗は現在シニアソムリエの資格をもつ寺岡正憲調理長を筆頭に、てんぷらとワインのペアリングに力を入れている。
左から寺岡正憲調理長、シェフソムリエの倉本裕智さん
てんぷらに適した素材を全国から取り寄せているが、素材同様にこだわるのが江戸前の焙煎の香りを守る胡麻油だ。これは太白胡麻油と太香胡麻油をブレンドしたもの。
「この油は深みがあり、素材の甘味を引き出すので、素材自体にも力があり、油の香りに負けないものを選んでいます」と寺岡調理長。
今回の秋のお勧めは、名前のごとく、皮の部分に甘味や旨味があるアマダイだ。鱗をサクっと揚げたアマダイは凝縮感がある。これには『ピノ・グリ・レ・プレラ 2017年』(ポール・ジャングランジェ)を選んだ。
甘鯛(2500円)
「ピノ・グリはコクがあり味の深みもあるので、旨味のあるアマダイと寄り添います」とシェフソムリエの倉本裕智さん。
左から『アルザス・ピノ・ノワール2018年』(ドメーヌ・ユージェーヌ・メイエー)ボトル10000円、グラス1700円、『アルザス・ピノ・グリ・レ・プレラ 2017年』(ポール・ジャングランジェ)
ボトル10000円、グラス1700円 ※写真の『アルザス・ピノ・ノワール』は2016年
2品目のカボチャもシンプルな素材だが大きな塊りのまま、低温でゆっくり時間をかけて揚げることで甘味が増す。
南瓜(700 円)
これには『ピノ・ノワール 2018年』(ドメーヌ・ユージェーヌ・メイエー)がお勧め。
「タンニンが抑えめで果実味があるので、カボチャの甘味と合います」と倉本さん。「カボチャの青い香りとアルザスのピノ・ノワールがもつ青い風味に着目しました」と寺岡調理長。
てんぷらの奥深い世界とペアリング談義が楽しめそうだ。