フレーバーと産地がつながった最強のペアリング
ホワイトアスパラガスの自然な甘味は、なんとも上品だ。洋食の付け合わせに添えられることが多かったせいか、脇役のイメージが強い野菜だったが、そのイメージは完全に覆された。この料理では、皿の主役としてしっかりと個性を主張している。少し甘くて、香り高いという個性。
アンズソースの酸味がその自然な甘さを引き立てる。さらに卵黄の甘味が重なることで、奥深い味わいを生み出している。付け合わせのウニのコロッケも絶品。ナイフを入れると中からウニクリームソースがとろーり。ホワイトアスパラガスとの相性もいい。キノコの食感と香りも効いている。
「ホワイトアスパラは孤高の食材だ」と石田氏は言う。実は、個性が強く、他の食材と相容れないところがあるのだと。そのしっかりした個性ゆえに、あまりワインとバッティングすることがないのだそうだ。何と合わせても変化しない。ホワイトアスパラガスは何をしてもホワイトアスパラガスなのだ。
そこで、まずはホワイトアスパラガスに合うワインを考えるべきだろう。そうなるとやはり白ワインか。ホワイトアスパラガスには、白がもっとも合わせやすい。けんかをすることはない。石田氏もそう考えた。
問題はその後だ。白の何を合わせるか。絞り込むためには、付け合わせが何か、ソースは何か、ということがポイントになる。
「つまり、この料理の場合テーマになるのはアンズです。アンズの香りがする白ワインがいくつかあります。その中からを選ぼうと思いました」と語る石田氏が選んだのは、オーストリアのヴァッハウ・グリュナー・フェルトリナー。
北部オーストリアは、アスパラガスをよく食べる地域だ。「ソムリエコンクールに初挑戦した時の舞台がウィーンだったのですが、来る日も来る日もホワイトアスパラガスが出てきたことを覚えています」。
しかもドナウ川流域にあるヴァッハウは、アンズの名産地だ。原産地呼称を持っているほど。「フレーバーだけでなく、産地でもつながったわけですから、このペアリングは間違いないと思いました。しかも、最後にシェフが白コショウを振るのを見て、グリュナー・フェルトには白コショウの香りもあり、この料理との相性の良さを確信しました」。
石田博プロフィール
合同会社Soupless代表、レストランローブ ソムリエ、社団法人日本ソムリエ協会 副会長。
1969年生まれ。数々の国内ソムリエコンクールを優勝。2000年には、第10回世界最優秀ソムリエコンクール第3位。2011年 厚生労働省 現代の名工、2014年11月 内閣府 黄綬褒章受章。同年 第7回全日本最優秀ソムリエコンクール優勝。2015年アジア・オセアニア 最優秀ソムリエコンクール優勝。2016年第15回世界最優秀ソムリエコンクール セミファイナリスト。
RESTAURANT L’aube
レストラン ローブ
東京都港区東麻布1-17-9 アネックス東麻布2F
TEL 03-6441-2862
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