4つのビュッシュが登場
ショコラティエとして、パリに「JEAN-PAUL HÉVIN」のブランドが誕生したのは1988年のことなのだそうだ。
2018年は、そこから数えて30年の記念すべき年。ちなみに日本上陸は2002年の9月とのことで、つまりすでに15年になろうとしいている。創造性あふれるショコラで、いつも新鮮な楽しみをもたらしてくれるジャン=ポール・エヴァン氏だけに、筆者はこの長い歴史が意外だった。
その、ジャン=ポール・エヴァン氏が来日し、新作コレクションを発表した。2017-2018年のテーマは«Année Trente»。つまり自身のブランドの30周年と1930年代をかけている。
まずは年末年始といえば、のビュッシュから。ビュッシュは丸太、切り株、あるいは薪を意味するフランス語であると同時に、薪のように見えるお菓子を指し、クリスマスケーキの定番中の定番。ビュッシュ・ド・ノエルとも呼ばれる。ビュッシュは今回、4種類が発表された。
ビュッシュ ジェオメトリック。その外観は、オランダのデザイナー、ヘリット・トーマス・リートフェルトの代表作「赤と青の椅子」に強いインスピレーションを受けている。真四角なビュッシュは、ペルー産カカオとブナの木でスモークしたクリームのムースを、ケシの実のクルスティアン、アーモンドとカカオのビスキュイ、ローリエ風味のシブースト、ヘーゼルナッツのダコワーズが仕切って、ビルのような構造をしている。
ビュッシュ オクロック。その名のとおり、時計の形をしている。12時30分を指しているの30周年を記念しているから。ベルガモット風味のビスキュイを基部にしたマダガスカル産カカオのムースの中に、フランボワーズのジュレをのせたアーモンドのビスキュイと柚子のシブーストをのせたヘーゼルナッツのダコワーズが入り込んだ、複雑な構造をしている。
ビュッシュギャッツビー。エンパイアステートビルのエレベーターの鉄柵から着想を得ている。こちらはグルテンフリーのビスキュイ ショコラをベースとして、ビターチョコレートのムースによるビュッシュで、内部に、ヴァニラ風味のシブースト、栗とヘーゼルナッツのダコワーズ、そしてもう一度、グルテンフリーのビスキュイショコラが入っている。
ビュッシュ サン ジェルヴェ。サン ジェルヴェ レ ヴァンといえば、モンブランにほど近いフランスのウインタースポーツのメッカ。アイスのビュッシュで、ジャン=ポール・エヴァン氏が「好きすぎて食べすぎてしまう」という栗をふんだんにつかい、アーモンドのビスキュイの上に栗のパフェとアイスクリーム、全体をクレーム シャンティイが包む。残念ながら、発表会では画像しか登場しなかった。
そのほか、“ドロップ”と名付けられた、マカロンとボンボン ショコラも、登場している。バレンタインデーのしかけは、ジャン=ポール・エヴァン 30年の歴史をふりかえるようなものにしようとしている、とのことだけれど、手提げ袋については、シュールレアリズムやジョルジョ・デ・キリコなどの絵画をイメージしたようなものになっているので、これまた30年代イメージでもある。