
プリンス・オブ・ブロードウェイ
退団後の初舞台は「プリンス・オブ・ブロードウェイ」。プロデューサー・演出家として「ウェスト・サイド・ストーリー」や「オペラ座の怪人」などの名作を手掛けた巨匠ハロルド・プリンス氏の新作に、唯一の日本人キャストとして参加するという大役だった。
それに先駆け、約3カ月間の語学とダンスレッスンのためニューヨークへ。
「宝塚時代は、常にファンの方や仲間に囲まれていた。いかに恵まれていたかを改めて感じました。NYでは退団後の自分と向き合い、さらに不安とも向き合うことになりました」。
そのときの心情を詞に込めたのが、2月24日リリースのCD/DVDに収録されたバラード曲「希望の空」だ。
「在籍時から、作詞は手掛けていました。宝塚やファンの方への感謝はこれまでも伝えてきたので今回どうしようかと悩んでいたら、『プリンス・オブ・ブロードウェイ』の東京公演が終わり、大阪公演までの数日間に突然テーマが浮かび、一気に書き上げたんです」。
前述の舞台キャストに抜擢された歓喜から価値観が激変したNY生活を経て、幸せなステージに立つまでの数カ月、悩み苦しんだことを隠さずに表現した。
「けっこう気弱なことも書いているから、ファンの方が聞いたら心配するかも(笑)。でも、またここから堂々と前を向いて歩き出す、という気持ちがこもっています」。
実は、柚希さんは自他共に認めるワイン好き。
「赤・白・ロゼ……それからシャンパーニュも! ここまで好きなのだから、いつかワインの資格を取りたい。しっかりめの赤ワインが好きだけど、料理とのバランスで軽めの赤がすごく美味しかったり、発見がいっぱいある。最近はワインリストを見て、メジャー系ブドウ品種や有名な造り手以外のものをオーダーしてみたりするんです。期待していた味じゃなくても、その個性もまたおもしろいかなって(笑)」。
ワインについては饒舌。自らについては、質問をしっかり受け止めて精一杯の気持ちを言葉にしようとする。その独特な間合いや表情、視線の動き、おっとりとした関西弁は無垢な少女のように可愛らしい。ファンが「ちえちゃん!」と親しみを込めて愛称で呼ぶ理由がよくわかる。
3月に退団後初のソロコンサートを控えている。新たな舞台に立ち、ファンとともに感動を積み重ねるごとに、柚希礼音のレジェンドは紡がれていくに違いない。