地上と地下で演出がちがう
「銀座にはたくさんの素晴らしいお食事のお店がありますから、私どもはあまりお邪魔にはならないように……」
GINZA SIXのすぐ近く、銀座五丁目 あずま通りの新築ビルにオープンした「ケンゾー エステイト ワイナリー 銀座店」を、その「ケンゾー エステイト ワイナリー」のCEO、辻本夏子さんはそんなふうに控えめに表現した。
筆者が訪れた日は、開店前日とあって、華やかな雰囲気だったけれど、なるほど、その外観をあらためて見てみれば、平素の「ケンゾー エステイト ワイナリー 銀座店」は、ともすれば気づかずに前を通り過ぎてしまうような、つつましやかな佇まいのダイニングだ。
内部は地上と地下との2層構造。どちらにゆくかで趣が異なる。
地上階は、アフリカ産のウエンジの木を使った、一枚板のカウンターに、8席を配したつくりで、京都出身の和紙デザイナー、堀木エリ子さんが手がけたという造作和紙が壁面を飾る。これまでの「ケンゾー エステイト ワイナリー」とはまた趣のちがう、優しい空間だ。
いっぽうの地下は、ナパ・ヴァレーのケンゾー エステイトのイメージを引き継いだ、ワイナリーのテイスティングルームのような雰囲気。カウンター席のほか、2人がけのテーブル席が2席、さらに、4人から6人で利用できる個室もある。
ケンゾー エステイト流 おちょぼ餃子とスパークリングも
穏やかな空間は、もちろん、ディナーにもいいとはおもうけれど、あるいは、軽く食事したあともいい。
料理は「ベージュ 東京」を経て、ケンゾー エステイト ワイナリー各店でスーシェフを担ってきた村上遼太郎氏が手がける。旬の食材を使い、ケンゾー エステイトのワインに合わせた品々にはワイナリー直営の強みを感じずにはいられない。ケンゾー エステイトのワインにぴったりと合う。他のレストランでこれは出来ないだろう。食がワインを、ワインが食をさらに美味しくする。
ワインは、「清 sei」、「結 yui」、「あさつゆ asatsuyu」、「明日香 asuka」、「紫鈴 rindo」、「紫 murasaki」、「藍 ai」、「夢久 muku」と、入手困難なケンゾー エステイトの全8作品、すべてを楽しめる。しかも、ワイナリーでのテイスティングのように、40mlという少量から、80ml、120ml、ハーフボトル、フルボトルとオーダーできるのだから贅沢だ。
ごく大まかにそれぞれのワインを説明すると、清 seiがソーヴィニヨン・ブランを主体とした、シャンパーニュ方式でノンドザージュのスパークリング、結 yuiがメルロー、カベルネ・フラン、マルベックからなるロゼ、あさつゆ asatsuyuはソーヴィニヨン・ブランを主体にセミヨンがくわわる白、明日香 asukaはカベルネ・フランを主体とした赤、紫鈴 rindoはカベルネ・ソーヴィニヨン、メルローを主体に、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルド、マルベックをブレンドしたクラシカルなボルドースタイルのメリタージュ。そして、メルロー主体の紫 murasakiとカベルネ・ソーヴィニヨン主体の藍 aiという2つのトップキュヴェに、夢久 mukuはレイトハーベストのソーヴィニヨン・ブランを使ったデザートワインだ。
この中で注目はやはり、「清 sei」が飲める、というところ。少量生産のケンゾー エステイト初のスパークリングワインとして11月1日にリリースとなる「清 sei」を、「ケンゾー エステイト ワイナリー 銀座店」では、発売に先駆けて飲める。
さらに、これに合わせたかどうかは定かではないけれど、メニューのなかにはおちょぼ餃子というものがあって、ワインファンから注目される、餃子✕スパークリングのケンゾー エステイト版が体験できるのだ。
WINE-WHAT!?も先行体験してきた
その、ケンゾー エステイト ワイナリー 銀座店、WINE-WHAT!?は先行で体験させてもらった。
お披露目の軽食ということだったけれど、ケンゾー エステイト ワイナリー 銀座店の正式メニュー3品に、「清 2015」、「結 2017」、「紫鈴 2015」を合わせたショートコースを楽しむことができた。いずれの食事も非常に凝っているので、これで一日を締めくくれれば、贅沢だ。
「清 2015」は、アメリカでも非常に評価が高いケンゾー エステイトのソーヴィニヨン・ブランにわずかにセミヨンを加えた、シャンパーニュ方式のスパークリング。ノンドザージュ。香りにはまろやかな甘味があるけれど、味わいはシャープでさっぱりして、凛としていながらも力強過ぎない繊細なスパークリングだ。若干の果実由来とおもわれる苦味が心地よい。和風なイメージ。
「結 2017」には、巨峰やタルトタタンのイメージがぴったりと合う。ところが、面白いことに、結にはさらに、すこし穀物のような香ばしさが味にも香りにもあり、それが乳製品や、ハムのように加工した肉の香ばしさと互いを高めあう。
「紫鈴 2015」は王道をゆくボルドースタイルの赤ワインだ。ただ、力強いところは強く、繊細なところは繊細に。メリハリがある、余韻は長い。グレートヴィンテージといわれる2014年に優るとも劣らない。2015年、藍、紫も充分に期待できそうだ。
メニューには、それぞれ、合うワインが書かれている。それに従って、気になるワインと料理を合わせれば、ケンゾー エステイトにたくさんのファンがいる理由は理解できるはずだ。銀座の夜にワイン好きらしい時間を。1日の終わりに訪れたい場所だ。