ピザの協力は、日本生まれの宅配ピザチェーン「ピザーラ」
日本人にマッチしたピザ作りの草分けであり、次々生み出される素材にこ
だわった独自のメニューへのファンも多い。
テイスター3人の前にワインが並ぶ
ピザに合うはず、とセレクトし、テストしたワインのなかには、選外となったものも。果たして、どんなワインがピザには合うのか。真剣検証の始まりです。
柳原 亮さん
サントリーワインインターナショナル株式会社 ワインスペシャリスト、(一社)日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ、NPO法人チーズプロフェッショナル協会認定チーズプロフェッショナル
今回、検証したワインのデータはその頭脳に格納済み
若原 美紀さん
「アンティカ・オステリア・デル・ポンテ」ソムリエ。第9回「JET CUP(イタリアワイン・ベスト・ソムリエ・コンクール)」優勝。イタリア大使館公認・イタリアワイン大使。今回はエビマヨ風ファッションで参戦
検証 ピザその1 ブラータチーズの贅沢マルゲリータ
トマトソースは柔らかな赤が欲しくなる
柳原 「ブラータチーズ贅沢マルゲリータ」はベースのトマトソースの味がしっかりしていますね。生ハムも火が入っているので凝縮した味わいになっていて、1切れで満足感があって、まさに贅沢なピザですね。
若原 トマトソースのトマトの凝縮感があるので、赤ワインが欲しくなりました。『タヴェルネッロ オルガニコ サンジョベーゼ 2018』は柔らかい赤いベリーのような果実味があり、トマトソースとのバランスがいいですね。柳原さんのおっしゃる通り、加熱された生ハムの旨味がしっかりあるので、サンジョヴェーゼと好相性ですね。
山本 このサンジョヴェーゼは厳格なトスカーナと違って、エミリア・ロマーニャのチャーミングな味わいなので、そこがこのトマトソース、生ハムを使ったピザにフィットするのだと思います。
柳原 カベルネ・ソーヴィニヨンだと渋味がピザに対して勝ってしまうところがあるので、やはりイタリアの安定感のあるサンジョヴェーゼがベストですね。意外とコクと甘味のある『ダークホース ビッグ レッドブレンド』もいけます。
ブラータチーズにフォーカスするなら白
若原 ピザはソースだけでなく具材によっても選ぶワインの選択肢は広がります。ブラータチーズとバジルにフォーカスすると白ワインが合うと思います。特にブラータチーズのミルキーで濃厚な味わいは『タヴェルネッロ オルガニコ トレッビアーノ シャルドネ 2019』のまろやかな風味がぴったりです。これはミネラルがあまり強くないところが、ブラータチーズのミルキーな風味に寄り添ってくれます。
山本 このピザに別添えのエキストラ・バージン・オリーブオイルをかけると、やはりイタリアのワインの方がより一層引き立て合うと思います。実は自宅の近所のスーパーでこのタヴェルネッロ オルガニコ トレッビアーノ シャルドネを見かけたのですが、ボトルが目を引いてラベルが印象的でした。
柳原 スウェーデンのデザインチームによるラベルです。タヴェルネッロは販売を始めて3年目ですが、すでにベストセラーです。トレッビアーノにシャルドネが厚みを加えた味わいは、ブラータチーズを使ったこのピザに合いますね。
山本 ピザ生地の焦げた部分の香ばしさや咀嚼で考えると樽香のある『カステル バロン ド レスタック ボルドー白 2018』も合うと思います。でも全体を食べて咀嚼したトータルの余韻で考えると、タヴェルネッロ オルガニコ トレッビアーノシャルドネの方がぐっと味わいが膨らみますね。
柳原 見事に赤白ともイタリアとはピザの国は強し!
Result
イタリアの赤&白ワインがベストマリアージュ
タヴェルネッロ オルガニコ サンジョベーゼ 2018
オーガニック栽培のブドウを使用。熟したチェリーやプラムなどのフルーティーでみずみずしい香り。やわらかな果実味とまろやかな渋味、軽やかな酸味のバランスの取れた味わい。
生産国:イタリア
品種:サンジョヴェーゼ100%
参考価格:1,010円
タヴェルネッロ オルガニコ トレッビアーノ シャルドネ 2019
オーガニック栽培のブドウを使用。グレープフルーツやリンゴのやさしい香りとフレッシュな果実味とまろやかな味わいが特徴。後味にシャルドネの厚みを感じる。
生産国:イタリア
品種:トレッビアーノ70%、シャルドネ30%
参考価格:1,010円
検証 ピザその2 大海老のガーリックシュリンプ
文化的背景がわかるとワインが浮かび上がってくる
柳原 続いて「大海老のガーリックシュリンプ」に移りましょう。大海老がゴージャスですね。添えてあるレモンを搾ってください。
山本 具材にズッキーニがあり、特製ガーリックソースがかかっており、そこにレモンを搾るとなれば白の方向性。またマヨネーズソースなので、赤ではなく白という選択肢ですね。『フレシネ コルドン ネグロ』が合うと思います。
若原 そうですね。フレシネ コルドン ネグロは柑橘のトーンがあるので、搾ったレモンの風味と調和します。大海老の旨味も引き立ててくれます。
山本 スペインではアヒージョ(ニンニク)をよく料理に使う食文化があるので、ここでカバをチョイスすることは自然な流れで整合性があります。
柳原 確かに。スペインも南仏もニンニク、卵黄、オリーブオイルとレモン汁で作るアイオリソース文化圏。だからフレシネ コルドン ネグロが合うというのは、つじつまが合うし納得ですね!
合わせるともっと美味しくなるシャルドネの底力
山本 今度は大海老の旨味や甘味にフォーカスするなら『レゾルム ド カンブラス シャルドネ 2018』がいいですね。
柳原 シャルドネの酸味で引き締まった感じになりますね。そしてこのシャルドネを飲んだあとには、ニンニクの風味も立ってきますね。
若原 レゾルム ド カンブラス シャルドネがベストですね。このワインは大海老もズッキーニもガーリックもマヨネーズソースもチーズの香ばしさも全てを引き立てます。ピザを食べてからこのワインを飲むと、トロピカルフルーツのような風味が立ち上がり、さらにミネラル感も後味も際立ちます。
柳原 大海老にはシャルドネが合いますね。樽熟の白全般が合わせられると思いますね。
若原 そうですね。他の白でいえば、樽熟感のある『カステル バロン ド レスタック ボルドー白 2018』もガーリックソースの香ばしさとつながります。
山本 大海老とマヨネーズソースなら、初夏を迎えるこれからの季節にはロゼもお薦めです。ロゼは甲殻類にもよく合います。ロゼのスパークリングワインでももちろんいいと思います。フレシネ コルドン ネグロをカシスで割ってみても面白いと思います。
柳原 ちょっとピザから外れますが、レゾルム ド カンブラス シャルドネは鶏肉を使った料理など、白身のお肉にも合いますよ。
山本 ホームパーティでピザの他に何か数品用意するとしたら、このシャルドネの厚みは、生ハムと合わせてもいいと思います。
Result
アイオリ文化圏の泡&白で決まり!
フレシネ コルドン ネグロ
瓶内二次発酵の本来ならレセルバ(最低15カ月瓶内熟成)を名乗れる品質。柑橘系の香りとキリッとした酸味と爽やかな口当たりの辛口スパークリングワイン。
生産国:スペイン
品種:サレーロ(チャレロ)25%、マカベオ35%、パレリャーダ40%
参考価格:1,680円
レゾルム ド カンブラス シャルドネ 2018
南仏のシャルドネで熟した黄色いリンゴや黄桃を思わせる香り。厚みと柔らかさをもった果実味とクリーンな印象の辛口。若手ワインメーカーが造る品種の特徴がわかりやすい味。
*写真のヴィンテージは2016
生産国:フランス
品種:シャルドネ100%
参考価格:1,010円
検証 ピザその3 イタリアン クラシコ
辛味オイルが引き立てる赤の果実味
柳原 3つ目は「イタリアン クラシコ」です。トマトソースに熟成させたイタリアンサラミやモッツァレラなどが使われています。別添えのレッドホットオイルという辛味オイルをかけてみて下さい。
若原 濃厚なトマトソースとイタリアンサラミの旨味にレッドホットオイルをかけると『ダークホース ビッグ レッド ブレンド 』を引き寄せますね。辛味を包みこみながらワインの果実味も引き立て飲み心地がよくなります。
山本 確かにダークホース ビッグ レッド ブレンドの果実味を感じるマリアージュとなりますね。
柳原 タヴェルネッロ オルガニコ サンジョベーゼとも悪くないですね。ですが濃くて旨味のあるダークホース ビッグ レッド ブレンドの方が、このピザにはより合うと思います。 『レゾルム ド カンブラス カベルネ・ソーヴィニヨン 2018』だと苦味が強くなってしまいますね。
山本 ダークホース ビッグ レッド ブレンドはテックスメックスにも合いそうです。
柳原 実はアメリカではすごく売れています。日本人にはやや甘いと感じますが、その甘さが「飲みやすさ」と通ずるのです。
山本 世界の厳選したエリアからブドウを購入して造り、その美味しさから消費者の心をつかむとは! このワインをはじめ、この価格帯で、これだけ味のバリエーションがあるとは、改めて考えるとすごい時代になっているなと感じます。
辛味と甘味の対比のマリアージュ
山本 このピザにはよく使われる対比のマリアージュの法則を提案します。つまり辛味のあるものに甘口を合わせるといった方法です。このレッドホットオイルの辛さには、やや甘口を補うような『ファルケンベルク リープフラウミルヒ<マドンナ> 2019』がお勧めです。このマリアージュは発見でした。嫌いじゃなですね!
若原 確かにファルケンベルク リープフラウミルヒ<マドンナ>の甘味が、スパイシーさをやわらげてくれますね。
柳原 会社でファルケンベルク リープフラウミルヒ<マドンナ>のマリアージュの実験を探ったことがありまして、麻婆豆腐と合うという意見が出ました。それに通じるものがありますね。
若原 レッドホットオイルをかけない場合は、カバのフレシネ コルドン ネグロが優等生でぴったりだと思いました。トッピングによってもマリアージュが変わってきますが、基本的にやはりソースの力がすごいと感じています。
柳原 ピザは自由自在にワインを楽しめますが、ソースがある程度方向性を決めていますね。
Result
調味料使いで広がるワインの選択肢
ダークホース ビック レッド ブレンド
日照量が多く、よく熟するブドウを世界中から選びブレンドした常識にとらわれない味を目指した。コクと旨味があり、余韻に甘味を感じるフルボディな赤ワイン。
生産国:アメリカ
品種:ジンファンデル、カベルネ・ソーヴィニヨン、テンプラニーリョ等
参考価格:1,570円
ファルケンベルク リープフラウミルヒ<マドンナ> 2019
絶妙な酸味と甘味のバランスで癒される味わい。果物をほおばっているようなフルーティーさが特徴。「聖母の乳」という名の700年前から愛されてきたドイツを代表する銘柄。
生産国:ドイツ
品種:ミュラー・トゥルガウ、シルヴァーナー
参考価格:1,230円
検証 ピザその4 チーズ&ハニー
チーズの旨味や香ばしさに樽熟の白が同調
柳原 本日最後の「チーズ&ハニー」です。3種類のチーズを使っており、別添えのハチミツをかけて下さい。チーズとハチミツが際立ったこのピザには、甘酸っぱいファルケンベルク リープフラウミルヒ<マドンナ>が合うと思うのですが、いかがでしょうか?
若原 ややハチミツの甘さに負けてしまうような気がします。私は『カステル バロン ド レスタック ボルドー白 2018』が一押しです。チーズの凝縮した旨味、まろやかさが調和します。焼いたチーズの香ばしさに、しっかりとした樽熟成の感じが相乗します。余韻に樽の香りがふわーと漂ってきますね。改めてボルドーの白ワインの懐の深さを感じました。
山本 レゾルム ド カンブラス シャルドネも南仏の産地なので、果実のふくよかさ、蜜っぽさがあって合いますね。
ブルーチーズにドライフルーツ的な赤を
柳原 赤はどうでしょうか?
若原 『レゾルム ド カンブラス カベルネ・ソーヴィニヨン 2018』がチャーミングな果実味があり、柔らかさがあるのでバランスが取れて調
和していると思います。
山本 このワインの酸味と果実味がチーズ&ハニーに合います。他は渋味が出てきてしまいますね。
柳原 このレゾルム ド カンブラスカベルネ・ソーヴィニヨンは南仏エリアのよく熟したブドウを使っていますが、酸味がみずみずしく程よいので、チーズの味をしっかり支えてくれます。
若原 このワインが少し熱を加えたベリーの要素を足してくれます。
山本 南仏には有名な青カビチーズのロックフォールの産地があります。ワインもこういった背景からアプローチしていくと合うものが見つけやすいのではと思います。このピザにはゴルゴンゾーラチーズが使われているので、青カビつながりの、お二人が押す南仏のレゾルム ド カンブラス カベルネ・ソーヴィニヨンがいいですね。ワインの果実味がドライイチジクやプルーンを添えるような感じになります。
若原 でもちょっと気をつけたいのが、このワインをチョイスした場合ですが、ハチミツを少し控えめにした方がいいと思います。
Result
旨味と甘味に寄り添う白と赤
カステル バロン ド レスタック ボルドー 白 2018
オーク樽熟成によるバニラ香がしっかり感じられ、余韻にも甘味が続く。比率は毎年変わるが、このヴィンテージはディルの香りが特徴的。おだやかな酸味の辛口のボルドー。
*写真のヴィンテージは2016
生産国:フランス
品種:ソーヴィニヨン・ブラン60%、セミヨン40%
参考価格:1,330円
レゾルム ド カンブラス カベルネ・ソーヴィニヨン 2018
南仏のブドウを使った骨格のしっかりした、わかりやすい味わい。ダークプラムを思わせるフルーティーさ、まろやかさと丸みのあるタンニンのミディアムボディ。
*写真のヴィンテージは2016
生産国:フランス
品種:カベルネ・ソーヴィニヨン
参考価格:1,010円
ピザとワインを合わせるコツ
柳原 本日のまとめですが、ピザに合うワインを探すコツはソースをしっかり見ましょうということですね。
若原 基本的にはトマトソースなら赤、白いソースなら白ですね。
山本 ワインによっては調味料やルッコラなどをトッピングして味わいの幅を広げて楽しむこともできると思います。