
ニコラ・フィアット
ブリュット ブラン・ド・ブラン NV
~ inspired by HOKUSAI ~
2016年産をベースにアッサンブラージュ。溌剌とした若さを湛え、スイカズラや柚子に似た柑橘が香る。ボトルデザインは北斎の冨嶽三十六景「神奈川沖浪裏」がモチーフ。
寿司がシャンパーニュに合う、は間違いだ!
シャンパーニュには鮨がよく似合う。誤解されがちだが、これは一般論ではない。あくまで、「鮨をよく知るチーフワインメーカーが率いるメゾンのシャンパーニュ」と「ハイセンスな鮨」とのペアリングにおいて、初めて堂々と語れるセオリーだ。
フランス国内のシャンパーニュ販売量ナンバー1を誇るニコラ・フィアットが、日本の食文化を強く意識した新シャンパーニュ「ブリュット ブラン・ド・ブラン NV〜inspired by HOKUSAI 〜」を10月にリリースした。
チーフワインメーカーのギョーム・ロフィアンさんは来日経験が豊富で、大の和食好き。繊細な和食に合うシャンパーニュを考察した結果、このスタイルに行き着いたという。特定のヴィンテージに限定されないシャルドネ100%のシャンパーニュは、ニコラ・フィアットにとって初めての試み。あえてNVとしたのは、繊細な和食と調和するバランスを探った上での最良の選択である。
限定2万本、入手できるのは日本国内のみ。しかも、ボトルは葛飾北斎の描いた大海原に包まれている。さぞかし、海外のシャンパーニュ愛好家のみならず浮世絵好事家は羨望のまなざしを送っているであろう。
ちょうど今年2020年は、北斎の生誕260周年にあたる。強調したい対象物を際立たせる大胆な遠近法、「北斎ブルー」と呼ばれる鮮烈な青色が、ゴッホをはじめフランスの著名な画家たちへ強烈な印象を残したことはよく知られた話だ。北斎の描いた海の波をベースにゴールドのラインがあしらわれ、ブルーのグラデーションも美しいデザイン・ボトル。時代を超え日本の絵画とフランスのシャンパーニュという2つの芸術が融合した逸品なのである。
数々の銘醸ワインを扱い、シャンパーニュへの見識も深い「鮨屋 小野」の小野淳平さんは、白木のカウンター上に置くとさらに見映えのする北斎ボトルを前にこう語る。
時折、パリやミラノへも出張し腕を振るう小野淳平さん。「誕生日などの記念日に来店されるお客様は多い。特別なときには、やはりこの北斎ボトルくらい特別なシャンパーニュで乾杯したいですよね」
「ほかのシャンパーニュと比べると、やわらかくて繊細。泡もきめ細かいですね。この主張しすぎないやさしい味わいが和食を引き立ててくれます。とくに塩のきいたもの、ポン酢で味付けしたものは相性がいい。すばらしいシャンパーニュです」
ネタの風味を消さぬよう、日頃から仕込みは塩や酢を使い必要最小限に留めておく小野さんにとって、端正なシャンパーニュの存在は心強い。
今回、小野さんがNicolas Feuillatte Brut Blanc de Blancs NV ~ inspired by HOKUSAI ~に合わせた握り2貫
平目
肉厚の平目を昆布で締めたのち、玉ねぎのすりおろし汁を僅かに加えた白醤油に漬けたもの。玉ねぎの風味で、白身魚を噛みしめた瞬間の香りに深みが増す。
なかずみ
なかずみとは、出世魚で時期により名前の変わる小肌のこと。しんこよりは大きく力強い味わいのため、塩でしっかり締めてから、酢に漬ける。
平目の握りは、ニコラ・フィアットならではの気品あふれる泡が白身魚の旨味を適度に残しつつ、最後はさわやかな口中に。小ぶりな小肌握りは、酢漬けのニュアンスがブラン・ド・ブランのキリリとした酸と高い親和性を見せる。濃厚な出汁と米の甘み、チーズのコクが混然一体となった特製リゾットは、塩気がシャンパーニュのミネラル感と呼応。
ONOリゾット
ランチコースの〆に登場。まぐろのカマやヒレを大鍋でグツグツ煮込んだ白湯状のブイヨンを用い、柚子胡椒とパルミッジャーノ・レッジャーノ36カ月熟成をあしらう。
生魚、醤油、酢、昆布、米……と日本ならではの食材を相手に、「ブリュット ブラン・ド・ブラン NV」はストライク・ゾーンの広さを見せつけてくれたのだった。