
スパイスがカギ!
ここで終わってしまっては、WINE-WHAT!?ではない。
筆者は発表会を終えて、記者の質問ぜめになっているジャン=ポール・エヴァン氏をなんとかつかまえて、まったくストレートに長年ファンであることを打ち明けるとともに、「ショコラとワインって合うんですか?」とたずねてみた。
以下がそれにつづくジャン=ポール・エヴァン氏とのやりとりである。
「ショコラとワイン? それは合いますよ」
どのあたりが?
「スパイスがカギなんです。コート・デュ・ローヌ、あるいはブルゴーニュのワインのいくつかは、スパイス感がありますよね。これは合います。甘みのあるワインは、合いにくいですね。コート・デュ・ローヌのワインは甘くない。それも、ショコラと相性がいい理由でしょう。ただ、甘みのあるワイン、たとえばヴァニラっぽい香りのするものでも、スパイス感があれば、悪くないですよ」
それはショコラが甘いこととも関係があるのですか?
「いいですか、おなじようにシュクレ(フランス語では、シュクレは「甘い」という意味と「砂糖が入った」という意味をもつ)といっても、ショコラのシュクレとワインのシュクレはまったく別物です。ワインの甘みは酸味とともに口の中に繊細な味わいをもたらします。ショコラのシュクレは大食(グルマンディーズ)のよろこびです」
甘いものは暖かく明るい南からやってくる。甘いものは薄暗く寒いヨーロッパのひとびとからすれば、遠い国への憧れであり、豊かさの象徴でもある。自然のめぐみにあふれる南国には、たくさんの食べ物がある。甘いものを食べることは、そんな遠い南の国におもいを馳せ、悦楽にひたることである。ゆえにショコラのシュクレはグルマンディーズのよろこびなのだ、と筆者は解釈した。そして、ジャン=ポール・エヴァン氏への尊敬の念をあらたにするのであったーー
マカロン“ドロップ”とボンボン ショコラ“ドロップ”。スパイス感のあるワインとともに、グルマンディーズのよろこびを!