新鮮で大胆でカラフル!
まことに通俗的ながら、フランス車にはフランスパンがよく似合う。自分で書いておいてなんですけど、どういう意味か? フランス車に乗っている人はフランスパンが好きそう、というような意味合いである。赤ワインとも相性がよさげだ。新型シトロエンC3もまたしかりである。だってフランス車だから。
さる6月末、フランス本国で新型C3が発表された。「新鮮で大胆でカラフルなBセグメント、5ドアのスーパーミニは、快適性と個性の面で新しい基準をこのセクターに提供する」というのがシトロエンの主張だ。
Bセグメントとかスーパーミニというのは、ヨーロッパで使われる自動車用語で、ルノー・ルーテシア(欧州名クリオ)やプジョー208、フォルクスワーゲン(VW)ポロ、日本車ではトヨタ・ヴィッツ(ヤリス)などがこれにあたる。
2002年に発売されたC3はこれまでに360万台が販売されたヒット作で、シトロエンの欧州での販売のおよそ5分の1を占める。にもかかわらず、14年ぶりに全面改良を受けた新型は先代の面影はほとんどない。愛嬌のあった先代に対して、新型は強さを押し出している。シトロエンのマークであるダブル・シェヴロンと上下2段のライトは最近の同ブランド各車に共通する。サイドにはC4カクタスで用いられたAirbump®(ボディ保護を兼ねた樹脂製パネル)を採用することで、SUV風に仕立てたところに新しさがある。
個性化、パーソナライゼーションの決め手として、2トーン・カラーがオプションで用意されている。ボディ・カラーが9色、ルーフは白、黒、赤の3色ある。単色を含めて、36通りあるということだ。オプションの2トーン・カラーを選んだ場合、フォグ・ライト、ドア・ミラー、リア・クォーター・パネル、それにAirbump®のパネルにもルーフと同じ色が差し色として入る。
ボディ・サイズは5cm弱長くなるだけで、先代とほとんど変わらない。目立つのは全高が60mmほど低くなっていることだ。ドライバーの頭上の後ろまでフロント・ガラスが続いていた先代の特徴的なデザインは、継承しなかった。残念な気もするけれど、正直、あのゼニス・フロント・ウィンドウにあまりメリットはなかった。だって見えすぎて落ち着かなかったり、太陽がまぶしかったりで、天井のブラインドを閉じている時間の方が長かったから。
室内のデザインは、色と内装の素材の組み合わせ違いが4種類用意されていて、そこから選ぶことができる。いずれも、旅とホーム・インテリアからインスピレーションを得たもので、その狙いはドライバーに家の延長であるように感じてもらうことだという。モダニストのブランドであるシトロエンのデザイナーが考えるシックなフランスの家だ。
外装色が36種類、内装が4種類あるので、外装×内装の組み合わせは144通りの可能性があることになる。これが個性化のキモだ。日本市場でどういう販売方法がとられるかは不明ながら、MINIがこういったビスポーク化で成功しているのだから、シトロエン・ジャポンとしても本国と同じシステムをとりたいところだろう。
パワートレインはプジョー・シトロエンの手持ちの中から最新仕様の1.2ℓ3気筒が3種類、ディーゼルが2種類選ばれている。日本向けは、兄弟車のプジョー208と同じ82psの1.2ℓ3気筒+5MTと、110psの同ターボ+6ATとなると予想される(実際には、後者のみ。2017年8月4日追記)。足回りの機械部分はプジョーと同じでも味付けは異なっている。新型C3は典型的シトロエンのバネ・セッティングだというから大いに期待できる。快適性が売りのクルマでもある。
装備面での新機軸は、ConnectedCAM Citroen™と名付けられたカメラである。これでSNSに写真、あるいは動画を投稿して楽しんでもらおう、というのだ。120度の広角、200万ピクセルのこのカメラはリア・ビュー・ミラーの後ろ側に取り付けられていて、GPSにより位置情報を得ながら前方をつねに見ている。素早く押すと写真、長押しすると20秒までの動画が撮れる。で、このデータを「ConnectedCAM Citroen™」というアプリを通じてSNSに投稿する。ようするに自動車のカメラ付きスマホ化だ。事故の際にはドライブ・レコーダーとしても使える。シトロエンは今後各車に設定する計画だ。各社たちまち右へ習いそうなアイディアである。
新型C3は秋にパリで開かれる自動車ショウ、通称パリ・サロンで正式発表され、早ければ来年上陸すると予想される。その頃にはパリの路上を走り回っているに違いない。華の都、恋の都パリ、行ってみたいですね〜。