巡礼者に敬意を表して
そのワインの名は『ドン・ロメロ』。日本人にわかりやすく訳すれば和洋折衷で「ミスター巡礼」だ。
カタルーニャ州の首都バルセロナから約40㎞にある小さな町、サン・サデュルニ・ダ・ノイア。ここがミスター巡礼の生誕地。近くにはノコギリの歯のような形をした美しい山、モンセラットがある。
この山はキリスト教の聖地であり、山麓の修道院にある黒いマリア像は、信仰心の深いカタルーニャの人々の守護神的な存在。この地には、今でも数多くの巡礼者が訪れる。
ドン・ロメロという名はその巡礼者に敬意を表して名づけられた。
それならば、このワインを飲む私たちも巡礼の旅に出てみよう。美食とドン・ロメロの幸せな冒険へようこそ!
最初の巡礼地は東京・日本橋。
コレド室町1にある『ビキニ ピカール』だ。
カタルーニャ出身、かの地の技術と魂を日本で伝えるシェフ、ジョセップ・バラオナ・ビニェス氏が料理を監修。ビニェス氏といえばスペイン料理の名店「小笠原伯爵亭」初代総料理長、「愛・地球博(EXPO)」スペインパビリオン「タパス・バー」の総プロデュース、天皇陛下とスペイン国王の晩餐会での料理提供などを経て、1日1組限定のアトリエ「L‘estudi 」(レ・ストゥディ)を主宰。これだけの実績のある氏だが、そのエッセンスをより気軽に楽しんでいただこうというのがこの店の狙いだ。
そう、氏はピンチョスの伝道師でもある。
ピンチョスは「串」という意味で、小さなパンに様々な具材をのせてそれを串で刺したことから名づけられたタパス(小皿料理)のひとつだ。
そして店名のピカールはスペイン語でその「タパスをつまむ」という意味。氏の意志と匠を継承して腕を振るう坂井勇シェフは「会社帰りにでも、親しい人同士でも、気軽に本場のいろいろなタパスや料理をつまんで、ワインとあわせて楽しんでいただきたいですね。赤字覚悟で……いや赤字かもしれません(笑)」と語るが、食べているとシェフの笑顔が料理からも伝わってくる。カタルーニャの笑顔あふれる料理をカタルーニャが生んだドン・ロメロとともに楽しめば、そこはもうカタルーニャの街角になる。
ピンチョス、ブラサ(焼き物)、プランチャ(鉄板焼き)はいずれも友人たちと分け合いながらいろいろなものをオーダーできるサイズとプライス。会話が弾み、舌鼓を打てばワインもどんどん進む。ドン・ロメロはカヴァもブランコ(白)もティント(赤)も、しっかりしたバックボーンを持ちながらもフレンドリー。会話と料理をさらに加速させ、笑顔にしてくれる。
巡礼者へエールお送り、おつかれさまと明日への元気を提供するワインと考えればそれも当然か。
今日のメインは「フィデワ」でいこう。米ではなく細切りショートパスタのパエリアだ。香ばしいパスタの香りと濃厚な海の出汁がからむこの料理はカタルーニャ名物。ドン・ロメロの泡、白、赤とも好相性。カヴァ・ロゼもおススメだ。会話もフォークも止まらなくなる……。
満腹、満腹。今宵はここまで。
さあ、ドン・ロメロ、ミスター巡礼とともに、次はどんな食とワインの冒険に出かけようか。
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