上流社会
今回はパリを散歩しながらフランス人について思いを巡らしました。
パリでよく耳にする、BCBG(ベセベジェ)という言葉があります。これは、Bon Chic Bon Genreの略で、日本語ならば「シックで趣味のよい階級」という言い回しかな? 簡単に言うと「上流社会……」。
彼等はニューリッチや成金が大嫌い。下品で趣味の悪い人達も大嫌い。パリの16区・17区やヌイイに住んでいて、とてもひかえめでクールな印象を与える、だけど、お金持ちとは限
らない、そういうジャンルの人たちのことを指しています。そう、サルコジ元大統領は、はじめはヌイイの市長さんでした。
そして、Gauche Cavier(ゴーシュキャビア)と言う言葉があります。直訳すると「左派のキャビア」。パリ6区はサンジェルマン・デ・プレ、左岸の住人で、思想は左でもキャビアを食べてるという人種です。英語で言うところの、champagne socialist、シャンペンを飲む社会主義者にあたるのでしょうね。
パリ6区はもともとサルトルとヴォヴォワール、アンドレ・ブルトンなどがたむろしていた、カフェもあり、文京地区特有のインテレクチュアルな香りがするのですが、パリ一高い地価を誇っていて、住民はかなりのスノッブです。
BOBO(ボボ)
ここまでは、今迄のパリ。パリはいつでも、変化をしながら、ふくれあがっていくのです。いつの時代も新しいアイディアと美意識と共に変化をとげてきました。
パリは小さい。それこそ山の手線圏内に、パリ20区すべてが収まってしまうと言っても言い過ぎではありません。そのため、パリ中心部の地価の沸騰もあって、外側へと開発は進んでいきました。
20年位前には、雑貨屋の店先にはオクラやタロイモが並び、クスクスやアフリカンの香辛料が漂っていた街角が、みるみるうちにお洒落で小粋な地区へと変貌していきました。今や10区、11区はまったくの都心になってしまいました。
18区、19区、20区までも変貌が広がり、前回紹介したビュットショーモン公園のあたりも、あっと言う間に、おしゃれなブティック、こじゃれたカフェ、16区と同じチェーン店の高級肉や、デリカテッセン、チーズ屋が並び、禁酒のイスラム教地区だった所に軒並みワイン専門店ができてしまったのです。
そういった地区の人々からBoboと言う言葉が現れました。これはBourgeois Bohemianの略で「ブルジョワのボヘミアン」という意味です。プッチーニのオペラ、ボエームの屋根裏生活など貧乏な芸術家とはうって変っての高級思考のボヘミアンたちです。若くて教養があり、本物志向。ボヘミアンなので芸術に敏感で創作的な事が大好き。
彼等の職業は、建築家、ジャーナリスト、作家、作曲家、IT関係やシネストなどで、生活水準は高い方。有機野菜を好み、決して大きなスーパーマーケットなどでは買い物はしない、けっこう気取り屋で考え方は現実離れしています。
それにしても、BCBGにしろ、Gauche CavierにしろBOBOにしろ、フランス人特有のスノッブさには、あきれるのを通り越して、感心してしまうのです。