スペイン版おふくろの味
そのワインの名は『ドン・ロメロ』。和洋折衷で訳すれば「ミスター巡礼」。カタルーニャ生まれのこのワインは、巡礼者に敬意を表して名づけられた。さあ、私たちも巡礼の旅に出よう。美食とドン・ロ
メロの幸せな冒険へ!
今回の巡礼地は食の都、大阪。スペインバル「アウパ」へ向かおう。
一流の和食から、愛され続ける「粉もん」やB級グルメまで多彩で豊富な食文化を誇る大阪。梅田、北新地、なんば、心斎橋とそれぞれに人気店がひしめく。
アウパのある堀江は、中でもクリエイターやファッションの感度が高い人たちが集まる場所。当然海外の味に対しても関心も感度も高い。そこで人気を集めるスペインバルというのだから期待は大きい。
入ってみれば、バルらしい立ち飲み&タパスを楽しめるカウンターがあり、一方でじっくり酒と料理を楽しい会話と共に過ごせそうなほどよいテーブル席もある。
オーナーシェフの松木彰秀さんは、19歳でスペイン・サラマンカに留学。そのころの人生の目的は違うところにあったが、そこで出会ってしまった。下宿のおばあちゃんに食べさせてもらったレンズ豆のスープと
だ。
それから松木さんは飲食の道に進む。そしてスペイン版おふくろの味が、ここ堀江にあるという評判は、大阪在住のスペイン人に自然と広がって行く。それがまたスペインからやってくる旅行者にとってのオアシスにもなる。文化が全く違う日本での日々は在住者にとっても旅行者にとっても刺激の一方で知らず知らず心身を疲弊させていくものだろう。
そのとき、故郷の味がそこにある。
その安心感は彼らの明日の元気になる。そう、ドン・ロメロも同様に巡礼者に捧げるワイン。巡礼者の力水であり、やわらぎの水でもある。
松木さんの手掛ける本場のスペインバルで愛される定番、ロシア風ポテトサラダや、フライドポテトの目玉焼きのせ(アウパのメニューでは「われたま」と可愛らしい名前がついている)」も彼らにとってのパワーフードであり、癒しの一品だ。
語学講師、ヨガインストラクター、カフェの経営者、有名サッカー選手などいろいろなスペイン人の「巡礼者」が集まれば、地元の人も、ここがスペインの風を感じられる場所として集まってくる。常連さんは70代
の仲良しご夫妻から若者まで幅広いが、なぜ幅広い人が集うかと言えば、やはりベースにあるおふくろの優しい味。日本人客もまた、巡礼者たちとここで出会い、同じものを食べ、力と癒しをもらう。
まさに巡礼地の食堂の風景だ。
松木さん自身も人生の巡礼者の一人だ。長野出身、スペインを経て大阪にやってきた。そこで巡礼者たちと地元の人たちを迎える。
松木さんのカルドソの絶妙の塩梅。はじめは濃厚に感じるけれど、2口目からは上品さ、そしてあっさりとした後味。「最後まで、しんどくならずに食べていただきたいんです」という言葉の裏からもてなしの気持ちが伝わってくる。
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