検証9 ウニ
ネタ解説
冬に向け、より身がしまってコクと香りが強くなるウニ。本日登場したのは、ロシア産の「ムラサキウニ」だ。バフンウニより身がやや淡い色をしており、その味わいは上品。検証の結果、赤ワインのタンニンとはマッチしないが、完熟したブドウの甘やかさを持つ白ワインとリッチに相乗するという結論に。
ふくよか&リッチな白で
まろやかさが増幅
柳 いよいよ危険な領域に突入しましたね! 魅惑の「プリン体パラダイス」こと、めくるめく魚卵ワールドです。サカナ本体とは全然違う香とかコクがあるから、難しいけれど検証し甲斐があると思いますよ。
鈴木 素材だけですでに完成された味わいですよね。優れたシェフが作り上げたソースみたいな……。さて僕がジャッジを担当したなかでは、「アルザス ゲヴュルツトラミネール」がダントツ一番でした。完熟した果実の甘味と旨み、とろみがあるかのようなワインの質感がウニのクリーミーさとマッチします。かといってボリュームが出過ぎることもなく、ほどよいさっぱり感も。海苔の香りもクリアに立ちます。
太田 ウニと聞くと再び道産子魂に火が付きます! ミルクのようなコクと卵黄のような濃密さ。磯の香りはあるけれど、極端にワインとぶつかることもない。ただ、一段と昇華させるならほどよい残糖とウニの甘味の方向性が一致すると思ってセレクトしてみました。
松木 クロ・ウルラ「ジュランソン・セック キュヴェマリー」も同じ原理で合います。こちらの場合、さらにもう一貫食べちゃおうかなっていう心地よい軽やかさが出る。
君嶋屋
クロ・ウルラ
ジュランソン・セック キュヴェマリー2012
●生産国/地域:フランス/シュッドウエスト
●品種:グロマンサン、クルビュ
●価格:2,765円
【太田賢一 推薦コメント】
爽やかでキレが良い白ワインばかりでは、多彩な展開が期待できない。このワインは酸が穏やかで、完熟したフルーツやイースト香りがある。魚の脂肪酸とボリューム感のある白ワインを当てて、スッキリではなくリッチな相乗が叶うのではないかと予想しています。
検証担当:松木リエ
鈴木 ウニの香りをうまく処理してまとめてくれるからでしょうね。
富田 どちらも捨てがたいけれど、私はゲヴェルツ派かな。このリッチさがクセになりそう!
柳 締めで合わせるなら、ゲヴェルツじゃないかな? コース料理ではないけれど、お任せでも淡泊な白身からスタートして脂のある赤身に進むでしょ。そうすると、最後はかんぴょう巻きとか穴子など、甘めがほしくなる。このワインがあればウニで締めくくるのもありじゃないかな。
松木 何だかものすごくツウっぽいオーダーの仕方。寿司の名店からも一目置かれて、すぐに上客扱いされそうですね(笑)。
鈴木 あっ! 2本とも高評価は太田さんセレクト。道産子のディープなウニ愛があってこその快挙(笑)。
太田 ええ、ウニでは負けられないという意地がありますから!
富田 意外に生臭さは問題にならなかったけれど、海苔の存在って大きくないですか? 軍艦なので海苔の消臭効果(ジエチルジスルフィド)が効いているかも。
太田 ワインと合わせるならウニ丼じゃなくて軍艦を選択しましょう!
富田 赤ワインのポリフェノールにも同様の効果はあるけれど、そうするとちょっとワインの強さが突出してバランスを崩してしまう。まろやかかつふくよかな白っていう方が、互いの可能性を生かせますね。
鈴木 今更なんですが、富田さんのキャラがますますわからなくなりました(笑)。文系の自分からすると、これがリケジョなのかなっていう鋭い理論展開と知識の深さ。
太田 僕もいろいろ教えてもらっています。
柳 でも、ダジャレ術だけは学ばないでね、二人揃ったらその破壊力に誰も対応できなくなるから(笑)。