
クルマは好きだけれど、日本では立場上、自由に運転できない辻本。とはいえ、ケンゾー エステイトであれば話は別だ。写真のMINI Roadster(ミニ ロードスター)は、なんと、あのマーグリット・モンダヴィから引き継いだもの
人生の愉しみとは
果たして、辻本という男にプライベートの時間はあるのだろうか。
聞くと、
彼はニヤリと笑い、「今、この取材を受けている時間が私のプライベート」と返してきた。
「ケンゾー エステイトの仕事はもはや趣味みたいなもの。もちろん利益は出さなきゃいけませんがね、感覚的にはゴルフや料理をするのとおんなじ。いや、それ以上かもしれない。今、生きていて一番楽しいと思うのは何をしているときか? と聞かれたら、間違いなく『仕事』って答えるだろうからね」
ときどき10時間ぐらい眠れれば、長期休暇も必要ないという。
「休んでいる間に時代の波に乗り遅れたくない。ワインの世界はそれほど変わることはないけれど、ゲームの方は日進月歩。5年でどんどん進化する。だから、常に先を見据えて動き続けていなければ」
どうやら、辻本は根っからの仕事人間だ。この世には「快楽主義」という思想があるが、彼にとって「快楽」とは、楽しければそれでいいというものではない。利益を生み出してこそ快楽となるのだろう。
インタビューの最後、「ゆっくり天国へ行かせてもらえたらいいんだけど」とおどけて見せる辻本だったが、その目には先々を見据えた輝きが宿っている。それを見ていたら、ふと、「情熱」の二文字が鮮明に浮かんだ。