
結婚式の際はチャペルにもなる多目的ホール。
山田平安堂とOKANO
最上階の13階をほぼ占めるのは「THE GRAND GINZA」という、最大収容人数500名に達するレストランである。
正確にいうと、収容人数110名のレストラン「ザ・グラン47」、同104名のラウンジ「ザ・グラン ラウンジ」、12席限定でシェフが対面で対応するカウンターのみの空間のレストラン「銀座 極ーKIWAMIー」、48名が入れるバー「ザ・グラン・バー」のほか、多目的ホール、VIPルーム、バンケットの7つの施設からなる。収容人数80名の多目的ホールは結婚式のセレモニースペースとしても活用可能だ。
運営しているバリューマネジメントは京都・大阪・兵庫で文化財に指定されるような歴史的建造物を、宿泊施設やレストラン、結婚式場などに活用している、2005年創業の会社で、自分たちの事業はこれらの建造物を後世に残すための取り組みであるという。
地下に能楽堂があるかと思えば、上に結婚式がある。上からも下からも、「♪高砂や この浦舟に帆をあげて」が聴こえては来ないにしても、演奏されることになるのがGINZA SIXなのだ。まことにおめでたい施設である。
ということで、和のお店を2店紹介したい。
左上の枯れ盆栽セットとその手前の小箱はGINZA SIX限定商品。
まず、4階にある「山田平安堂」である。1919年に日本橋で創業した宮内庁御用達拝命の漆器専門店、と聞くといかにもカタそうだけれど、「漆器を身近に、もっと楽しく」をモットーにする4代目・山田健太代表取締役の一押しは「枯れ盆栽セット」270,000円である。
「枯れ盆栽」というものがいつからあるかは定かではないけれど、山田さんご自身は1年ほど前にその存在を知った。「盆栽は何度も枯らしちゃったけど、これは最初から枯れているから手間いらず。むしろ手間をかけちゃダメ」と4代目は楽しげに語った。
めし椀は「(お客さまに)むりやり押し込んでも喜んでいただける」という。木だから軽いし、熱くならない。汁椀は当たり前だけれど、漆のめし椀というのはちょっと意表をついている。伝統技法を使いつつ、伝統にこだわらない新しい使い方を提案しているのがこちらのお店なのだ。
なお、GSIX限定ロゴ入りの、金平糖とセットになった小箱(3,000円)と末広鉢「日月」(5,000円)は、それぞれ70個程度しかつくっていないそうなので、お早めに。
そのお隣のOKANO(オカノ)は、創業120年の福岡の着物製作所、株式会社岡野がGINZA SIXに旗艦店として出店した「メッセージストア」と位置づけられている。開店を記念しての限定商品は、現代アーティストの小松美羽とのコラボレーションで生まれたスカーフ「美しい羽 02 GINZA MADARA」である。博多織で培った技術を使って、エルメスのスカーフ以上のものをつくっている、と同社の5代目・岡野博一社長は自負する。
このように、GINZA SIXの中には日本の伝統技術を活かしながら、新しいことに挑むエネルギーが満ちている。草間彌生のカボチャのバルーンも上から見ている。ショッピングや食事や贅沢なモノを体験すべく訪れる人たちの情念が渦巻いて、この銀色の四角い箱はほとんど霊的な空間になるといってよいだろう。ここは銀座に出現した現代の神殿である。
お伊勢参りならぬ銀座参りが大ブームになるに違いない。