グランヴァン・ソースの会
ーー おふたりはいつ知り合われたのですか?
門上 犬房先生とは、2002年の8月に岐阜の四川料理店「開化亭」で初めてお目にかかって、それ以来、おつきあいさせていただいています。ここ5〜6年は「グランヴァン・ソースの会」という犬房先生が始めた、とんでもない会を一緒に開いています。
犬房 私は昔からムートン・ロスチャイルドが大好きで、死ぬまでに一度でいいからムートンを使った赤ワインソースの料理を食べてみたいと思っていました。そこで、6年ほど前に大阪本町のレストラン「カランドリエ」でムートン・ソースを作っていただいて、門上さんはじめ6人ぐらいで食べたんです。1回きりと宣言していたんですが、あまりにも素晴らしい味だったんで参加者全員に「次回はいつ開くの?」と聞かれまして、レストランやワインを変えながら今も続いているんです。
ーー シャトー・ムートン・ロスチャイルドをソースに! それは贅沢すぎます。
門上 これはもう食べたことのある人にしかわからないんですが、素晴らしいワインをソースに使うと異次元の料理になるんですね。ワインの持つ底力が料理にも表れてくるとしかいえません。毎回異なるボルドーのグランヴァンを10人を超える関西の有名シェフたちにソースにしていただいて来ましたが、メルローが入ったサンテミリオンの赤ワインがまろやかさと香りなど、総合点で赤ワインソースには最高だと思っています。今いただいているドミニク・ブシェの「牛テール赤ワインソース煮込み」も非常に美味しく、ソースの香りからするとかなりよいワインをお使いだと推察します。
ーー 当然、合わせる赤ワインはソースにしたものと同じですね?
犬房 その場合もありますし、たとえば異なるブルゴーニュワインの時もあります。よい料理はいろんなワインとマッチングしますから。
弱いひとはアルコール代謝能力が1/16
ーー 門上さんは、ワインはどのぐらい飲まれますか?
門上 僕はもともとお酒に弱くて、ワインをグラス1杯飲んだら酔って眠くなって、料理の取材ができなくなるぐらいだったんです。本当は料理に合うお酒を飲みながら食べると、料理の味が引き立って、異なる味を経験できるのですが、それが難しかったんです。ところが、犬房先生の「スパリブ」を飲むようになってから、フランス料理ではシャンパン、白ワイン、赤ワイン、デザートワインと料理と合わせて楽しむことができるようになりました。やはりお酒が飲めることはよいことですね。
ーー 先ほども「スパリブ」を飲んでからワインを数杯召し上がっていますが、平気なようですね。犬房先生、お酒の弱い方は強い方と比べると、飲める量はどの程度ですか?
犬房 日本人の43%がいわゆるお酒が弱い方で2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)という酵素が遺伝的に部分欠落しています。このタイプの方ではアルコールが代謝したアセトアルデヒドという毒物の分解能力は強い方の1/16しかありません。ですから強い方がワイン1本飲めるとすると、その1/16の47mlで同じように酔ってしまう計算となります。
ーー 通常のグラス1杯を125mlとすると、お酒が弱い方にとってはワインボトル2.6本分に相当します。グラス1杯で酔っ払ってしまうのは当たり前ですね。
犬房 上のグラフはお酒が弱い門上さんと同じタイプ(ALDH2部分欠損)の方と、強い方を分けたアルコールとアセトアルデヒドのデータです。弱い方では強い方より相当高い値になっていますね。それでも「スパリブ」を飲んでおくと、飲酒後のアセトアルデヒドの上昇を有意に抑えることができています。
ーー 門上さん、健康対策はなにかやっておられますか?
門上 食べる量を減らすことはなかなかできないので、可能な限り歩くことにしています。とはいっても、真夏や真冬はむずかしいのですが、歩くことはそんなに苦にならないです。それが元気の源かもしれません。
ーー せっかくの機会ですので日本の食に関して、どう考えておられるか、お聞かせください。
門上 和食が世界の無形文化遺産に登録されました。私たち日本人の生活の衣食住を見てみますと、和服はすでに希少な存在で、和室はだんだん少なくなっています。食だけが、かろうじて和食を守っている。だから和食を考えることが、日本の文化を考えることにつながっていると思います。といっても、これだけ多くの料理がこれほど高いレベルで食べることができるのは日本だけです。料理人さんの交流から、また新たな世界が見えてくるはずです。
ーー 本日はありがとうございました。