第1試合 スパークリング白
「とりあえず!」をジャッジする
柳 最初はスパークリングの白部門です。一般的に料理に対する汎用性は高いものの、互いの味わいが相乗するマリアージュではなく、泡の刺激で風味をすっきり切って洗い流す「口中リセット効果」狙いのケースが多い。これがお好み焼と合わせたときにアリなのかをはっきりさせてみたいと思います。
土田 (広島県出身、血管にオタフクソースが流れていると豪語する)お好み焼ってワイワイ皆で鉄板を囲んで楽しむカジュアルな料理。駄菓子感覚だから、ほとんどのお店がラムネを置いていますよね。シュワシュワの爽快感はアリ。そしてラムネ感覚で甘味のあるミュスカ系品種などもいいと思います。
髙橋 (兵庫県出身、食べたいときは自分で作る。ゆえに自宅にオタフクソースを常備する)東京に来てカルチャーショックを受けたんですけど、関西人にとってお好み焼は駄菓子でもおやつでもなく、ごはんなんです! ディナーとまではいかないけれど、土曜日のお昼ごはんのような。ラムネ感覚で駄菓子っぽく楽しむのか、食事らしさを尊重するか、ワインで演出分けができるんじゃないでしょうか?
柳 おお! さすがに広島と関西の両弁士が揃っただけあって、イキナリ熱いご当地愛議論が勃発しましたね(笑)。こればっかりは実践してみないとわかりません。
ちょうど今、関西お好み焼が焼あがりました。早速、チリの「タラパカ スパークリング ブリュット」と合わせてみましょう。品種は、シャルドネとピノ・ノワール主体です。さぁ皆さま、準備はいいですか? ご唱和ください!
一同 ルネッサ〜ンス!!!
ひぐち君 なるほど、関西はやはり出汁感を重視するんですね。実は、この企画に臨むにあたって、事前に3種のソースを全部購入して研究してきたんですよ。
一同 おお!
柳 いいですね、気合十分! 頼りにしてますよ(笑)。
松本 このワイン(タラパカ)は、生地の小麦粉の風味に違和感なくすっと馴染みます。ラムネと合わせたときのような、どこか親しみが湧くようなノスタルジックなニュアンスが余韻に残りますね。
太田 ワインに酵母の香りがあるから、小麦粉と合うんでしょうね。泡の刺激で粉モノのボリュームをすっきりさせるのはもちろんですが、フレーバー側からのアプローチなら酵母感の有無も大事。そうなると、瓶内熟成しているタイプは可能性がありそうです。
柳 では、こちらもシャルドネ主体。オーストラリアの「ウィスパーズ ブリュット キュヴェ」はどうでしょう。先ほどよりもややドライな印象で、僕はこれもイイ組み合わせだと思うなぁ。
髙橋 私も好きです。やはり、ソースの甘味や具材の風味に負けないしっかりした果実味は外せない要素ですね。キャベツの甘味もより生きてくると思います。
ひぐち君 こうして何種類か比較して合わせてみると、果実味と程よいコク、酸は必須条件。ただ、ニュートラルなタイプの方がしっくりきませんか? あまりアロマティックな品種だと、ワインが味わいを支配してしまう気がします。
柳 確かにね! さて、ビール感覚で風味を切って洗い流す発想ではマリアージュまでには至らず、つまらないかと思ったけど、こうして試してみると美味しいね。ワイン側の主張を細かくくみ取るという視点抜きにすれば、大いにアリな組み合わせだね。
柳 その通り! ただし、アロマティックな品種は避けた方が◎!
結果発表:スパークリング白のベストマッチは?
「スパークリング(白)」には「関西お好み焼」×甘味と酸味、出汁の旨みの強い関西の味わい「お好み焼たべたい!お好みソース」がベストマッチの組み合わせ。ソースや具材の風味に負けないしっかり太めの果実味を持つワインがイチオシ。さらに、酵母由来のフレーバーも備えていれば、生地の粉の風味と香ばしさにも自然に寄り添う。お好み焼をラムネと合わせる駄菓子的な感覚なら、甘味のあるタイプも好相性だが、主張の強いアロマティックな品種は避けるのがべター。
輸入元:リードオフジャパン
製造元:ビニャ・タラパカ
タラパカ スパークリング ブリュット
1874年チリ、マイポヴァレーに設立されたワイナリー。冷涼なカサブランカヴァレーで、手摘みで収穫されるシャルドネなどを主体に造る。醸造にはフランス、シャンパーニュ地方の厳選された酵母を使用。リンゴやグレープフルーツにイーストの香り。豊かなフルーツ香をすっきりした酸が引き締め、心地よい余韻へ。果実味がソースの旨みを受け止め、酵母の香りがお好み焼の生地、小麦粉とも好相性。また、生き生きとしたフレッシュ感が、キャベツの歯触りと心地よくマッチする。
輸入元:三国ワイン
製造元:イディル・ワイン
ウィスパーズ ブリュット キュヴェ
オーストラリア、ヴィクトリア州に本拠を構えるワイナリー。海の影響を強く受けた冷涼なエリアで栽培を行う。長い日照時間と涼しく乾燥した秋の好条件に恵まれた畑で収穫したブドウから、果実味たっぷりのワインを造る。シトラスやリンゴ、ライムストーン、白コショウの香り。芯のある太めの果実味がソースの甘味やコク、スパイス感にキャベツの甘味と良好なバランス。ドライなフィニッシュとスパークリングの刺激で食後に重さを残さず、さわやかな印象で締めくくる。