検証5 ソリレス
中臀筋と呼ばれる股関節にある希少部位で、腿肉を切り取ると肋骨についたまま忘れ去られることが多い。皿が下げられた時、この部位が残ってることに気づいた厨房の料理人が、「Le Sot l’y laisse」(ル・ソ・リ・レス=愚か者はそれを残す)と言ったことに因むとか。塩胡椒にバルサミコ醤油を少しだけ。
旨味を引き出す補完的なマリアージュ
香ばしさとアロマの一致をイメージ
土田 ソリレスは簡単だな。
柳 どうして?
土田 でもわりとキャンティ・クラッシコなど、イタリアのサンジョヴェーゼを置いてる焼き鳥屋さんって多いと思うけど。
瀬川 私もサンジョヴェーゼはソリレスに寄り添ってるなと思いました。ただ穏やかなペアリングで、もうひとつパンチが欲しい気もします。その点ジゴンダス(7)は、ワインのスパイシーさがお肉の旨味を引き出してくれて、またメンシア(8)も、ワインがまるでタレのような役目を果たすので、両方とも補完的なマリアージュとしてとても面白かったです。
太田 白はゲミシュターサッツ(2)ですね。ソレリスの香ばしさとアロマの時点で一致していて、口に運ぶと互いの旨味が一緒に走り出すような印象でよかったですね。ジゴンダス(7)は甘いスパイスの香りが強すぎる感じがして、赤はサンジョヴェーゼ(3)のほうが好印象でした。
柳 瀬川さんと太田さんは、分析的には似てるけど、出した結論が正反対で面白いな。
太田 男女の好みの違いかも。
土田 おっ、ジェンダー問題?
和田 僕はソリレスに合うワインとしてプラーガー(10)を選んだんですが、試してみたらなんだかぼけてた。おかしいと思い、冷えたプラーガーをもう一本開けてみたらこれがばっちり。ソリレスの塩や焦げた皮の風味をピュアに引き出してくれました。白ワインは温度が大事ですね。
柳 そう、僕もプラーガーに期待して、悪くはないけど、今ひとつピンときませんでした。
和田 この冷えたのでやってみて!
柳 あっ、お肉がもうない(笑)。
ソリレス×10本採点結果の上位2本
検証6 ツクネ
奥久慈軍鶏をミンチにし、潰した黒胡椒、山椒をほんの少し、お麩の粉末、冷やしたスープから精製した油脂を混ぜて練ったもの。
肉の味かタレの風味か
焦げと肉汁とのバランスも考えたい
和田 ツクネにワインを合わせる時、考えなきゃいけないのは、外側の味か、内側の味か。タレの焼け焦げた風味に合わせるならサンジョヴェーゼ(3)やジゴンダス(7)がいいかな。噛み締めて出てくる肉汁の味にはテラ・モントーサ(5)。ゲミシュターサッツ(2)もよさそう。
土田 ツクネはやっぱりその店の個性が出るよね。
太田 このワインは少しペトロールを強めに感じますけど、それが逆に心地よい。
柳 う~ん、プラーガー(10)はワインの硬質な部分とツクネの柔らかな肉質とが、初めて解離してしまった。テラ・モントーサ(5)はね、ピンポイントならほかにも選択肢があると思うんだけど、コースの流れの中でこのワインとツクネが出会った時に、意外に引きつけ合うものを感じるな。
瀬川 ツクネのタレの香ばしさやスパイスの風味が同調する、ジゴンダス(7)はいいですよ。余韻が長く続きます。
太田 これまで重心低めだったゲミシュターサッツ(2)が軽快に感じられ、山椒のピリッとしたフレーバーもあって、すごくアフターの心地がよい組み合わせです。それからニュージーランドのサンジョヴェーゼ(3)は、ワインのまろやかさと肉質がマッチしていて面白かった。童心に返ってにっこりしてしまう、癒し系の組み合わせでしたね。
柳 これがキャンティだとまた結果が違う?
太田 でしょうね。
瀬川 やさしいワインですからね。旨味もありますし。
太田 ピノ・ノワールと見紛うばかりのルビー色で、抽出も穏やかな。
柳 「そだね~」って感じ?
土田 そだね~。
ツクネ×10本採点結果の上位2本