「Twendee X」は脳梗塞にも効く!?

スパリブの考察 第10回 阿部康二 岡山大学 脳神経内科 教授

今回のゲストは、岡山大学脳神経内科学の阿部康二教授です。阿部先生は脳梗塞やALS(筋萎縮性側索硬化症)に保険適応があり、酸化ストレスをおさえる「エダラボン」という点滴薬の開発者です。
脳神経内科領域での酸化ストレス研究の第一人者の阿部先生と、スパリブの開発者、犬房春彦先生の対談のテーマは「ワインで健康」です。
「WINE-WHAT!?」2016年9月号より。

脳梗塞体積と運動障害が半減

阿部 私は昔からお酒が好きで、特にワインは身体によいということもあり、ワインの基本を勉強したくて、1996年に日本ソムリエ協会に入会させていただいたんです。当時の会員のほとんどはワインビジネスにかかわっておられる方ばかりで、大学病院勤務で、しかも真面目と思われている(?)神経内科医は私だけでした(笑)。ソムリエ協会の入会申請書は勤務先責任者の署名捺印が必要とされていて、東北大学の当時の上司の教授にお願いに行きましたら、「ワイン?」と苦笑いしながら署名捺印いただいたのを覚えています(冷汗)。

岡山大学 脳神経内科 教授
阿部康二
(あべ・こうじ)先生

ーー 犬房先生はワインの資格をなにかお持ちですか?

犬房 私はワインを飲むだけなので「ノムリエ」と称しております(笑)。

ーー 犬房先生と阿部先生はいつからお知り合いですか?

犬房 2年ほど前に「日本酸化ストレス学会」で、「スパリブ」やスパリブの研究から派生した抗酸化配合剤「Twendee X(以下TWX)」 の抗酸化効果を、私の教室から発表したのです。私の発表が終わってすぐに阿部先生がおいでになったのです。

阿部 犬房先生がフランスのICDDという会社に測定依頼されたデータで、TWXが強力な抗酸化効果だけでなく、酸化ストレスに抵抗する還元力になるSODという酵素を140%上昇させる、というのがありました。これはとんでもない数値で、脳神経疾患に使えば必ず効果があると直感したのです。そこで早速、犬房先生に共同研究をお願いしまして、私の教室のマウス脳梗塞モデルにTWXを2週間投与しました。すると脳梗塞体積と運動障害が半減するという、とても興味深い結果が出ました。いま論文投稿の準備中です。

ーー 脳梗塞のダメージが半分になるというのはすごいですね。ほかにはどのような病気に効果があると思われますか?

阿部 脳神経疾患は多かれ少なかれ、必ず酸化ストレスが関係しています。私はアルツハイマー病などの認知症の予防にTWXが有効だと考えています。認知症予防学会では認知症予防効果が期待できる食品やサプリメントを患者さんへ投与するエビデンス創出臨床研究が来年から始まります。その有力候補としてTWXを推薦させていただき、犬房先生にはこのエビデンス創出委員にもご就任をお願いしました。

ーー 阿部先生、せっかくの機会ですので認知症に関して少し教えてください。

阿部 認知症にはアルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症など、いくつかのタイプがあります。一般に認知症は脳だけの病気だと思われていますが、最近の研究では全身疾患の反映として脳症状が出ているのが認知症だということがわかってきました。アルツハイマー病は、全身が酸化ストレスにさらされるメタボリック症候群や糖尿病の患者さんでは発生率が2〜4倍になりますし、脳卒中を起こして3年後ぐらいで4分の1の患者さんで起こってくる血管性認知症は脳病変の炎症性酸化ストレスが高い状態なっています。ですから認知症のリスクが高い方に強力な抗酸化剤を飲んでいただくことで予防ができると期待しています。

防腐剤なしのワインは身体によいか?

ーー TWXの臨床研究結果が待ち遠しいですね。ワインは認知症予防になりませんか?

犬房 ワインに関しては最近、抗酸化効果の実験をしました。日本ソムリエ協会現会長の田崎真也さんと1984年からの知り合いなのですが、3年ほど前に「防腐剤である亜硫酸塩が入っていないワインが体によいかどうか医学的データを出してほしい」と頼まれたことがきっかけです。

阿部 田崎さんはなぜ亜硫酸塩の添加なしでワインが健康によいかどうか知りたかったのですか?

岐阜大学 生命科学総合研究支援センター 抗酸化研究部門 特任教授 犬房春彦(いぬふさ・はるひこ)先生

犬房 実は田崎さんは、亜硫酸塩を使わないワインを飲むとあまり美味しく感じられないそうです。人間は体によいものなら美味しく感じるはずだから、もしかすると反対ではないかと思ったそうです。この宿題をいただいてワインの亜硫酸塩、ポリフェノール、抗酸化力の関係を測定しました。結果(表1)を見てください。

2013年に試験的にドイツのワイナリーで作っていただいた亜硫酸塩を入れなかった赤ワインはポリフェノールが少なく、抗酸化力も低い。コントロールとして測定したブルゴーニュの2009年赤ワインは亜硫酸も多く残っていますが、ポリフェノールはドイツ赤ワインの倍で、抗酸化力もずば抜けて高い数値でした。抗酸化力の指標に使ったOXY吸着テストは、次亜塩素酸(通称「塩素」。キッチンで使う漂白剤の原料)の消去能力を測定していますが、イタリアではワインのクオリティ・コントロールにも使われています。総亜硫酸濃度と抗酸化力の数値をグラフにしてみますと、わずか3データしかないのですが、相関係数が0.97と高い値です(表2)。

表1

表2

ーー 田崎さんの味覚による直観、そのままの結果ですね。田崎真也、恐るべしです。

阿部 たいへん興味深い実験結果ですね。亜硫酸塩はワインに添加するとポリフェノールなどと結合してその毒性を消してくれますし、ワインの劣化も防いでくれます。防腐剤と聞いただけで毛嫌いする方がいますが、ワインの場合は健康によいものなのですね。ポリフェノールがたくさん入っていて、抗酸化力のあるワインをたとえば毎日2〜3杯飲むと健康によいと考えられますし、海外論文でも長生きできると書いてあります。その点では防腐剤である亜硫酸塩を使ってワインの劣化を防いだ赤ワインを飲むことは認知症予防にも有効ではないかと思えます。もちろんワインの飲み過ぎはアルコール自体の酸化ストレスで認知症になりますから要注意です(笑)。

犬房 抗酸化力があるといわれているポリフェノールで、たとえばレスベラトロールは試験管の中や培養細胞では抗酸化効果が出るのですが、動物やヒトでは反対に酸化ストレスを増やしてしまいます。

ーーそうすると、レスベラトロールやピクノジェノールをサプリメントとして大量に飲まれている方は期待している抗酸化効果がないのですね?

阿部 その点、ワインは多くの種類のポリフェノールが入っていますし、毎日2〜3杯飲むのは少量ですから、抗酸化効果が期待できます。認知症の予防効果については今後の課題ですが、一般論でいうと健康によいですね。

犬房 問題はワインがおいしいので、ついつい飲み過ぎてしまうことです。

阿部 アルコールの健康被害はスパリブである程度コントロールできるでしょう。

ーー ワイン好きには勉強になりました。貴重なお話、ありがとうございました。読者のみなさまも、抗酸化力のあるワインを選んで、健康を維持しましょう。

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不肖ヤマダヤスシ編集長
北海道札幌生まれの道産子。いつも目の前のことだけを考えている。いまこのときを切り抜ければ、人生はなんとかなる! 善人なをもて往生をとぐいはんや悪人をや。

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