熟成からくる旨味
スペインワインの銘醸地リオハで、自社ブランドのパイオニアとして知られているのが「ボデガス・ビルバイナス」。このワイナリーが自社畑の畑名を冠して生まれたのが「ヴィニャ・ポマール」で、高品質のワインを造り出している。
この『ヴィニャ・ポマール』の良さを「リオハの伝統的な醸造法を実践しつつ、近代的な畑の管理やエコ栽培といった改革を取り入れている」ことと作元さんは語る。
そんな作元さんが一押しなのが、『ヴィニャ・ポマール・グランレセルバ 2011年』。これはテンプラニーリョ90パーセント、グラシアーノ10パーセントのブレンドで、アメリカンオークの小樽で1年間熟成させたのちブレンドし、合計2年間熟成させる。さらに大樽で6カ月とボトルで3年間の熟成を行う。
「樽のきかせ方と果実味のバランスが取れていて、熟成感もあります。グラシアーノをわずかに入れているのも伝統的ですし、ボディを支えていると思います」と語るサーヴィス担当の鎌田昌之さん。このワインには、伝統的な豚のソーセージをアレンジした「蝦夷鹿のブティファラ」がお勧めだ。
「鹿肉は鉄分が多いので、熟成感があり、余韻も長いグランレセルバとの相性は抜群です。このソーセージはイベリコ豚のベジョータの脂も使っており、ソテーしたジロール茸を添えているので、9年の熟成を経て旨味があり、キノコの香りをもつグランレセルバが合います」と作元さん。
熟成もしっかりしていながら価格もお手頃。リオハの魅力の1本だ。
赤1本でコースを通せる
『ヴィニャ・ポマール・クリアンサ・センテナリオ2016年』はテンプラニーリョ100パーセントでベリーのジューシーな果実味や樽の風味が特徴だ。
「ベリー系の香りがあって、ワインビギナーの方にもお勧めの飲みやすさです。また価格もお手頃ですし、幅広い料理に合わせられるので、この赤1本でコースを通す方もいらっしゃいます」と鎌田さん。
この軽快な味わいには、春らしい素材を使った「ソラマメとホワイトアスパラガスのサルティアード、温泉卵とトリュフの香り」を合わせたい。
「クリアンサ・センテナリオは酸も豊かなので春野菜を使った料理に合います」と作元さん。この料理はビウラ70パーセント、マカベオ30パーセントの『ヴィニャ・ポマール・ブランコ』もフレッシュな味わいでボリュームのある白なのでお勧めという。
ちなみにテンプラニーリョ100パーセントには『ヴィニャ・ポマール・レセルバ・センテナリオ』もあり、こちらは程よい酸味と滑らかなタンニンが魅力で、やはりさまざまなタイプの料理と楽しめる。
5品種が生んだ限定生産品
リオハの異なるテロワールの特徴を体現した品種を用いて、1つのヴィンテージでわずかに5000本のみ の限定商品が『ヴィニャ・ポマール・コンプロミソ2015年』。テンプラニーリョ、ガルナッチャ、マチュラナ・ティンタ、グラシアーノ、マスエロの5品種を別々に醸造し、最終ブレンドのあとにフレンチとアメリカンオークの小樽で熟成させる。
「5品種使っているので果実感が強くて驚きました。また樽の香りも感じますね。すでに5年経っていてもフレッシュで、将来が楽しみです」と鎌田さん。
一方、作元さんは「今飲むなら果実感を楽しめます。酸もしっかりあるので長期熟成させたいですね。コンプロミソを一口飲んで浮かんだのが、イカのソテーです」。ヤリイカの詰め物にはイシリ(イカのワタを発酵させた魚醤)で甘辛く炒めたイカやタマネギを。イカ自体やイカスミソースの旨味、甘辛い味付けが、コンプロミソの凝縮した果実味と共鳴し合う。
ヴィニャ・ポマールのラインナップは、赤1本で通すことができる守備範囲の広い味、フレッシュな白、熟成感があるリオハの伝統の味、果実感のある今もいいが、数年後に真価を発揮する長期熟成タイプなど実にさまざま。ソムリエの腕のみせどころで、ワインをシチュエーションごとに提案できるのが強みといえよう。
リオハ・アルタの老舗ワイナリー
「ボデガス・ビルバイナス」
自社畑のブドウのみ使用し高品質ワインを造るワイナリー。1997年、「ボデガス・ビルバイナス」はスペイン最大手のワイナリー・グループの一つ「コドルニウ・グループ」の傘下となる。以来、最先端の農業技術などを導入し、さらなる品質向上に取り組んでいる。